自分の財産を子どもではなく、孫に遺したいと考える人は多いのではないでしょうか。孫は通常相続人ではありませんが、子どもを飛ばして、孫に一代飛ばして財産を遺すことも可能です。
当記事では、孫に財産を遺す方法と重要な注意点について、以下に解説していきます。
孫に財産を遺す方法
孫に直接財産を遺す方法にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的に確認していきましょう。
遺言書を作成する
遺言を作成し、自分が亡くなった時に財産を遺す者を指定しておくことで、相続人以外の人にも財産を遺すことができます。特定の不動産を遺すこともできますし、預貯金等で遺したいのであれば金額で指定し逓増することも可能です。
遺言を作成し、孫に財産を取得させる際の注意点は2点あります。
1点目は相続税の2割加算の制度です。相続税には一親等の血族および配偶者以外が財産を取得した場合2割加算になるという制度があります。2割加算は兄弟姉妹や甥姪が相続する際にも対象となりますが、代襲相続が発生している場合を除き、孫が相続する際は2割加算の対象に含まれます。
特に、孫自信に相続税を支払う経済力がないケースが多いので、不動産など現物資産を遺す場合は相続税を支払うことができるように現金もあわせて遺してあげる必要があります。
2点目は財産の配分の問題です。本来相続人ではない孫に財産を遺すことで他の相続人から不満がでる可能性があります。配分の面では他の相続人にも考慮して決める必要があるでしょう。
遺言書の書き方や添付書類が分からない場合は、司法書士など法律の専門家に相談するか、セミナーなどに参加していただくとよいでしょう。
養子縁組をする
孫を相続が発生する前に、民法の養子縁組の手続きをすることで、法律上は相続人とすることができます。相続人とすることで法定相続人となりますので、法定相続分の相続財産を相続する権利と一定の遺留分を有することになり、その分他の相続人が相続する額が減ることになります。
実子がいる場合、1人までは基礎控除の金額に加算することができるため、税金対策にもなります。
一方で、養子縁組をしても2割加算の対象になる点と、他の相続人とトラブルにならないように配分面は注意する必要があるでしょう。
暦年贈与をする
暦年贈与とは毎年1月1日から12月31日までの間に生前贈与し、贈与した金額に応じて贈与税がかかる制度です。
暦年贈与には年間110万円の非課税枠があり、毎年110万円以内であれば贈与税を支払う必要もありませんし、申告の必要もありません。税負担を減らすことにもなりますので、多くの人が利用している節税方法です。
注意点としては、孫が小さいころから贈与をしていると祖父母が通帳を管理しているということがよくあります。印鑑や通帳を祖父母が管理していると相続が発生した時に名義預金として相続税に加算して計算されるケースがあります。
生命保険の受取人にする
生前に資金を準備し、生命保険の受取人を孫に指定する事例もあります。生命保険の死亡保険金は受取人固有の財産として孫に直接渡すことができます。
ただし、孫が法定相続人になっていない場合は、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人)の対象とはなりません。財産を引き継ぐという面では有効な手段ではありますが、非課税枠を活用した相続税対策にはなりませんので注意しましょう。
贈与の特例を利用する
贈与には様々な特例があり、事情を考慮して直系尊属から子どもや孫などへの贈与税の負担を軽減する仕組みとなっています。
例えば、教育資金贈与の特例は教育資金に限り、最大1,500万円まで非課税で贈与をすることができる特例です。学校の授業料や教材の購入費用など有意義に使うことができるでしょう。
他にも住宅取得資金贈与の特例は子や孫などが居住用の土地・建物を取得するための資金として最大1,000万円まで贈与をすることが可能です。他にも結婚・子育て資金に限り1,000万円まで非課税で贈与をできる制度もあります。
大きな額を一括で贈与をすることができ、かつ利用の範囲が限られているため、意に沿わない形で使われることもありません。特例を利用することで、暦年贈与以上に相続する際の財産額も減るため税率も下がり、相続税を低くするという意味でも効果の大きい方法です。
一方で教育資金は実質的に教育資金を負担する両親に贈与をするような形にはなります。満額で贈与する場合、孫が1人の世帯には1,500万円、孫が2人の世帯には3,000万円贈与することになり孫の数によって子どもへの財産の配分割合に差が出てしまう可能性がありますので子どもが複数いる場合は注意が必要です。
贈与した額が同じとならないことで、遺産分割の際に家族で争いになると最悪のケースでは弁護士も交えて話し合いとなることもあります。そのため、遺産相続の際に相続人間でトラブルになると費用の面だけでなく、関係が悪化することでの精神的な負担も大きいです。できるだけトラブルを回避できるように慎重に検討し、亡くなる前にプランを説明するなど対応について話し合いをしておくことをおすすめします。
心配な点は税理士に相談を
上記で解説した通り孫に財産を遺す方法はいくつかあります。それぞれのメリット・デメリットがありますので、事前によく検討し決定するようにしましょう。
基礎控除を超える課税対象の財産を保有している方が亡くなった場合、相続税を支払う必要があります。
相続税は被相続人が死亡した翌日から10ヶ月以内に税務署に申告書を提出し、納税を完了する必要があります。相続税の計算をする際は課税対象となる遺産を一覧の表にまとめ、計算を行う必要があります。申告後に税務調査で指摘され、加算税を請求される可能性もありますので、間違えないように申告をする必要があります。
親族が亡くなってから忙しい中で、期限も短く、複雑な計算が必要となりますので自分で税額を算出するのは簡単ではありません。知識がない一般の人には申告が難しいというケースも多いでしょう。自分で申告することが難しい場合は、税金の専門家である税理士に可能な範囲でサポートを依頼するとよいでしょう。
税理士を紹介してもらうことが難しい場合はサイトなどで検索して相続・贈与の実績が豊富な税理士事務所・税理士法人を探すようにしましょう。初回の相談は無料で応じてくれるケースも多いのでまずは電話やメールで気軽に問い合わせしてみると良いでしょう。