遺留分放棄とは?

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遺留分放棄とは?

相続財産を配分する際に最低限認められる権利として「遺留分」があります。遺留分は放棄をすることが可能です。当記事では遺留分放棄の概要や手続き方法についてポイントを抑えて説明します。

遺留分とは

まず遺留分について解説します。遺留分とは相続人の配偶者、子ども、親などの直系尊属に認められている最低限財産を引き継ぐことを請求することができる権利のことで、民法で定められた制度です。子が先に亡くなっている場合は、代襲相続する孫に遺留分があります。兄弟姉妹や甥・姪が相続人となる場合は遺留分は認められていません。

遺留分は、相続人が親等の直系尊属のみの場合は法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1となります。

遺留分を侵害された場合は遺留分侵害額請求を行うことで、遺留分相当額の財産を金銭で請求することができます。遺留分を主張することを以前は遺留分減殺請求と呼ばれていましたが、最近法改正があり、現在では遺留分侵害額請求と言われています。

遺留分放棄の申請方法

遺留分放棄は裁判所で手続きをすることで相続開始前に行うことができます。遺留分放棄をする場合は遺留分を有する推定相続人本人が被相続人の住所の管轄の家庭裁判所に申立を行う手続きが必要です。

遺留分放棄の申請には一般的に以下の書面を提出する必要があります。必要な書類は家庭裁判所によって異なる場合がありますので、管轄の家庭裁判所に確認してみるとよいでしょう。

①遺留分放棄の申立書
②被相続人および申立人の戸籍謄本
③収入印紙800円分
④連絡用の郵便小切手

遺留分放棄の申請を行い、合理性が認められ家庭裁判所から遺留分放棄を認めると、申請した者に郵便で通知が送付されます。必須の条件ではありませんが、遺留分放棄に対し、生前贈与など代償が行われているなど特別受益が認められると家庭裁判所からの許可がおりやすくなります。

遺留分は配偶者や子どもなどに配慮して一定の財産を取得することを保障する制度ですので、もちろん遺留分放棄を強要することはできません。

遺留分放棄が想定されるケース

遺留分放棄は様々な事情があり、行われます。遺留分放棄が想定されるのはどのような例が考えられるのでしょうか。具体的な事例をご紹介します。

一人の相続人が事業などを承継するケース

相続人のうち、長男等一人が代表して事業を承継するケースなどでは後継者となる人が遺産の集中して遺贈しないと事業を継続して経営できないケースがあります。事業に関連する株式や土地などの財産が分散し、事業経営に問題が発生することを防ぐために、他の相続人にはあらかじめ遺留分放棄の制度を利用することでトラブルを回避することができます。

高齢の親などに財産を承継する必要がないケース

高齢の親などが相続人となっている場合、相続発生時に認知症など健康上の理由で意思表示などの対応をすることが簡単ではないケースがあります。遺留分放棄を事前にしておくことで、遺留分がなくなりますので、死後の財産配分の際に比較的、簡単に手続きを進めることができるというメリットがあります。

前妻に子があるケース

前妻に子があるケースで、現状連絡を取り合うような関係ではない場合、財産を配分することで、後妻の子とトラブルになるケースがあります。納得してもらえるのであれば、前妻の子に事前に現金で贈与などを行って、トラブルとならないように遺留分放棄をしてもらうケースも多くあります。

自宅など不動産の評価が高いケース

東京など地価の高い地域に住んでいて、自宅の評価が高く、自宅を誰か一人に遺すだけで遺留分を侵害してしまうケースもあります。土地は一人に相続させたほうが、その後自由に扱いやすくなりますので、できるだけ共有は避けた方がよいでしょう。

自宅などの不動産の評価が高く、配偶者の生活を守るためにお金で分けることが難しい場合も事前に考慮して遺留分放棄を子どもたちにしてもらってもよいでしょう。

サポートが必要な相続人に財産を多く遺すケース

子供のうち一人が身体障害者や成年後見制度を活用し、保護が必要な場合、その子の保護のために多く財産を遺すケースもあります。

他の相続人が配慮して相続放棄をするケースもありますが、事前に遺留分放棄を行って自ら請求権を放棄をする例もあります。

遺留分放棄の注意点

遺留分放棄をする際はどのような点に気を付ければよいのでしょうか。遺留分放棄について注意するべき点について具体的に解説していきます。

相続放棄をするわけではない

遺留分放棄は遺留分を放棄することにはなりますが、相続放棄とは異なり、法定相続人として一切財産を相続しないわけではありませんので、相続権は残ります。そのため、遺留分放棄をしても、後で遺産相続の配分について家族で協議した結果、遺留分以上の割合の財産を取得するということは十分にあり得るのです。

特定の相続人に財産を多く遺す必要性がある場合は、生前に遺言書を作成しておくとよいでしょう。遺産の配分についてのトラブルは関係が悪化し、長引くケースが多く、トラブルを受けて弁護士を交えて話し合いや調停を行う必要が生じるケースも多くあります。生前にしっかりとした対策を行う必要があるでしょう。

また、被相続人に借金などの負債がある場合も遺留分放棄をしていても相続放棄を行わないと借金を承継する可能性があります。相続放棄は被相続人が亡くなってからしか認められず、相続発生から3カ月以内に家庭裁判所で相続放棄の家事審判手続きを行う必要があります。相続放棄を行えば、最初から相続人ではなかったことになりますので、借金を引き継ぎ、負担することはありません。

遺留分放棄と相続放棄の違いをしっかり理解し、制度を活用する必要があります。

原則撤回することはできない

遺留分放棄の申し立てを行った場合、効力が発生すると遺留分を失うこととなり、原則、無効を求めることや取り消しをすることができません。遺留分放棄を行い、被相続人が遺言書を作成していた場合、遺産分割で財産を取得することができなくなりますので、他の相続人に遺留分放棄をしてもらうように依頼されたとしても、後で後悔しないように自分の意思で慎重に検討して判断する必要があるでしょう。

相続の相談は税理士に相談を

相続について検討する際は一部について検討するのではなく、配分や相続税など全体を見渡して検討する必要がありますので相当な知識が必要となります。

正しい情報を得て判断を行わないと誤った判断をしてしまう可能性も高いでしょう。自分で検討することが難しいなら、トラブルを避けるための有効な遺言書の作成や相続対策の相談は税理士に相談するとよいでしょう。先に準備を行うことで相続人はスムーズに財産を受け取ることができます。

まずは現時点で預貯金、株式、投資信託などの金融資産や不動産や金、美術品など現物資産も含めて、資料を確認し資産を一覧の表にまとめて、配分や相続税の計算について相談し、サポートを受けておくと安心して進めることができます。申告を依頼する場合は費用が掛かりますが、初回の相談は無料で行ってくれる税理士が多いのでまずは電話やメールなどで気軽に要望を伝えて相談してみるとよいでしょう。

ただし、税理士にも専門分野がありますので、相続税や贈与税に詳しい税理士に依頼することが重要です。各税理士のサイトなどで業務実績の案内を確認してから支援を依頼するようにしましょう。