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農地はいらない?相続を放置するとどうなるかを分かりやすく解説

2026年01月11日

相続財産の中にはあまり引き継ぎたくない財産がある場合もあります。相続したくないと考える人が多いのが農地です。当記事では農地の相続について解説します。

目次

農地相続はいらないと感じる人が増えている理由

かつて農地は「家の財産」「守るべきもの」と考えられてきました。しかし現在では、農地相続に対して「正直いらない」「負担にしかならない」と感じる人が増えています。その背景には、社会構造の変化と農地特有の問題があります。

親が高齢になり耕作できなくなった

高齢化により、親世代がすでに農作業を続けられないケースが増えています。
畑や田んぼは残っているものの、何年も耕作されておらず、実質的には使われていない状態という家庭も少なくありません。

相続人に農業を継ぐ人がいない

子ども世代は都市部で生活しており、農業を継ぐ予定がない。
「農地を相続しても使い道がない」「戻って農業をする現実性がない」という理由から、相続自体を負担に感じる人が増えています。

売れない・貸せない農地が多い現実

農地は、一般の不動産のように自由に売買や賃貸ができません。
需要が少ない地域では、買い手も借り手も見つからず、「処分したくてもできない農地」が大量に存在しています。

空き家と違い「農地特有の制限」がある

空き家であれば、売却・賃貸・解体などの選択肢がありますが、農地には農地法による厳しい制限があります。
この「自由に扱えない」という点が、農地相続をより厄介なものにしています。

農地を相続して「放置」するとどうなるのか

「使わないから放置しておけばいい」と考えてしまいがちですが、農地の放置はさまざまな問題を引き起こします。

固定資産税は毎年かかり続ける

耕作していなくても、名義人である限り固定資産税は毎年課税されます。
売却もできず、利用していない土地に、何十年も税金を払い続けるケースも珍しくありません。

管理義務は相続人に残る

農地は放置しても責任が消えるわけではありません。
草刈りや境界管理など、最低限の管理義務は相続人に残ります。

獣害などの被害が発生すると近隣住民に損害賠償責任を問われるリスクもあります。

行政指導や勧告を受ける可能性

農地の荒廃が進むと、自治体や農業委員会から指導や勧告を受けることがあります。
「使わないなら何とかしてください」と行政から対応を求められることもあります。

最悪の場合、罰則や強制的措置もあり得る

状況によっては、是正命令や行政措置の対象となる可能性もあります。
「何もしない」という選択が、最もリスクの高い判断になることもあるのです。

農地はを相続すると農業委員会に届出をする必要がある

農地の相続では、相続登記だけでなく、農業委員会への届出が必要になるケースがあります。
農地は一般の土地とは異なる制度で管理されているため、手続きを誤ると後々トラブルになります。

農地相続をしたくない場合に考えられる選択肢

「農地相続はいらない」と感じた場合でも、いくつかの選択肢があります。

相続放棄という選択肢と注意点

相続放棄をすれば、農地を含むすべての財産・負債を引き継がなくて済みます。
ただし、預貯金や自宅など他の財産も一切相続できなくなるため、慎重な判断が必要です。

相続放棄は単独で行うことができますが、3か月以内に家庭裁判所で手続きをする必要があります。

限定承認が向いているケース

財産と負債の全体像が分からない場合には、限定承認という方法もあります。
ただし相続人全員で合意が必要であり手続きが複雑で、実務的には専門家の関与が不可欠です。

また、限定承認は相続人全員で合意する必要があり、3か月以内に行う必要がありますので、早めに親族で話し合う必要があります。

売却できる農地・できない農地の違い

すべての農地が売れないわけではありません。
立地や条件によっては、農業従事者への売却や転用が可能なケースもありますが、一般の土地よりも買い手が見つかりにくく、売却が難しいケースも多々あります。。

賃貸・利用権設定という方法

農地を手放さず、農業法人や担い手に貸す「利用権設定」という方法もあります。
管理負担を減らしつつ、地域農業に貢献できる選択肢です。

自治体・農業委員会に相談する意味

農地問題は、個人だけで悩んでも解決しにくい分野です。
自治体や農業委員会に相談することで、地域の実情に合った選択肢が見えてくることがあります。

判断を先延ばしにすると問題が大きくなる理由

農地相続は「今すぐ困らない」ため、判断を先延ばしにされがちです。しかし、時間が経つほど状況は改善するどころか、むしろ悪化するケースがほとんどです。

相続人が増えて話がまとまらなくなる

一次相続では相続人が少なくても、二次相続・三次相続へと進むにつれ相続人は増えていきます。
人数が増えるほど意見はまとまりにくくなり、

  • 連絡が取れない

  • 農地に無関心な人が増える

  • 全員の同意が得られない

といった理由で、売却や活用が事実上不可能になることがあります。

将来の売却・活用がさらに困難になる

放置期間が長くなると、農地の荒廃が進み、買い手・借り手がますます見つかりにくくなります。
また、地域の担い手不足が進行すると、「昔は使えた農地」が「誰も引き受けられない農地」に変わってしまいます。

次の世代に「負動産」を残すリスク

何も決めないまま相続を重ねると、農地は「資産」ではなく「負担」になります。
管理義務と税金だけが残り、次の世代がさらに苦しむ――これがいわゆる負動産です。
自分の代で判断しなかった結果、子や孫に問題を先送りしてしまうケースは少なくありません。

農地相続を「不要」と感じた場合に必ず確認すべき制度上の注意点

農地相続について「放棄したい」「不要なので持ちたくない」と感じた場合でも、
相続財産である以上、法律上の手続きや要件を理解せずに判断することは大きなデメリットにつながります。

まず、相続放棄を行う場合は、相続開始を知った日から原則3か月以内)に、
家庭裁判所へ申請を行い、受理される必要があります。
この期限を過ぎると、相続財産を放棄することは原則認められません。

また、相続放棄は農地だけでなく、遺産分割の対象となるすべての相続財産が対象となります。
農地以外に預貯金・建物・宅地などがある場合、それらも含めて所有を放棄することになる点には注意が必要です。

相続土地国庫帰属制度と農地の関係

近年、「不要な土地は国に帰属できる」と誤解されがちですが、
相続土地国庫帰属制度には明確な要件があり、農地は特にハードルが高いとされています。

制度の目的は、管理が困難な土地を無条件で国庫に帰属させることではありません。
申請を行うには、

  • 一定の管理状態であること

  • 周辺に悪影響を及ぼしていないこと

  • 境界や所有者が特定できること

などの要件を満たす必要があります。

さらに、申請が認められた場合でも、国庫帰属には費用がかかる点も重要です。
「無料で国が引き取ってくれる制度ではない」という点は、事前に理解しておく必要があります。

農地転用や宅地への変更が可能なケースと許可の問題

農地の中には、条件次第で農地転用が可能なケースもあります。
ただし、農地転用を行うには、農業委員会や都道府県知事の許可が必要となり、
すべての農地が宅地や建物用地へ変更できるわけではありません。

特に、農業振興地域内の農地や、周辺に農家が多い地域では、
転用が認められないケースも多く見られます。

このため、
「農地を宅地にすれば売れるのでは」
「建物を建てれば活用できるのでは」
と安易に判断するのは危険です。

遺言や生前整理による対策の重要性

農地相続の問題は、相続発生後よりも相続前から対策を行う方がはるかに手間が少なくなります。
被相続人が元気なうちに、

  • 農地を誰が相続するのか

  • 相続財産として残すのか

  • 放棄や売却を検討するのか

といった内容を整理し、生前に遺言書を作成しておくことも有効な対策です。

遺言がない場合、相続人全員による遺産分割協議が必要となり、
農地の所有をめぐって話し合いが長期化することもあります。

農地相続で悩んだ際は専門家のサポートを活用する

農地相続は、

  • 相続

  • 所有

  • 転用

  • 放棄

  • 国庫帰属

と複数の制度が絡むため、自身だけで判断するのは非常に難しい分野です。

司法書士・税理士・不動産・農業委員会などの専門家のサポートを受けることで、
制度上認められる選択肢と、現実的に行うべき対策を整理することができます。

「何をすべきか分からない」という悩みを抱えたまま先延ばしにするよりも、
早い段階で相談することが、結果的に手間・費用・トラブルを最小限に抑えることにつながります。

農地相続で後悔しないために大切な考え方

農地を相続するために後悔しないために、どのようなことを気を付ければいいか確認しておきましょう。

「いらない」と感じた時点で動く重要性

「正直いらない」と感じるのは、決して悪いことではありません。
むしろ、その感覚こそが現実を直視できている証拠です。
違和感を覚えた時点で情報収集や相談を始めることで、選択肢は大きく広がります。

感情ではなく制度と現実で判断する

「先祖代々の土地だから」「親が大切にしてきたから」という感情だけで判断すると、現実とのズレが生じます。
農地相続は、

  • 法律

  • 税金

  • 管理責任

  • 地域の実情

といった制度と現実を踏まえて、冷静に判断することが重要です。

相続前から整理しておくことのメリット

相続が発生してから考えるよりも、相続前に整理しておく方が圧倒的に有利です。
生前であれば、

  • 親の意向を直接確認できる

  • 売却・賃貸・集約などの準備ができる

  • 相続人同士で事前に話し合える

といったメリットがあります。

相続前から整理しておくことのメリット

相続前から整理しておくとどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に確認しましょう。

司法書士・税理士・不動産の役割の違い

相続が発生してから考えるよりも、相続前に整理しておく方が圧倒的に有利です。
生前であれば、

  • 親の意向を直接確認できる

  • 売却・賃貸・集約などの準備ができる

  • 相続人同士で事前に話し合える

といったメリットがあります。

ワンストップで相談するメリット

複数の専門家が連携している窓口に相談すれば、
「これは誰に聞けばいいのか分からない」という混乱を防げます。
相続・税・不動産をまとめて見てもらえることで、現実的で無理のない解決策が見えてきます。

相談が早いほど選択肢が広がる理由

早めに相談すれば、

  • 相続放棄を含めた選択ができる

  • 農地の活用や整理を計画的に進められる

  • 家族間トラブルを未然に防げる

時間が経つほど選択肢は減り、「できること」より「仕方なく受け入れること」が増えてしまいます。

広島相続税相談テラスでは相続に関するあらゆるお悩みの解決に向けてサポートをしております。生前の対策についても対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい