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相続税の申告が不要なケースと相続税0円でも申告が必要なケースを解説

2021年11月11日

「相続が発生したけど申告が必要かわからない」「申告不要だと思うけど確証がもてない」などで悩んでいませんか。めったに経験することではないため、対処法がわからず困っている方は多いでしょう。

相続税の申告は、被相続人が保有している財産の評価が課税価格の合計が基礎控除を超えている場合申告が必要ですが、基礎控除を下回っている場合不要です。ただし、相続税の控除や特例などを受けていると、相続税が0円でも申告書を作成し、税務署に提出する必要があります。

相続税の申告が必要であるにも関わらず、申告を怠ると税務調査が行われ、加算税を請求されることがあるため注意が必要です。申告が必要な場合は相続人が自分で行うか、税理士に依頼して期限内に申告し税金を納付する必要があります。

今回は、相続税が0円の場合で、申告が必要となるケースと、申告が不要となるケースについて具体的にポイントや注意点を解説していきます。

相続税申告が不要となるケース

相続税は、申告しなければならない場合としなくていい場合に分かれます。多くの相続は、申告が不要なケースに該当します。どのようなときに申告が不要なのでしょうか。

相続財産合計額が基礎控除額を下回る場合

課税遺産総額がマイナスの場合、相続税の申告は不要です。課税遺産総額は、各相続人の課税価格のプラスの財産の債務を差し引いたあと、基礎控除を差し引いて求めます。相続財産の合計が基礎控除の額を下回る場合は相続税の申告をする必要はありませんので相続人が書類を作成したり税務署に提出したりする義務はありません。つまり、相続財産がいくらあるかによって申告の要否が決まるのですが、課税対象となる財産は金融資産、不動産だけでなく、宝石や金、美術品などの現物資産も含みます。申告漏れがあり、税務署から調査されると、ペナルティとして加算税が課されることもあります。相続が発生した際は課税対象となる財産を徹底的に調べておく必要があるのです。

基礎控除は以下の計算式で算出することができます。

基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人

基礎控除は法定相続人の数によって決まるということを覚えておきましょう。例えば、法定相続人が配偶者と子供二人で合計3人の場合は4,800万円(3,000万円+600万円×3)となります。相続税の課税対象となる財産は預貯金や不動産、生命保険の死亡保険金などが該当します。

ただし、相続財産から差し引けるものがあります。代表的なものとしては葬祭費用と生命保険の非課税枠分です。

葬祭費用とはお葬式の費用などです。お葬式の費用は相続人がたてかえるケースが多いですが、後で相続財産から差し引くことができますので、領収書を必ず残しておくようにしましょう。

例えば、法定相続人が3人のケースで、財産が4,900万円、葬祭費用が200万円かかった場合、課税遺産総額は4,700万円(4,900万円-200万円)となり基礎控除を下回るため、相続税の申告は必要ありません。

生命保険は本来、相続人固有の財産とされいますが、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。ただし、生命保険には非課税枠があります。非課税枠は500万円×法定相続人で計算することができます。法定相続人が3人の場合は1,500万円(3人×500万円)までは非課税です。非課税の限度額以上に生命保険を契約した場合は、非課税枠超過分は相続税の課税対象となります。

そのため、法定相続人が3人のケースであれば、基礎控除の4,800万円と生命保険の非課税枠1,500万円の合計6,300万円未満であれば、相続税の申告は不要となります。生命保険の非課税枠は簡単で確実に相続税を減らすことができる対策です。

基礎控除を下回るか否かを確認するためには被相続人の財産を一覧化にする必要があります。被相続人が取引していた金融機関などの資料を集め、財産を一覧化することで、どれくらいの財産を保有してたか正確に把握することができるでしょう。

相続税が0円でも申告が必要なケース

次に相続税が0円となる場合でも、申告が必要となるケースがあります。具体的に確認していきましょう。

申請が必要な控除を受ける場合

配偶者の税額軽減を適用する場合、相続税が0円であっても申告が必要になります。配偶者の税額軽減とは被相続人(亡くなった方)の配偶者であれば、相続税が軽減される制度です。所得税や贈与税でも配偶者控除などの特例があり、減税されていますが、相続税においては長年連れ添った配偶者への負担を軽減するために、大幅な減税措置がとられているのです。

配偶者が相続する場合、配偶者が受け取った財産が1億6千万円または法定相続割合の範囲内であれば、相続税がかかりません。配偶者の税額軽減の大きな効果があるため、1億6千万円以上の財産がなければ、配偶者が財産を受け取っても非課税になると考えてよいでしょう。このように配偶者の税額軽減や別の特例を利用することで、結果として相続税がかからない場合でも、申告は必要です。申告を行わなかった場合、税務署から指摘を受けた例がありますので注意が必要です。

【配偶者の税額軽減の条件】

  • 配偶者の法定相続分
  • 1億6000万円

実際に取得した相続財産を基準に計算するため、申告期限までに分割されていない相続財産は基本的に対象外です。配偶者の税額軽減は、相続税申告書に配偶者が所得した相続財産がわかる書類と遺産分割協議書の写しを添付して提出することなどで受けられます。もし、申告期限までに財産の分割ができなかった場合、申告書とは別に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出する必要があります。

例えば、法定相続人が配偶者と子供2人で相続財産が1億円の場合、すべて配偶者が相続するケースでは配偶者が相続する財産は1億6千万円未満となりますので、相続税がかかることはありません。

