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【遺贈のポイント】「包括遺贈」の概要とメリット・デメリット

2022年01月09日

遺言書を作成し、財産を相続人などに無償で移転することを遺贈といいます。遺贈は包括遺贈と特定遺贈にわかれます。両者の違いがわからずお困りの方も多いでしょう。同じ遺贈でも特徴は異なるため、目的に合わせて選択することが重要です。選択を間違えると、希望を実現できないことや相続人などに迷惑をかけてしまうことがあります。

この記事では、包括遺贈の概要を解説するとともにメリット・デメリット、注意点などを紹介しています。以下の内容を参考にすれば、全体像を理解して適切に活用できるようになるはずです。相続対策を検討中の方、包括遺贈について理解を深めたい方は確認しておきましょう。

包括遺贈とは

包括遺贈は、遺贈を受ける者と遺贈する財産の割合(全部も含む)を遺言で指定する方法を指します。「Aに相続財産の3分の1を遺贈する」などが例として挙げられます。ポイントは、特定の財産を個別に指定して遺産相続しないことといえるでしょう。

包括遺贈を受ける者と相続人の権利義務は同じです。したがって、財産を譲り受ける人は法定相続人ではない、家族以外の第三者であっても遺産分割協議に参加することになります。

メリット・デメリット

主なメリットは、遺贈を受ける人も遺産分割協議に参加できることです。希望が必ず通るわけではありませんが、法定相続人などとそれぞれが引き継ぐ遺産について話し合えます。相続のプランを立てる際に、相続人以外にも財産を譲るべき人がいる場合は法的に有効な手段となります。

主なデメリットは、相続人間の紛争に巻き込まれる恐れがあることです。例えば、特定の財産をめぐり相続人との関係が悪くなることなどが考えられます。

包括受遺者と法定相続人の違い

包括遺贈を受ける人を包括受遺者といいます。法定相続人と同じ権利義務を有しますが、全てが同じわけではありません。主な違いとして以下の点が挙げられます。

代襲相続

包括受遺者に代襲相続は発生しません。代襲相続は、相続が始まったときに相続人になれる人が死亡・欠格・廃除で相続権を失っている場合、その子や孫などが相続することを指します。したがって、相続が発生したときに包括受遺者が死亡などしていても、その子などは遺贈を受けられません。

相続放棄の影響を受けない

包括受遺者の取り分は、他の相続人が放棄を選択しても基本的に増えません。
これに対し、法定相続人の取り分は、他の相続人が放棄を選択すると増えます。

包括受遺者が引き継ぐ財産は、放棄の有無に関わらず遺言書に記載されている内容になります。権利義務はその人だけのものです。

包括遺贈するときの注意点

主な注意点は、包括受遺者と相続人の権利義務が同じであることです。
したがって、預金や不動産など正の財産だけではなく負の財産も引き継ぎます。そのため、一定割合の財産を移転する場合、同じ割合の負の財産も移転することになります。

そのため、借金がある場合は、債務者は包括受遺者に返済の請求をすることが可能です。
ただし、包括受遺者は単純承認以外に限定承認、相続放棄も選択できます。一部のみ放棄をすることはできませんので、放棄をする場合は、マイナスの財産だけでなく、被相続人が所有する全ての財産を受け取る権利を失うことになります。借金など負債の額が大きい場合は、プラスの財産を取得することはできなくなりますが、放棄をすることを検討してもよいでしょう。

また、包括遺贈の内容で遺言を作成していたとしても、遺留分を侵害しており、遺留分について請求された場合は遺言に応じて財産を分けることはできません。

内容の変更も可能

遺言の作成のあと財産や考えに変化があり、内容について変更したい場合は書き換えをすることが可能です。遺言書は公正証書遺言の場合でも自筆証書遺言の場合でも書き換えることができますが、公正証書遺言の場合は書き換えるのも費用がかかるので注意が必要です。

自筆証書遺言で作成する場合は、民法で定められた形式を守らないと、形式不備が問題となり、意思通りに財産を分けられない可能性があります。

遺言書の書き換えは何度でも行うことができますが、認知症など健康上の理由で作成できなくなる可能性もありますので、変更する理由が明確になった場合は早めに書き換えを行うようにしましょう。

包括遺贈を放棄する手続き

相続放棄したい場合、遺贈を受けることを知ったときから3カ月以内に家庭裁判所へ放棄の申し立てを行います。3カ月を過ぎると、単純承認を選択したとみなされるため注意が必要です。

包括遺贈で悩むときは税理士に相談

包括遺贈について解説しました。法定相続人に限らず割合を指定して財産を移転できる点が特徴です。ただし、デメリットや注意点がないわけではありません。包括受遺者は正の財産だけでなく負の財産も引き継ぎます。手続きや判断に悩む場合や自分一人で進めることが難しい場合は、相続の専門家である税理士に相談することをおすすめします。

遺言書を作成する際は土地や建物なども正確にはっきりと記載し、効力のある遺言にする必要があります。

内容に不備があり無効になると遺言の内容通りに金融機関の名義変更や不動産の登記など執行を行うことができなくなり、遺言があることによってトラブルになることも多くあります。

トラブルになると対応が増えてしまいかえって承継の手続きに負担が増えるだけでなく、弁護士を交えての話し合いとなり費用面での負担がかかる時もあるのでできるだけトラブルを回避できるように注意が必要です。

また、被相続人の資産が基礎控除を超える場合は相続税の申告義務が生じます。アクセスの良い場所に不動産を保有している場合は、評価額も大きくなりますので、相続税がかかる可能性が高いです。

相続税の申告期限は亡くなってから原則10ヶ月以内と短く、財産を取得する人は被相続人が亡くなってからすぐに税金の申告が必要かどうか判断する必要があります。基礎控除を超えそうかどうかは有する財産をまとめて、具体的に課税の対象となる財産の評価額を一つずつ確認し、一覧の表を作成すると後々の手続きがスムーズです。

財産の種類が多い場合や、何を持っているか、金融機関との取引状況等がわからない場合は時間がかかります。実際に相続税の計算方法は国税庁のサイトにも記載されていますが、配偶者がいる場合の控除や小規模宅地の特例などの要件など制度も複雑で簡単ではありませんので、早めに着手する必要があります。もし誤った申告をした場合、税務署の調査で指摘され、加算税が請求される可能性があります。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい