お役立ちコラム一覧

田・畑を保有している場合の相続税について

2025年10月11日

被相続人名義の財産の合計が基礎控除を超えている場合、相続税の計算のために財産の種類によってあらゆる方法で評価する必要があります。遺産相続をする際の財産の中でも評価が複雑なのが、土地・建物などの不動産です。基本的に土地は地域や道路付けなどにより、財産としての評価が大きくことなります。

また、使用の用途によっても財産としての評価が変わることもあります。例えば、地目が田・畑に分類されている土地は同じ場所にあっても、造成などの費用が掛かる分、宅地化した後と同じ評価とはならない例が多いです。また、農地は減少傾向にあり、今後これ以上減少することを避けるため、さまざまなルールが設けられており、手続きが複雑です。

当記事では、田んぼの相続税評価や特例の対象とする要件やおすすめの対策についてポイントをおさえてわかりやすく解説します。

田んぼの相続税評価

農地の評価方法は純農地、中間農地、市街地周辺農地、市街地農地の4種類に分かれています。

市外か調整区域にある純農地と中間農地については固定資産税評価額×倍率で計算します。

東京、大阪、名古屋などの三大都市圏やアクセスが良い市街化区域で所有する市街地農地の場合は農地を宅地に転用して、マンション経営などに活用した場合に価値が大幅に増大する可能性があるため、宅地比準方式または倍率方式で評価をします。

宅地比準方式とはその土地を宅地として評価する金額から宅地造成費を差し引く計算方法です。

上に建物を建てる目的で造成する場合は費用がかかります。

宅地として評価する場合は、路線価に基づいて、路線価×地積で評価を行い、造成費を差し引きます。11㎡あたりの路線価は国税庁のサイトで検索し、全国の路線価図を確認することができます。

市街地に近い市街地周辺農地の場合は市街地農地の計算方法に応じた算出した価格×80%で算出することで一定の減額をすることができます。

田んぼを相続する際の特例

農地を相続し、引き続き農業経営を行う場合は農地部分の相続税や一括で贈与をした場合について納税猶予の適用を受けることができます。 納税猶予を受けることで相続税の負担が減りますので、メリットは大きいですが相続した者が、農業を続けることが条件となります。また条件を満たせば生産緑地に指定され、市街地農地は通常よりも固定資産税の優遇措置もあります。

ただし、納税猶予は免除や控除ではありませんので、農業を引き続き営んでいくことが前提となります。遺産として農地を受けた後、次の相続が発生するより前に売却をしたり、取得した農地を他の用途に適しているからといって宅地転用するなど営農ができなかった場合に猶予された分について、宅地転用が認められたとしても税金を支払う必要があります。現金がなく税金の支払いが困難な場合は、農業を続けるしかありません。

また、そのために納税猶予を受ける際に担保を提供する必要があります。

納税猶予には期間がありませんので、終身のうちに解除すると本来支払う予定であった相続税と利子税を支払う義務が生じます。利子税も加わりますので、通常通りに相続発生時に相続税を払っている以上に高くなってしまいます。

田んぼを持っている場合の事前準備

田んぼや畑を持っている場合、いずれ発生する相続のためにどのような事前準備を行えば効果的なのでしょうか。おすすめの対策を具体的にご紹介します。

遺言の作成

田んぼや畑は相続人全員で共有して、共同利用するケースは少ないため、複数の農地があるケースでも相続人のうち誰か1人が単独で相続するケースが多いです。 相続が発生した後に誰が相続するかを検討し始めると、それぞれが何を相続するかなど遺産分割の話し合いに時間がかかるなど、亡くなってからは決められないことも多くあります。

そのため、トラブルになり関係が悪化することを避けるためにも生前に遺言を作成し、後継者も決めて置き分け方を明確にして決めて

おくことをおすすめします。 また、田畑は固定資産税を支払うだけでなく実際に耕す必要があり、面積が広いと毎年の耕作などの農作業や田畑の管理は負担も大きいことや、買取できる人が少なく、簡単に売買して現金化できないため、相続発生後に相続放棄をしないよう、先に相談しておくことも重要です。

ただし、せっかく遺言で指定しても不備があると効力がなく、相続開始後に遺言のとおりに引き継ぐことができず、協議で調整した結果、法定相続分で分けることになる場合もあります。また、配偶者子どもなどに最低限の財産を取得する権利である遺留分を侵害するような割合で配分する遺言とした場合、遺言どおりに分けられない可能性もあります。そのため、相続人間で大きな差があるような配分となる場合は注意が必要です。

農地を相続する場合は農業委員会への届け出などが必要です。遺言書の内容について、後で問題が発生しないように検討する際や、実際に作成する際には司法書士や税理士など専門家に相談してもよいでしょう。

また、遺言どおりに手続きをする執行者をあらかじめ定めておくことで、名義変更のための書類の作成や法務局での登記などを依頼することも可能となり家族の負担を軽減することができるでしょう。

相続税のシュミレーション

田畑を保有している場合、通常の相続と比べても計算が複雑です。特例を利用できるかどうによっても大きく税額が変わります。 そのため、預貯金や株式、不動産など課税の対象となる相続財産の評価額をまとめた一覧の表にして事前にどれくらいの相続税を納める必要がありそうかをシミュレーションを行った時に税率なども把握しておくことが大切です。

税制を理解し、いくらくらいの相続税がかかるか基本的な事項を事前に確認しておくことで、その後で年間の非課税の範囲で生前贈与をするなどあらゆる対策を検討することができます。

田畑の相続にお悩み場合は専門家に相談を

相続が発生すると市区町村役場で戸籍謄本を収集するなど様々な作業が発生します。上記のとおり田畑の相続は通常の相続よりも難しく、民法などの一般的な法律だけでなく農地法による農業委員会への許可や届出などさまざまなことを考慮して注意しながら手続きを進める必要があります。

基礎控除以下の場合は相続税の申告は不要ですが、財産の総額が基礎控除を超える場合は申告が必要となります。

相続税の申告が必要な場合、死亡の翌日から原則10か月以内と短い期限で税務署へ申告書の提出が必要です。田畑以外の財産も期限内に評価をする必要があり、申告は非常に時間がかかる作業です。

国税庁のホームページに計算方法や税率は記載されていますが、相続の制度は複雑で、特例に該当する場合でも知識がなく、正確な税額を求めるための判断がつかない場合や申請方法がわからないということもあります。添付する資料や評価などが誤っていた場合、税務署による調査で指摘され、通常よりも高い加算性を請求される可能性もあります。

相続人ごとの税金の額を求めるために、特定の資産の価額が分からない状況の場合など自分で手続きをすることが難しい場合は相続税に強い税理士に相談した方が良いでしょう。費用はかかりますが、税のプロであり、相続税の申告の実績が豊富な税理士に依頼することで、期限内に確実に手続きを進めることが可能ですし、手間もかかりません。

広島相続税相談テラスでは相続税・贈与税の経験豊富な税理士が多数在籍しておりみなさまの手続きをサポートしております。 初回の相談はサービスで無料で対応しておりますのでお気軽にメールや電話等でご連絡ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい