1億円を超えるような財産の総額が多い人が亡くなると税率が高く、相続税が多くかかりますので、さまざまな相続税対策の情報を仕入れ検討している人も多いと思います。生前贈与や生命保険の非課税枠を活用した対策が一般的ですが、生前贈与や生命保険だけでは税金を節税しきれない場合、不動産を活用した相続税対策を行う人も多いです。
相続税対策の効果は物件にもよりますが、2024年からマンションの相続税評価の計算方法が改正され、過度な節税ができなくなりました。当記事ではマンションを活用した相続税対策や2024年に行われた改正の内容についてポイントをおさえて解説します。
マンションの相続税評価方法と2024年の改正
マンションの相続税評価は戸建てと同じように敷地は前面道路の路線価×面積、建物は固定資産税評価額で評価を行います。一般的に路線価方式で評価をする場合は時価の8割程度、路線価は国税庁のホームページで調べることができます。固定資産税評価額は時価の5割~7割程度となることが多く、毎年贈られて送る納税通知書で確認することが可能です。
マンションは多くの人で土地を持ち分として共有していることになるため、宅地の部分が少なく一戸建てよりも市場価格と相続税評価額の乖離が大きくなります。特に乖離が大きいのが東京などの都心部にあるタワーマンションです。タワーマンションは高層階の方が眺望がよく、売買の価格が大きくなる傾向がありますが、2023年までの計算方法では、高層階と低層階の相続税評価は同じとなる仕組みになっていました。
そのため、高層階の部屋は相続税評価が時価の2割程度となる効果の高い事例も多く、タワマン節税としてメディアでも取り上げられ、富裕層の相続税対策の方法として注目されていました。中には保有者が死亡した後すぐに売却し、資金化する人もいたほどです。
あまりにも相続税評価と時価の乖離が大きいため、乖離幅を一定の割合に抑えるため、2024年に実態に対応するための制度改正が行われました。改正により、マンションの相続税評価方法は最低でも時価の6割の水準で算出することになりましたので、今までのように時価の半分以下で評価されることはありません。
改正により、タワーマンションの高層階を購入しても2割~3割で評価されることはなく、過度な相続税対策はできなくなりました。一方で、過度な相続税対策が解消されましたが、マンションを購入することで現金で保有するよりも評価が低くなりますので、効果は大幅に下がることになったものの、マンション節税が全く利用できなくなったわけではありません。
また、今回の改正はタワーマンション以外でも適用されますが、区分所有マンションの一部屋を保有していた場合のもので、一棟もののマンションやアパートは今回の改正の対象外ですのでこれまでと同じように税額を軽減することが可能です。
マンション節税の注意点
マンションを購入し節税する際はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。次にマンション節税をする際の注意点やデメリットについて具体的に確認しておきましょう。
投資用資産として価値があるかどうかで判断する必要がある
マンション節税をする方は自己やその家族が居住するための住宅用で購入するのではなく、投資目的で賃貸マンションを探すことになり、リスクがあります。そのため、節税だけを気にして購入すればいいわけではなく、投資事業として経営する価値があるか、それぞれの物件の現状を把握し、価値があるかを判断して購入する必要があります。購入する物件の地域や物件の状況をチェックする必要があります。
遺産としてマンションを相続することで節税に繋がっても、結果的に節税効果以上に投資損が出るケースもあります。投資用不動産は経済だけでなく、天変地異等の可能性もあり様々な理由で価格が変動しますので、将来の価格を含め予想することは簡単ではありません。
配分が難しくなる可能性がある
マンションを所有することで、節税にはなりますが、遺産分割の際に配分が難しくなる可能性があります。例えば、総財産が1億5千万円の人が約1億円のマンションを購入した場合、共有を避けると相続財産の大半を一人が相続することになり、平等に配分することが難しくなります。共有で相続することで平等に相続することはできますが、持ち分を持つ人全員が合意しないと売買ができないなど、デメリットも大きいです。
マンションを購入し、節税をする場合は相続税は下がりますが、相続発生後の配分にも配慮して購入することが重要です。財産の数が多い場合は必要に応じて遺言書を作成するなど事前に準備することで、相続発生後のトラブルを避けることもできるでしょう。また、相続税の申告は相続発生の翌日から10ヶ月と期限も短いため、事前にシミュレーションをして遺言を書いておき、財産の全体的な分割方法を決めておくことで財産をまとめて配分の協議をする必要がなく、負担を減らすことになります。
手続きや管理の手間が必要
不動産は相続が発生した時に法務局で相続登記を行うことが法律で義務付けられており、遺産相続の手続きが煩雑になります。また、賃貸不動産として保有する場合、家賃収入を得られるというメリットもありますが、管理や名義変更の手間が必要となります。相続する配偶者や子など家族にも負担がかかることは認識しておいた方がよいでしょう。
納税資金を確保する必要がある
財産の大部分をマンションなどの不動産に換えることで、相続税を減らすことはできますが、相続発生後に納税資金が不足する可能性があります。延納や物納も一部認められていますが、原則、相続税は現金一括で納付する必要がありますので、納税するためにすぐに換金できる預貯金を用意しておく必要があります。
親などから相続する財産で相続税を支払うことができない場合は、自分で保有していた資産で支払うか金融機関などから借入る必要が生じる可能性があります。
相続税対策は税理士に相談を
マンション節税に限らず相続税対策には様々な注意点があります。相続税対策について検討する際は、実際に対策をする前に税務の専門家である税理士に相談し、サポートを受け、現状を確認することをおすすめします。
相続税の計算は、財産の合計から基礎控除(計算式:3,000万円+法定相続人×600万円)を差し引いたあと法定相続通りに分けたと仮定して各相続人が取得する財産で按分して計算を行います。小規模宅地の特例や最大1億6千万円または法定相続割合までは無税となる配偶者控除を適用し、減額できる金額も考慮して計算するため、複雑な計算が必要となります。
国税庁のホームページに計算方法や仕組みは記載されていますが、知識がない人が、ルールを理解して正確に計算し、書類を作成することは簡単ではありません。まずは財産の一覧の表と相続人関係図などの資料を作成して税理士に相談するとよいでしょう。また、相続発生後は相続発生時点の評価で被相続人が亡くなった後10ヶ月以内に申告する必要があります。相続発生後の申告も税理士に依頼することで税務調査に入られても安心です。
知り合いに紹介してもらうことが難しい場合は各種サイトで検索し、相続税や相続税に関連の深い贈与税の申告実績が多い税理士事務所・税理士法人を探すようにしましょう。初回の相談は無料で応じてくれることが多いので、気軽に相談し、どれくらい費用がかかるか相談してから依頼するようにしましょう。