相続解決実例一覧

荒地なのに相続税の評価額が高すぎる!何とか評価を下げる方法はないのか?

2020年11月20日

依頼者・関係者

 相談者は広島市佐伯区在住のAさん

 母が死亡し、相続人はAさんと弟の2人

 尚、父は5年前に他界

相続財産の内訳

 不動産   8,000万円

 その他財産 5,000万円

  合計財産 1億3,000万円

相談状況・内容

 Aさんは、当初、お願いしていた税理士さんに計算してもらった相続税が、自分が想像していた以上に高いので驚き、何とか安くならないのかという事で弊所にセカンドオピニオンとして相談に来られました。

 Aさんが納得されていなかった理由は、土地の評価額が、利用状況や実際の売買価格と比較して異常に高い事の様でした。不動産が遺産の大部分を占める場合、不動産の評価によって負担額は大きく異なります。不動産は様々な評価方法があるため、どれくらいの評価額で申告すればわからないという方も多いでしょう。

当記事では、実際の評価と相続税評価が大きく異なる場合の不動産評価について解説していきます。

ご提案・解決方法

(1)現状分析                                  

 まずは、Aさんが思う様に、本当に土地の評価額が高いのか検討する事にしました。

 固定資産税評価額の確認やグ-グルマップなどの机上調査後に現地確認を行いました。

 現地に行くと、今回の対象地は、田畑に囲まれている原野みたいな土地で利用価値が非常に低くなりそうにもかかわらず役所で確認すると、市街化区域(注1)に指定されていました。

 どうやら、この地域は、市区町村が計画的な街づくりを進めていく地域として市街化地域に定めている様でした。

その結果、この対象地は、市街化地域の為、固定資産税評価額が高く評価されていたのです。

 尚、今回の対象地は、路線価地域ではないので、固定資産税評価額に基づく倍率方式(注2)で評価しなければならない土地でした。

 そうなると、固定資産税評価が高いので、必然的に相続税評価額も高くなります。

 また、近隣の土地で固定資産税評価額よりもかなり低い価額で取引されている実例もありました。

 しかし、最初にお願いした税理士さんは、現地確認も行わず、路線価地域ではないという理由だけで単純に固定資産税評価額に基づいて評価した結果、非常に高額になっていた様です。

今回のケースのように居住している人の実際の肌感覚と行政上の土地の位置づけが必ずしも一致していないことがあります。実際に活用することが難しい土地であるにも関わらず、アパートを建築するなど、様々な事業的な用途で活用できる土地として評価された場合、かなり相続税がかかることになります。最悪のケースでは土地の評価が高すぎて、現金で相続税が払えずに相続放棄をせざるをえない可能性があります。

このような土地を被相続人が所有していた場合、遺された子や家族は、相続税がなるべくかからないようにするために、何をすればよいのでしょうか。次に税務調査に入られたとしても、問題が起こらないように解決できる方法を解説します。

(2)提案内容

 弊所では、現況や近隣の売買実例等から検討し、固定資産税評価額を用いるのは妥当ではないと判断しました。

 しかし、近隣の売買事例だけで評価するのは合理性が無い為、不動産鑑定士と相談し不動産鑑定評価額で評価する事を提案しました。土地の相続税評価をする場合、この方法が得だからという簡単な理由で評価をすることはできません。現行の制度をふまえ、税務署に納得してもらえるように評価し、申告する必要があります。

贈与する際の贈与税や相続をする際の相続税など、財産移転に伴う税金については税務署もしっかり確認する傾向があります。特に相続は被相続人が所有するすべての財産が移転することになりますので、財産を一覧化し、おかしいところがないか入念にチェックする必要があります。

結果

 不動産鑑定評価額は、当初の相続税評価額よりかなり低い金額となりました。

 不動産鑑定評価の為の費用が30万円かかりましたが、Aさんは、相続税が安くなり大変喜ばれていました。

 具体的には、当初の相続税評価額(固定資産税評価額を基に評価)は、8,000万円でしたが、不動産鑑定による評価額は3,000万円になりました。

 その結果、相続税も、1,360万円が470万円となり890万円相続税が安くなりました。

 このように評価の仕方によって課税される金額が大きく異なることがあります。ただし、相続税が高いという理由だけで、毎回、不動産鑑定評価は使えるわけではありませんのでご注意下さい。

 不動産鑑定評価が採用できるのは、相続税の財産評価通達(注3)に基づき評価した場合に、明らかに不合理である場合に限られます。

相続税を申告した後に、不当に高い評価であることが判明した場合でも、既に支払った相続税の還付を受けることは難しいでしょう。そのため、相続発生時にしっかりと評価を行う必要があります。相続税の申告に必要な財産の評価は、所得税のように画一的なものではなく、税理士でも判断が分かれる場合が多くあります。

相続税の基礎控除や生命保険の非課税枠など基本的な特例などはご自身で得た知識で十分に対応できるでしょう。

しかし、このような複雑な判断を行うには、相続税法の専門知識や経験が必要になります。

今回のケースのように不動産鑑定のように有料なサービスを利用してもそれ以上に、相続税が軽減される効果があることもありますので、相続税に関するコンテンツを複数扱うサイトにアクセスするなど関連する情報を集めて知識を深めるか、何から始めたらいいかわからない場合には直接相談するなど、しっかりと対応する必要があります。

自分の財産がどれくらいの評価になるかわからないという方は生前に把握しておくことも有効です。生前贈与や遺言の作成など、遺された配偶者や子供が困ることがないように様々な対策を検討してみるとよいでしょう。

参考法令他

(注1)市街化区域(都市計画法)

 市街化区域とは、都市計画法で指定される都市計画区域の1つです。市街化区域は、市街化を活性化する地域のことで、住宅街や商業施設などがある市街化された区域、またはこれらを概ね10年以内で市街化を進める区域です。したがって市街化区域であれば住宅などを許可なく建築する事が出来ます。逆に、市街化調整区域は、市街化を抑制する地域で住宅や商業施設などの建築が原則として認められていません。

(注2)土地の評価(財産評価基本通達)

 相続税の土地に評価は、路線価方式と固定資産税評価に基づく倍率方式があります。

どちらの評価を採用するかは、地域ごとに国税庁が定めています。

 ・路線価方式→国税庁が定めた路線価(1㎡の価額)に面積などをかけて算出する方法

 ・倍率方式→固定資産税評価に倍率(国税庁が定めた倍率)をかけて算出する方法

(注3)財産評価基本通達

 相続財産を評価する時に、国税庁が定めている評価の基準。

相続事例の執筆担当者

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい