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相続税や贈与税の配偶者控除に婚姻期間は関係がある?

2024年07月25日

相続税や贈与税には配偶者に財産を渡す際に、大幅に税額が軽減される制度があります。このような制度が設けられている理由は配偶者は夫婦で助け合い、さまざまな方法で財産形成に一定の寄与をした事例も多く、夫婦間で財産を渡し合いすることに多額の税金を徴収することに違和感があるからです。

しかし、婚姻期間が短くても税額から控除することができるのでしょうか。当記事では相続・贈与の配偶者が利用できる特例について解説していきます。

相続税の配偶者控除は婚姻期間1日でも利用可能

相続税の配偶者控除は夫や妻から遺産を相続する際に1億6,000万円または法定相続分までは非課税で相続することが認められている制度です。婚姻期間は要件にはないため、被相続人と1日でも婚姻している状態であれば特例を利用して遺産相続することができます。大きな税額軽減がありますので、多くの人が利用している制度です。

配偶者控除の注意点

配偶者控除を利用するする際にどのような点に注意をすればよいのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

二次相続の際に多額の税金がかかる可能性がある

夫婦のうち1人目が亡くなった時を一次相続、2人目が亡くなった時を二次相続といいます。配偶者控除を利用することで、一次相続の際には税額を軽減することができますが、将来二次相続で子どもが取得する際の税金の金額を含めるとかえって多くなる可能性があります。

夫婦の相続財産の内容や相続人の数にもより、結果は異なります。そのため、相続が発生する前にシミュレーションを行い、適切な情報を確認してからどのような割合で遺産分割をするか判断するようにしましょう。事前に検討した場合は遺言書を書いておくと良いでしょう。遺言書を作成しておくことで、個々の事情も考慮しつつ、事前に検討した節税策を実行しやすくなるというメリットがあります。

内縁の妻(夫)や離婚した元妻(夫)は対象外

配偶者控除を適用するためには被相続人が死亡した時に婚姻している必要があるため、内縁関係の人や過去に婚姻関係があったとしても離婚した場合は法定相続人として遺産分割協議に参加する権利はなくなりますし、配偶者控除も利用することができません。

相続税が0円でも申告が必要

配偶者控除を適用を受けることで、配偶者が財産を取得しても相続税が0円になることも多くあります。相続税が0円の場合、相続税の申告は必要ないと考える人が多いと思いますが、配偶者控除適用前の財産額が基礎控除を超える場合は税務署に相続税の申告が必要です。

相続税の申告は預貯金、投資信託、株式、生命保険等の金融資産と土地・建物などの不動産等の評価を行って、財産をまとめた一覧を作成してから申告書類を作成する必要があります。慣れていない人にとっては時間がかかる作業ですので、先に基礎控除を超えるかどうか確認し、超えそうな場合は早めに対応を行っていくようにしましょう。

贈与に利用できる配偶者の特例

配偶者の特例には贈与をする際に利用できるものもあります。贈与において利用できる特例は居住用不動産または居住用不動産を購入するための資金を贈与する際に最大2,000万円まで非課税で贈与をすることができるというものです。

この特例は暦年贈与における基礎控除110万円とは別に贈与をすることができますので、合計で2110万円まで贈与することが可能です。不動産の持ち分または取得するために資金を贈与することで、資金を持たない配偶者にも夫婦で居住する不動産の持ち分を持たせることが可能です。

また、相続発生後、税制改正により3年間から7年間に延長された相続発生時の生前贈与加算も回避することができますので、相続税対策として有効な手段の一つです。

この特例を利用するためには、婚姻期間が20年以上あり、贈与を受けた翌年の3月15日まにで、実際に生活し始めることや今後も売却せずに住み続ける前提であることが要件となります。贈与税が0円でも特例を利用することの申請を行う必要がありますので忘れずに申告するようにしましょう。

また、不動産の贈与を行うにあたって不動産取得税や登記費用などほかの負担もありますので、その点も考慮して判断するようにしましょう。

判断に迷う場合は税理士に相談を

配偶者が利用できる特例を活用することで、相続税・贈与税を軽減することができます。しかし、的を得た対策を行わないとかえって相続税が多くなる可能性があります。また、誤った条件で適用していたり、添付の書類が誤っている場合は、税務署から税務調査で指摘され、加算税や延滞税を請求されることもあります。

相続税の納付期限は相続発生の翌日から10ヶ月と短いため、自身で判断し、手続きを行うことが難しい場合は税金の専門家である税理士に相談しサポートを受けるようにしましょう。税理士に依頼する場合は相続税・贈与税に関連する税務手続きを多く取り扱っており、実績のある税理士に依頼すると安心して進めることができます。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい