相続解決実例一覧

離婚して実家に戻って来た娘達の将来の生活を安定させる方法

依頼者・関係者

 相談者は、広島市在住のAさん73歳

 家族構成は、妻、長女、次女

相続財産の内訳

 現預金     3,000万円

 不動産(自宅) 3,000万円

 不動産(更地) 6,000万円

  合計     1.2億円

相談状況・内容

 Aさんの相談内容は次の3つでした。

① 将来、自分が死んだ後に離婚して実家に戻って来た次女と孫が生活に困らない様にしてやりたい。

② 相続税の節税をしたい。

➂ 自分が死んだ後の遺産分割で揉めない様にしたい。

ご提案・解決方法

 次女は結婚し、家庭を持ちましたが、お相手と性格が不一致で離婚してしまったということです。元配偶者側の不倫やモラハラ、暴力などが原因で婚姻を解消したわけではなかったため、慰謝料や養育費を受けているという状況ではありませんでした。

 所得制限がありますが児童扶養手当など自治体からの児童手当や親権を持つひとり親家庭を対象に支給されるさまざまな公的支援サービスや手当はあります。しかし、子どもの大学進学のための教育費や食費、病気になった際の医療費など、子育てにはなにかとお金がかかるので自治体から支払われる月額数万円の援助やサービスだけでは不安です。

専業主婦からシングルマザーとなった次女は、ひとりで子育てをしているため就職活動をする時間もありませんので、しっかりとした収入源をできるだけ確保して経済的な負担を減らしてあげたいということが相談者の方のお悩みでした。

また。孫も小さく、満足に仕事ができる状態ではなかったため、パートで働きに出ることが限界です。まずは孫を扶養している次女の生計を安定させる為に、現在、更地になっている土地にアパ-トなどの賃収物件を建築する事を提案しました。

これにより、将来、次女の収入の確保が出来るのと同時に相続税の節税にもなるからです。相続税の節税につながる理由は、建築費よりも建物の固定資産税評価の方が安いことや土地を貸すことで貸家建付地評価となり、評価減につながるからです。土地の評価については後程詳しく解説します。

 尚、キャッシュが無く、現金の確保が必要であったため建築費用は銀行借入によって賄かってもらう事も提案しました。借入をすることで手元に現金も残るため安心です。

 次に、上記➂の問題ですが、長女とは仲が悪くないようでしたが、念の為に遺言書を作成してもらう事を提案しました。遺言を作成する際は、証拠を残すためにも確実に有効な遺言として成立する公正証書で作成することをおすすめします。

結果

 その後、何度か家族会議を行い、上記の提案通りに進める事になりました。

 その結果、

 上記①の問題については、アパ-トの家賃収入により、次女に定期的にお金が入るようになり将来の生活が確保出来るようになりました。

 次に②の問題については、1億2,000万円のアパートを建築する事により相続税がかからなくなり節税する事が出来ました。

 相続税の制度によって現状よりもかなり相続税を節税することができます。アパ-トの建築によって相続税の節税になる仕組みは下記の通りです。

  〇 土地の評価額が借地借家権等により15%下がる。

  〇 建物の評価額は建築価格ではなく固定資産税評価額で評価される。

  固定資産税評価額は一般的に建築価格の50~60%になる。

  更に、評価額は、固定資産税評価額が借地借家権等により30%下がる。

 これにり、借入金との差額が生じて相続財産の評価額が圧縮されるのです。

 言葉だけでは分かりにくいと思いますので、アパ-ト建築後の課税対象となる相続税の評価額を数値で確認してみて下さい。

 現預金     3,000万円

 不動産(自宅) 3,000万円

 不動産(アパ-ト建築後) 5,100万円 = 6,000万円 ✕ 85%

 建物  4,200万円 = 1.2億円 ✕ 50 %  ✕ 70 %

 借入金 ▲1億2,000万円

  合計  3,300万円

 以上から相続税の基礎控除額(注3)4,800万円以下となる為、相続税はかからなくなるのです。

 最後に➂の問題ですが、遺言書の内容を、自宅を妻にし、長女に現預金2,000万円、残りを次女に相続させるという内容にしました。

 ここで問題なのが、長女の遺留分(注2)でした。

 長女の遺留分は財産の1/8あります。

 相続税の財産評価額で計算すると遺留分は400万円位です。

 しかし、争いが生じ、遺留分を請求された場合には、財産の評価を売買取引価格などの実勢価格で評価すると遺留分の金額が高くなる可能性があり、実際に支払う金額が多くなるからです。

 ただ、この時点で遺留分の金額を算定する事は困難なので、長女には2,000万円の財産分与で納得して頂く事で収まりました。配分はどの程度の範囲であれば双方合意できるのか考えながら話し合いを実施するようにしましょう。