配偶者が相続する場合、一次相続ではほとんど税金がかかりませんが、財産を受け取った配偶者が亡くなる際の二次相続では多くの税金がかかることがありますので、一次・二次相続を踏まえて配分を検討する必要があります。相続税法では財産が多ければ多いほど、税率も高くなっていく仕組みになっていますので、二人の夫婦の財産が合計されることで、実際に収める税額が増えてしまいます。二次相続も踏まえると子どもがある程度、相続するということも選択肢の一つです。

特例制度の適用を受ける場合

同様に、特例制度の適用を受ける場合も相続税の申告が必要です。相続税にはさまざまな特例が定められいていますが、相続税が0円となっても相続税の申告が必要となる主な特例について解説します。

小規模宅地の特例

小規模宅地の特例とは一定の条件を満たす場合、相続する自宅等の土地の評価を減額することができる制度です。小規模宅地の特例で対象となる土地は特定居住用宅地、特定事業用宅地、特定同族会社事業用宅地、貸付事業用宅地の4つに分かれており、それぞれ一定の要件を満たせば評価の減額を受けることができます。例えば、特定居住用宅地は故人が所有してた住宅を同居の親族が相続したあとも住み続ける場合に適用することができる特例です。

土地の評価は路線価を元に算出しますので、路線価が高い地域では、小規模の土地でも評価額が大きくなりますので、減税効果の高い制度です。適用面積と減額割合は以下の表の通りです。

適用面積 減額割合
特定居住用宅地 330㎡ 80%
特定事業用宅地 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地 400㎡ 80%
貸付事業用宅地 200㎡ 50%

上の表をご覧いただくとお分かりの通り、上記の通り、最大で8割と減額割合も大きく、特例を活用し、住宅やアパートなどの評価を下げることで相続税が0円になることも少なくありません。

自宅建物は固定資産税評価額で評価します。建物には小規模宅地の特例は適用できませんが、土地の評価を大きく下げることができるため、メリットも大きい制度です。同じ価値の資産でもだれが相続するかによって相続税の金額に差がでますので、特例を活用できるように、遺言書などを作成しておくことで特定の資産を相続する人を指定しておくことを検討してもよいでしょう。ただし、相続人間で不公平が生じると、相続人間の争いに発展しやすくなりますので、その点は相続人全員に配慮する必要があります。遺言書の作成方法がわからない方は司法書士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。

なお、特例を適用して、結果的に相続税が0円となる場合でも相続税の申告は必要となりますので注意しましょう。

未成年者控除

未成年者控除とは未成年者である子や孫が相続財産を引き継いだ時に相続財産の控除を受けることができる制度です。未成年者控除で控除される金額は20歳に到達するまでの年数×10万円

例えば、15歳の人が相続した場合は50万円((20歳-15歳)×10万円)です。

未成年者控除を適用することによって相続税が0円となる場合でも相続税の申告は必要です。

遺言などで孫を養子に入れて相続させる場合などは未成年者控除を適用できるケースがありますので相続税を低く抑えることができます。

障害者控除

障害者控除とは障害者が相続する際に85歳に達するまでの年数×10万円を控除する制度です。特別障害者の場合は85歳に達するまでの年数×20万円が控除されます。

例えば、60歳の障害者が財産を相続した場合は250万円((85-60)×10万円)が控除されます。障害者控除によって結果的に相続税が0円となる場合でも相続税の申告は必要です。

申告の必要性は税理士に確認

相続税の計算や特例の適用は、税率や制度が非常に複雑になっているため理解するのは難しいものです。国税庁のホームページにアクセスすれば内容を確認することができるので、ご自身で対応することも可能です。しかし、遺産相続は、確定申告のように何度も経験して数をこなすことがないため、慣れていない人がほとんどでしょう。また、相続財産は人によって大きく異なるため、資料を確認しても参考にならないことも多くあります。相続税の申告が必要にもかかわらず、申告を行わなかった場合、税務調査が入り加算税が課され、清算する必要があります。

相続発生前に生前贈与をしているケースも注意が必要です。毎年年間110万円までの暦年贈与であれば贈与税がゼロになりますが、被相続人が亡くなる前3年以内に贈与した場合、相続財産に繰り戻されます。繰り戻される期間に多額の金銭を続けて贈与している場合は、しっかりと贈与した時期や金額についても状況に応じて確認しておくことをおすすめします。

相続税の申告は被相続人が死亡したときから10カ月以内に行う必要があります。大切な家族が亡くなったあとは何かとすることも多いので、10カ月はあっという間に過ぎてしまいますので、大切な方を失って悲しみに暮れる中ではありますが、早めに準備を開始したほうがよいでしょう。相続税の納税に間に合わなかった場合や納付に必要な現金が準備できなかった場合、延納などさらに手間が増えてしまいます。

相続税の申告が必要か否か判断に迷う場合や、期限内の申告が難しい場合には、相続税の申告について実績のある税理士などの専門家に相談した方がよいでしょう。また、相続税は随時、税制改正があるので、前に経験した相続と同じとは限りません。各種特例の内容や条件を知っていなければ、特例の適用ができないため、支払う税金が異なります。特例の条件とは相続人との関係や自宅不動産に実際に住んでいるかなど、複雑な条件があります。

個別性の高い財産の評価については、ノウハウが必要であり、一般的な知識だけで評価ができるわけではありませんので、専門家に依頼したほうが安心です。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい