氏名:税理士:藤田 正則(ふじた まさのり)
資格:税理士(税理士登録番号109481号)
AFP(日本FP協会)
専門分野:相続税、資産税、地主の節税対策
出身:広島県広島市
趣味:海外旅行
お客様に一言:税金の計算や支払いに不安のある方は気軽にご相談ください
相談者は、70歳の男性Aさん
相続人は、妻と弟の2人
Aさん夫婦には子供はいない
金融資産5,000万円
自宅3,000万円
不動産(アパ-ト)2億円
合計2.8億円
Aさんの相続についての思いは2つありました。
1つ目は、自分が死んだ後は、妻が生活に困らない様に遺産を全て妻に相続させたい。
現状、相続が発生した場合には、弟に1/4の権利が発生する為、妻に全てを相続させるにはどうすればいいのか?
2つ目は、妻が相続した不動産については、妻が死んだ後は、弟若しくはその息子に相続させたい。
妻が相続した財産は、妻の死亡後は、妻の兄弟姉妹等に相続される事を防ぎたい。
不動産は先祖代々の土地なので弟に守って欲しく、妻側の家に相続させない方法はあるのか?
以上2つのご相談でした。
1つ目については、Aさんが遺言書で妻に全てを相続させると書けば問題解決です。
弟には遺留分(注1)の権利がないので遺言書で妻に100%相続させる事が出来ます。
問題は、2つ目の希望です。
奥様が、Aさんの弟に不動産を遺贈(相続)させる遺言書を作成すればいいのですが、遺言書の欠点として簡単に書き直しが出来る事です。
万が一奥様の気が変わったり、外野から入れ知恵等をされて遺言書を書き直す可能性があるのです。
そこで、万全を期する為に家族信託(注2)を提案しました。
家族信託を締結すれば、契約行為なので奥様の判断だけでは修正する事は出来ません。
次に、信託の内容については、Aさんの思い通りに、下記の様な内容にしました。
① Aさんが亡くなったら全ての財産を奥様へ相続させる
② 奥様が亡くなったら奥様の不動産はAさんの弟へ遺贈(相続)させる
最近よく使われる手法で「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」と言われる信託契約です。
家族信託を利用する事によって、遺言書では無効であった2代先、3代先までAさんの意思で財産の移転を決める事が出来るのです。
尚、上記の内容を遺言書で作成しても無効となります。
遺言書では、Aさんから奥様に財産が移転したら、その財産は奥様のものになるので、その後(奥様の死亡)の財産の処分等をAさんが決める事は出来ないからです。
Aさんも奥様も弟さんも、最初は、信託契約という馴染みのない言葉に戸惑われていました。
最終的には理解され、上記の提案内容で信託契約書を作成し、皆様、安心されました。
この様に、家族信託を利用すれば遺言書で実現出来なかった法律行為が可能となります。
また、今回の様に遺言書の代わりだけでなく認知症対策等、幅広く利用する事が出来ます。
(注1)遺留分(新民法第1042条)
遺留分とは、民法によって兄弟姉妹(甥・姪)以外の法定相続人に保障された相続財産の最低限度の割合のことをいいます。
(注2)家族信託(信託法)
平成18年の信託法の改正により、それまでは、信託銀行など一定の免許を持った者しか出来なかったものが、家族間などでも簡単に出来る様になりました。
家族信託を利用する事によって、本人が認知症など意思能力が無くなったり、或いは、死亡しても、本人に代わって委託者(家族等)が財産の処分や管理を行う事が出来るのです。
尚、信託は、委託者、受託者、受益者の3者が当事者となり財産の処分、管理の権限やその収益の帰属者などを決めて行きます。