依頼者・関係者
相談者は、広島市中区在住の40代の女性Aさん
家族は、夫婦のみ
Aさんは、専業主婦
相続財産の内訳
金融資産3,000万円
相談状況・内容
Aさんは、夫に頼まれて、夫の財産の内1,000万円をAさん名義で株式の運用をしていました。Aさん名義で運用していたのは、夫は仕事が忙しくて手続きができない為です。この度、株価の上昇により株を売却することになりました。
この場合にAさんは高額の贈与税を支払はないといけないのか?
また、株式売却益の申告は、誰がすればいいのかという相談でした。
ご提案・解決方法
まず、Aさんに、税務上の考え方を説明をしました。税務上は、実質所得者課税の原則(注1)で判断すると説明しました。
実質所得者課税の原則とは、形式、名義ではなく実質的な取引で判断するという考えです。この為、名義を変更しただけでは取引は成立しないのです。
例えば、贈与の場合、単に名義を変更しただけでは成立しないのです。贈与は、贈与事実がないと成立しません。
今回のケースでは、夫の管理の上、夫が仕事上手続きができない為、単にAさん名義で株式を運用していただけなので、実質所得者課税の原則により夫の財産になります。したがって、贈与の問題は発生しないし、株式売却の所得税の申告は夫が行うことになります。
ただし、証券会社から税務署へはAさんの名義で株式の運用の報告(注2)が行われることを説明しました。この為、Aさん名義で申告がないと税務署から問い合わせがある可能性が高い事を説明しました。
この為、事前に、税務署に問合せ等を行い、今回の取引の内容を説明をするようにアドバイスをしました。
Aさんは、税務署で上手く説明ができるか心配そうでした。
結果
Aさんは、税務署に上手く説明出来るか不安だった為、弊所が代理で説明を行いました。
税務署に対しては、今回の一連の取引は、名義株式であり実質の所有者はAさんではなくAさんの夫である事を説明しました。
色々な書類等提示して説明した結果、税務署に理解してもらいAさんが多額の贈与税を支払をする事もなく、また、夫の名義で所得税の確定申告を行い無事終了する事が出来ました。
税理士報酬が発生しましたが、税務署とのやり取りを全てお願いする事が出来てストレスもなく無事解決し安心されていました。
参考法令他
(注1)実質所得者課税の原則 所得税法 法第12条
第十二条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。
(注2)支払調書の提出 国税庁HP:株式等の譲渡の対価等の支払調書(同合計表)
証券会社は、株主に対して配当金を支払った時や、株式等の売買等が成立した時などに、誰に、いくら支払ったかを記載した書類を税務署に提出します。
この書類を「支払調書」といいます。
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