 以上によりAさんの相談内容の全てを解決する事が出来て、不安も解消されたので非常に満足されたご様子でした。

一棟のアパートを建築することが難しい場合、マンションの一室を購入した場合でも同じような効果を得られます。

アパート建築の注意点

今回のケースではアパート建築によって次女の生活も安定的にし、相続税の節税にも成功することができました。しかし、アパート建築にはメリットだけでなく、注意点もありますのでご紹介しておきます。

納税資金不足に陥る可能性がある

手持ちの預貯金を使ってアパートを建てた場合、金銭が不足し、相続発生時の納税資金に困るケースがあります。

妻や夫が相続する場合は配偶者控除を利用できますが、子どもが財産を受け取る場合、原則現金で相続税の支払いを済ませる義務があります。アパートを建築しても相続税を現金で支払えるか確認することも大切です。

分け方でトラブルになる可能性がある

今回の記事のケースでは姉妹間での話し合いがうまくいきましたが、法定相続人と異なる分け方になりますので、相手方の出方によっては、交渉がまとまらず争いに発展する可能性もありますし、それぞれの立場もあり、相場もありませんのでいくらで納得してもらえるかはわかりません。

そのため、事前に状況を説明し、取り決めておくことが重要です。アパートを建築することで、分けることが難しくなることもありますし、特定の人に支援することで不公平が生じます。少しの行き違いで相続人間での協議がまとまらない場合、弁護士を交えての話し合いとなったり、裁判所で調停になったりすることもありますので、税金対策だけでなく、分け方にも注意を払い検討する必要があります。「自分の家族は大丈夫」と言っている方でも実際に相続が発生すると裁判に発展するほど揉めることが多くあります。

相続税の申告は相続発生から10ヶ月以内と短い期間内に終わらせる必要があり、あまり長く話し合っている時間はありません。相続人間での争いが心配な場合は、子を集めて事前に話し合いの場を持ち、情報を共有することで関係を保つようにしましょう。

空室や自然災害のリスクがある

アパートを建築しても賃貸経営が必ずうまくいく保証はありません。入居者は近隣地域の条件や物件の特徴なども見比べて各種サイトなどで情報を得てから入居を決めます。駅からのアクセスなど立地も重要になってきますので、その土地が人気エリアなのか調べ、知識を得る必要があります。

また、不動産は長い期間保有することになりますので、老朽化することで、同じエリアでも新しいマンションに比べて人気が無くなることもあります。

今後、自然災害などで修繕が必要になるケースもありますので、負担があっても耐えられるように資金計画には余裕をもっておく必要があります。将来の収支の見込みも立てておきましょう。

また、銀行借入で行う場合は金利の変動にも注意が必要です。アパートを建築するためのローンは住宅ローンよりも金利が高く設定されますので、金利が上昇すると収支を圧迫し、実際にもらえる手取り額が少なくなる可能性があります。

うまくいけば、生活資金の確保や年金の足しにもなりますが、必ずしも経営がうまくいくとは限りませんので気軽にできることではないということは理解したうえで判断しましょう。

所得が増える

アパート収入の家賃は所得になります。所得が増えることで、所得税がかかりますし、所得が増えると所得制限で引っ掛かり、自治体からの補助が受けられなくなる可能性があります。

住んでいる市区町村の自治体などによって事情が異なりますので、部屋数が多く高い所得になりそうなときは他の影響も考慮する必要があります。

手続きが複雑になる

アパートを経営することで、所得税の申告が必要となり、財産に応じて評価する相続税の計算も複雑になります。相続税の計算は各財産をひとつずつ評価する必要がありますので、事前に準備しておくようにしましょう。

自身で行うことが難しい場合は税理士に相談しましょう。

参考法令他

(注1)不動産の評価方法(相続税法第22条、財産評価通達)

 不動産の評価方法は、相続税法22条に時価による規定されていますが、時価の算定が実務上は難しいので、財産評価通達に基づき、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で算定するのが一般的です。

 尚、路線価は公示価格の80%、固定資産税評価額は公示価格の70%と言われています。

(注2)遺留分(新民法第1042条)

 遺留分とは、民法によって兄弟姉妹(甥・姪)以外の法定相続人に保障された相続財産の最低限度の割合のことをいいます。

(注3)相続税の基礎控除額(相続税法第15条)

 相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額から、3,000万円と600万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額を控除する。

相続事例の執筆担当者

氏名:税理士:藤田 正則(ふじた まさのり)

資格:税理士(税理士登録番号109481号)
   AFP(日本FP協会)

専門分野:相続税、資産税、地主の節税対策

出身:広島県広島市

趣味:海外旅行

お客様に一言:税金の計算や支払いに不安のある方は気軽にご相談ください