積極財産から債務を差し引いた後に基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を超える財産を保有する親が亡くなると、遺産相続や相続税の申告手続きと納税を行う法的な義務があります。相続の手続きは慣れていない方が多く、何から始めたらいいかわからないという方も多いでしょう。
当記事では相続税納付までの手順や納付できる場所をわかりやすく解説します。
相続税申告までの流れ
まず、相続税を納付するまでの一連の流れをポイントをおさえて解説します。
財産の調査
相続税の計算をするために、まずは遺産の内容や額を調査する必要があります。取引がある銀行や証券会社などの金融機関や不動産を調査し、相続財産の全体像をつかみ、一覧の表にまとめる必要があります。実際に亡くなってから調査を始めると、どこに何があるかわからず、財産の全容をつかむことに非常に時間がかかるケースも多くあります。
相続が発生する前に被相続人が財産の一覧を準備していた場合は、現時点の残高や評価額に更新するようにしましょう。
財産の調査の結果、基礎控除以下であれば、相続税の申告は必要ありません。
一方で、基礎控除は超えるものの配偶者控除等の特例を利用することで、税額が0円になる場合は申告は10ヶ月以内に済ませる必要がありますので、注意しましょう。
不動産については、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価を行います。土地は駅に近くアクセスのよい土地であれば、評価が高くなります。相続税は原則、金銭で一括納付が必要となりますが不動産の数が多い場合や評価が高い場合、売却して資金化した後に現金で納付するか、不動産を現物で納付する物納を選択する必要があります。財産調査の結果、不動産の割合が多い時はこのような判断をする必要が生じる可能性があります。不動産の売却は時間がかかるため、相場並みの金額ではすぐに売却できない可能性がありますので、早めに手続きを進めるようにしましょう。
分割方法の確定
財産の調査が完了したら、次に誰が何を相続するかを決める遺産分割協議を、相続人全員で行う必要があります。もし、生前に相続対策の一環で被相続人が遺言を遺しているのであれば、遺言書に従って手続きをすればよいでしょう。
不動産が多い場合や、相続人同士が遠方に住んでいる場合、家族にもそれぞれの主張があり協議に時間がかかりそうな場合は早めから財産の分割について話し合いを進める必要があります。
相続税の計算
遺産分割の内容が決まったら、利用できる特例やそれぞれの取得する財産が確定するため、配分に対応して相続税の計算をすることが可能です。
相続税の計算は、まず法定相続割合で相続したものと仮定して、相続税の総額がいくらかかるかを計算します。納税額の合計を算出した後、それぞれの取得割合に応じて、実際に支払う税金を計算していきます。
相続税の申告手続き
相続税の計算をすることができたら、申告書や特例を申請するための添付の書類を税務署の窓口に提出します。被相続人の死亡の翌日から10ヶ月と短い期間で、申告と納付を完了させる義務があります。申告を怠った場合や特例の条件などを誤って申告を行った場合は、税務調査で指摘され加算税というペナルティが課される可能性がありますので注意しましょう。
どうしても期限に間に合わない場合は期限を延長してもらう延納という手続きをとることもできますが、支払いが完了するまで利子税を支払うことになります。
相続税の支払い手続きができる場所
相続税の支払い手続きができる場所について確認しておきましょう。
税務署の窓口
相続税は税務署の窓口で支払うことが可能です。税務署で申告をする場合は現金で一括納付をする必要があり、相続税の金額が大きい場合は大金を持ち運ぶ必要があるというデメリットがあります。
金融機関で支払う
銀行の窓口など金融機関で納付することも可能です。預金を預けている金融機関で納付を行うことで、大金を持ち運ぶ必要はありません。特に決済手数料なども必要ありません。
しかし、多くの金融機関は平日の9時~3時しか営業しておらず、土日・祝日は手続きができません。そのため、仕事で忙しい方はなかなか納付することができないケースがあります。
コンビニで支払う
コンビニはどこにでもあり、24時間営業しているので便利です。また、手数料も必要ありません。しかし、30万円以下の納付しか対応していませんので、納税額が多い場合は利用することができません。
ネットでクレジットを利用して支払う
最近はネットでクレジットカード払いもできるようになっています。ただし、1,000万円以内の納付でのみ活用できることと、1万円ごとに76円の手数料が必要となります。
相続税の支払いは本人以外でも可能?
平日しか金融機関が空いていないこともあり、本人以外に相続税の申告を頼みたいと考える方も多いでしょう。しかし、実際には本人以外の人に相続税の支払いを頼むことはできません。また、代表者が家族の分を代理で支払ってしまうと相続税分を贈与したとみなされる可能性がありますので、注意が必要です。
相続税の申告は税理士に依頼することも可能
ここまでに説明した通り、相続税の申告は相続開始の翌日から10ヶ月以内と期限が定められていますので早めに手続きを進めることが大切です。
相続発生後は金融機関の名義変更の手続きや不動産の登記などで何かと忙しく、申告書の作成や納付手続きが期限内に間に合わないという方も多くいます。相続税の計算方法は国税庁のホームページなどで掲載されていますが、確定申告のように毎年行うものではありませんので、慣れておらず、知識がない人が行うことは簡単ではありません。
自分で税務署に行って申告手続きをすることや相続税の計算を行うことが難しい場合は、税の専門家である税理士に依頼することも検討してみてもよいでしょう。相続税は税制改正も頻繁ですので、申告を依頼する際は、普段から相続税や相続税に関連の深い贈与税の申告を業務として行っており、最新の情報を保有する税理士事務所・税理士法人に依頼することをおすすめします。税理士を知り合いから紹介してもらうことが難しい場合は、各種サイトで検索してみるとよいでしょう。
税理士に依頼すると税理士に費用を支払うこととなりますが、自分で行うと特例の利用漏れや申告が遅延してしまった場合の利子税などが発生する可能性もあります。税理士にサポートを依頼することで特例をうまく活用し、報酬以上に節税が可能となるなどメリットもありますので、ご自身で行うことで負担が大きい場合は専門家である税理士に依頼した方が安心して手続きを進めることができます。初回の相談はサービスで無料で応じてくれることが多いので、まずは電話やメールで気軽に問い合わせてみるとよいでしょう。