限定承認が有効なケースとは?申請方法や注意点も解説!

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限定承認が有効なケースとは?申請方法や注意点も解説!

相続において、様々な複雑な用語があり、どのような意味を指しているのか、よくわからないという方も多いでしょう。

当記事では限定承認が有効なケースや申請する際の注意点について解説していきます。

限定承認とは

限定承認とは被相続人に預貯金、株式、投資信託、不動産などのプラスの財産と借金などのマイナスの財産がある場合に、プラスの財産の範囲内で、マイナスの財産の返済の義務を引き継ぐ制度で、民法で定められています。プラスの財産もマイナスの財産も無制限に取得する、通常の承継方法が単純承認、財産を一切引き継ぐ権利を失うのが、相続放棄です。

単独でできる放棄とは違い限定承認は相続人全員で、被相続人が亡くなってから、原則3カ月以内の熟慮期間中に被相続人の住所地の管轄の家庭裁判所に申立する必要があります。相続人のうち1人でも限定承認に合意しない人がいた場合は限定承認をすることはできません。

限定承認は以下の流れで行います。

①相続人全員で3カ月以内に家庭裁判所に申述
②官報で相続債権者に対し公告を行う
③相続財産の精算・換金
④債権者への返済・相続税や財産管理にかかった費用などの支払い
⑤残余財産を相続人で遺産分割

限定承認が有効なケース

限定承認が有効なケースとはどのような事例なのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

被相続人の財産が分からないケース

財産の配分について、家族で話し合いを行う際は、預貯金などの金融資産や土地や建物を一覧にすることで、話し合いを行いやすくなります。しかし、実際には被相続人の財産の内容が正確に把握できないというケースもあるでしょう。特に相続人が兄弟姉妹や甥姪の場合は、被相続人の財産がよくわからず、しばらくたってから多額の債務があることが判明するケースも少なくありません。

相続放棄をしても、その後に財産が出てくることもありますので、その時点で財産や借金がどれくらいあるかが明らかでない場合、相続放棄の判断もすることができません。限定承認であれば、被相続人の財産の範囲内でした、弁済の義務がありません。そのため、限定承認は被相続人の財産に関する情報が不足していて、債務超過の状況かわからない場合は、プラスの財産を限度に債務の返済をできる限定承認は、選択肢の一つとして検討してみてもよいでしょう。

特定の財産を遺したいケース

思い出のある自宅不動産など特定の財産をどうしても残したいけれども、被相続人の多額の借金を全部背負うことはできない場合にも限定承認を利用することで一部の借金を精算することで財産を遺すことができる可能性があります。

限定承認をした場合、手持ちの資金で特定の財産に対応する分の借金を返済することで、特定の財産を承継することができます。

限定承認の注意点

限定承認をする際はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。注意するべき3つのポイントを解説します。

申述までの期間が短い

限定承認は遺産相続が開始してから、3カ月という短い期間で家庭裁判所に書類を添付して提出する必要があります。限定承認は相続放棄とは異なり、先に相続人全員で合意をしたうえで手続きを行う必要がありますので、遺産や負債の額の調査をある程度行い、他の相続人と相談する必要があります。そもそも限定承認を知っていれば、申立ができますが、制度自体を知らなければ、制度を知った時には3カ月以上経過しているということも多いでしょう。

相続発生後はなにかと忙しく、3カ月という期限はあっという間に過ぎてしまいます。他の相続人と頻繁に取り合う関係ではない場合、集まって話し合いを行うなどの対応に時間がかかるケースが多いです。相続人にもそれぞれの考えや事情がありますので、トラブルにならないように早めに相談をはじめることが重要です。

財産を処分すると単純承認したことになる

相続した財産を売却するなど処分した場合は、単純承認したものとみなされて、限定承認を選択することができなくなってしまいます。うっかり財産を処分してしまうと、借金がある場合でも単純承認をしたことになり、債権者から返済の請求がきますので、債務が多くある可能性がある場合は財産を処分することは控えるようにしましょう。

手続が複雑で自分で完結することが難しい

限定承認は家庭裁判所に申立てを行い、受理された後も債権者の検索し、保護するために官報で公告を行う必要があり、非常に複雑な手続きとなります。手間が非常に多く、一般の人が行うことは簡単ではありません。家庭裁判所のサイトに書式は掲載されていますが、自分で手続きを行うことが難しい場合は弁護士や司法書士、税理士等の専門家に手続きを依頼することになるでしょう。専門家に依頼した場合は費用がかかりますので、債務が多い可能性が高い場合は相続放棄をする方が良いケースもあります。

プラスの財産の範囲内でしか債務を負わないというメリットはありますが、取り扱いに関する負担の大きさはデメリットとなるでしょう。

譲渡所得税がかかる

限定承認をすると、被相続人が時価で売却したものとみなし、不動産等を実際に売却をしていなくても含み益に対し譲渡所得税がかかり、相続発生から4カ月以内に売却益に対して準確定申告を行う必要があります。

ただし、相続財産のうち債務などマイナスの財産の方が多い場合、譲渡所得税は被相続人の債務となりますので、納税義務はありません。

相続に関する相談は税理士に相談を

相続発生後は出生から亡くなるまでの戸籍謄本の収集や、財産目録の作成、相続税の特例活用のための関連する書類の作成、不動産の登記など様々な手続きを行う必要があります。遺言書で指定がない場合は財産配分についても話し合いを行う必要があります。

相続税は所得税の確定申告のように何度も経験するものではありませんので、知識がなくわからないのは当然のことです。書類の書き方や資産の評価方法など基礎的なことが分からない場合は、税の専門家である税理士に相談するようにしましょう。相続税に強い税理士に依頼することで、特例の条件を満たしているかの判断や相続税の計算も間違えなく行うことができますので、安心して手続きを進めることができます。

また、生前に相談することで、節税対策の相談をすることもできます。亡くなった後にできることは多くありませんので、できるだけ、生前に対策を行っておくようにしましょう。