相続解決実例一覧

遺言書の作成と遺留分放棄のセットによる遺産分割で揉めないようにする方法

依頼者・関係者

 相談者は、廿日市在住の80代の男性Aさん

 相続人は、子供3人(長男、次男、長女)

 妻は2年前に他界

相続財産の内訳

 金融資産3,000万円

 不動産 4,000万円

  合計 7,000万円

相談状況・内容

 Aさんは、全ての財産を長男に相続させる事を希望されていました。

 次男と長女には、今までに、結婚資金、住宅の購入資金、孫の教育費など相当な援助を行ってきたので、これ以上、遺産相続の際に財産を渡す必要はないとお考えでした。

 Aさんは内心、次男と長女もそう思っているはずだから自分が死んだ後、揉める様な事はないとお考えでしたが、万が一揉めた時のために何か事前に出来る事があれば対策しておきたいというご相談でした。

ご提案・解決方法

 今回の様な話では、Aさんだけが方針に納得していて、思いが一方通行の事がよくありますので注意が必要です。財産を長男に遺したいとの意向はあるものの、単にAさんが思っているだけで次男や長女が相続権を主張する意思表示があれば、ある程度の財産を渡す必要があります。

相続の対象となる資産の半分以上が不動産ですので土地・建物を相続する長男は代償分割によって相当な額の金銭を次男と長女に手持ち資金から渡す必要が出てくるケースもあります。万が一トラブルになった場合は家庭裁判所の審判や調停が行われることもあります。

 まずはAさんの思いが間違いないのか子供さん達に慎重にヒヤリングをしました。

 色々お話を伺った結果、Aさんの思い通りで、更に、兄弟の仲も良さそうだと判断し、次の様な提案を行いました。

(1)遺言書の作成

 まずは、公正証書遺言書を作成する事にしました。

 いざ相続が発生すればAさんに対して、これまでの援助をいくら感謝や理解を示したとしても、次男や長女が遺産分割で何も意思表示しないという保証はありません。

 奥様が亡くなっているので遺産分けは最後のチャンスなのです!

 また、次男や長女が良くても被相続人が亡くなったあとに外野(配偶者等)が不公平だからもらえる分はもらうべきと、議論に参加して焚きつけて気が変わる事もよくあります。

 そういった、もしもに備えて遺言書を作成しておけば、全部の財産を遺す人を指定できるので安心です。遺言書は財産配分をスムーズにするだけでなく、不動産登記などの手続きも円滑にできるためメリットが非常に大きい方法です。遺言書があれば、財産配分について全員で合意する必要もなく、相続人の負担も大きく減らすことができるでしょう。遺言には預金や株式、投資信託、不動産など保有している財産の一覧も添付しておくようにしましょう。

万が一事情が変わった場合、撤回することも可能です。認知症になって意思能力を失い、遺言を書けなくなってしまうこともありますので、早い時期に作成したほうがよいでしょう。

(2)遺留分の放棄

 次に、次男や長女に遺留分の放棄(注1)をしてもらう事にしました。

 ここで遺留分(注2)とは、相続人に認められている遺産の最低限の取り分です。

 今回の件では、遺言書で長男に全て相続させると書いても、次男と長女には、遺留分として、それぞれ1/6の権利があります。生前に贈与を受けた分は特別受益として考慮されますが、遺留分を侵害した分を請求されればその分を渡す必要がありますので、長男にすべての財産を遺贈することができません。配偶者や子どもには遺留分があることは注意点として認識しておく必要があります。

 この遺留分(1/6)の権利を次男と長女に放棄してもらう事にしました。遺留分の放棄と遺言をセットにすることで、次男と長女は相続権を失うことになりますので相談者の悩みは解決することができました。また、遺留分は一度放棄すると放棄したことを取り消しすることはできません。

 ただ、無条件というのも難しいケースが多いです。そのため、次男と長女、或いは孫たちに、生前贈与を行って意思を確認する事にしました。生前に自ら財産に関する情報や気持ちを伝えて、知っておいてもらうことは非常に重要です。死後に自分が全く財産をもらえないと知って憤慨するケースも多くあります。

結果

 その後、Aさんは、次男と長女に遺言書の事を説明し、遺留分の放棄について打診、検討の結果、2人とも快諾してくれましたので相続財産を長男がすべて受け取ることができることになりました。

 相続人に対して、生前に相続放棄をしてもらう事は法律的に認められていません。

 しかし、上記で解説したとおり遺留分の放棄は制度的に認められているのです。

 遺留分を放棄しても、相続放棄をしているわけではありませんので、財産を取得する可能性がなくなるわけではありません。しかし、遺言書+遺留分の放棄によって、実質的に相続放棄してもらう事になるのです。

 遺言を作成しておくことで、遺産分割協議をする必要がなくなります。法律的に要件を満たす遺言書であれば、金融機関の手続きや不動産の登記も行うことができます。財産の一覧も添付しておくことで、財産の調査も必要ありませんので、手続きを早めることができます。

ただし、要件を満たしていなければ、無効となってしまいますので、知識がなく遺言書の書き方が分からない場合や書くべきポイントを相談したい場合は、法律の専門家である弁護士や司法書士、相続業務や贈与税の実績がある税理士のサポートを受けることをおすすめします。

遺留分の放棄は家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。費用は収入印紙代が800円かかるだけで高額な費用がかかるわけではありませんし、簡単に行うことができます。

 尚、今回のケースは成功しましたが、現実的には上手く行くケースは少ないかもしれません。

  遺留分の放棄をしてもらうには、生前の支援の度合いや付き合いなどが良好でなければ実現しないからです。場合によってはトラブルになる可能性もあります。

相続について考える際は、金融資産や土地や建物、生命保険、借金などの負債をまとめ、一覧にして法定相続分に分けた場合と自分の意思通りに分けた場合にどのように違いかあるか確認してみるとよいでしょう。考えを整理してから話すことで、遺される家族のトラブルを避けることができます。

相続発生後は戸籍謄本を収集し、自筆証書遺言の場合は検認が必要となるなど、さまざまな手続きを行う必要があります。相続税の申告は10ヶ月以内と短い期限で行う必要があります。相続発生後はなにかと忙しく、あっという間に時間が過ぎてしまいますので、スムーズに手続きを進められるように準備が重要です。

因みに、遺留分の放棄の利用は、年間で1,000件程度の様です。

参考法令他

(注1)遺留分の放棄(民法第1043条)

1.相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

2.共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

尚、家庭裁判所は、放棄した人の財産状況や放棄の理由などで判断するようです。

下記から裁判所に提出する書類をダウンロ-ドして下さい。

遺留分放棄の許可の申立書

(注2)遺留分(新民法第1049条)

遺留分とは、民法によって兄弟姉妹(甥・姪)以外の法定相続人に保障された相続財産の最低限度の割合のことをいいます。

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相続事例の執筆担当者

氏名:税理士:藤田 正則(ふじた まさのり)

資格:税理士(税理士登録番号109481号)
   AFP(日本FP協会)

専門分野:相続税、資産税、地主の節税対策

出身:広島県広島市

趣味:海外旅行

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