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一人っ子の二次相続は要注意?理由と対策を税理士が解説!

2024年10月05日

相続開始後に遺産相続で発生する問題にはさまざまな種類のものがあり、問題にあわせて対策を打つことが重要です。

子供が1人の場合、分け方で揉めることは基本的にありません。しかし、相続税は二次相続の際には一人っ子の方が負担が多くなる傾向にあり注意する必要があります。

当記事では一人っ子の相続対策についてポイントをおさえて解説します。

一人っ子の相続税が高くなる理由

一人っ子の相続税が高くなる理由は相続税の計算方法にあります。相続税の計算は、預貯金や株式、投資信託などの金融資産や不動産や金などの現物資産などプラスの財産をまとめて合計した後に、借金などマイナスの財産を差し引いてから基礎控除(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を差し引いて法定相続割合通りに遺産分割したものとして、相続税の合計額を計算します。まず、一人っ子の場合は基礎控除が少ないので、課税対象となる財産の金額が兄弟がいる場合よりも大きくなります。

また、相続税の合計金額を求める際に使われる税率は一人当たりが取得した金額に応じて税率が計算されますので、相続人が少ないとそれだけ法定相続割合で配分した場合の取り分も大きくなるので、税率があがってしまいます。

配偶者が存命の場合は配偶者控除を利用することができますし、基礎控除も2名分使えることができますが、二次相続では法定相続人も一人になってしまいますので、基礎控除や生命保険の保険金で利用できる非課税枠(法定相続人×500万円)も一人分となってしまい、相続税が高くなってしまうというデメリットがあります。

一人っ子の相続対策

一人っ子の場合の相続対策はどのような対策を行えば良いのでしょうか。次に事前に準備できる方法を具体的に確認しておきましょう。

一次相続で子供に財産を遺しておく

一次相続ではとりあえず配偶者が全財産を引き継ぐということが少なくありません。

しかし、一人っ子の場合、二次相続が発生すると基礎控除は一人になってしまい税率が上がってしまいます。そのため、一次相続が発生した際に、配偶者の財産が流れ込んでいると、二次相続の際に相続税が高額になってしまうので、ある程度財産を子供に渡しておくことも一つの選択肢となるでしょう。

配偶者が財産を引き継がなくても生活に困らないと判断した場合は、配偶者が相続放棄をして子供が全財産を引き継いだ方が、税の面では有利な可能性もあります。民法で定められている遺留を侵害してしまうため、配偶者が法定相続分の財産を相続しないといけないと考えている人も多いですが、状況によっては話し合いをしたうえで配偶者が何も財産を引き継がないということも選択肢の一つとなります。

夫婦の財産の内容にもよりますので、シミュレーションをして配分を決定するほうがよいでしょう。一人っ子の場合、揉めることがないので遺言書を作成するなどの対応は不要だと考える人もいますが、一次相続の配分を決めることができたら、自分の考えを記した遺言を作成し、生前の考えを確実に書類にして自分の考え通りに配分できるようにしましょう。

遺言には公正証書遺言と自筆証書遺言がありますが、公正証書遺言の場合は、公証役場で作成するため、費用がかかるものの家庭裁判所の検認が不要です。

孫なども含めて生前贈与をする

一人っ子の場合、遺産分割協議で相続権を持つ者同士がトラブルにならないという大きなメリットがあります。子供が2人以上いる場合など相続人の人数が多い場合は、どうしても不公平になってしまいますが、1人の場合そのリスクがありません。

そのため、一人っ子の場合は生前贈与を行い、相続発生前に財産を移転し、納税する税額を減らすこともやりやすくなります。

贈与税には年間110万円までの非課税枠があり、贈与をすることができますが、110万円以下の贈与だと財産が多い場合、財産を減らすまでかなり時間がかかってしまいます。贈与は相続人以外にも行うことができますので、親から子供だけでなく、子供の配偶者、孫なども含めて毎年贈与をすることで、贈与する人数を増えるため、相続財産を大きく減らすことができます。ただし、贈与をする場合は現金で渡す場合でも、しっかりと贈与契約書を残しておく等、記録を残しておきましょう。

他にも教育資金贈与の特例や住宅取得資金贈与の特例を利用できる場合は一括で大きな金額を子や孫に贈与で取得させても贈与税を控除、軽減することができます。

小規模宅地の特例を利用できるようにしておく

自宅の評価額が高い場合、小規模宅地の特例の制度を利用できるかどうかで大きく課税される財産の総額が異なります。東京など都心の場合は土地の価格が1億円を超えるケースもあります。自宅の土地が高いあ場合は、小規模宅地の特例を使えるようにしておくことも有効な手段となります。

小規模宅地の特例は被相続人が亡くなる前3年間で子どもが持ち家に住んでいなければ適用することができます。兄弟姉妹がいない場合は、自宅を誰が相続するか揉めることはありませんので、持ち家を持たず賃貸で暮らして、両親が住んでいた家を小規模宅地の特例を利用して相続することも可能です。

条件を満たす場合は330㎡まで土地の評価を80%減額することができます。利用しない場合と比べ大きく税負担が減りますので、必ず使えるかどうか確認しておくとよいでしょう。

節税対策は税理士に相談を

相続が発生する前に対策を行うことで、亡くなった時に相続人が支払う税金を大きく減らすことができます。事前に相続税の節税をする際は現状把握をすることが重要です。自分の財産と家族構成の場合どれくらい税金がかかるか調査するようにしましょう。そのうえで贈与の特例などを利用し自分に合った対策を行うことで、税負担を減らすことが可能です。

課税制度に関する知識がない人が財産の評価や一次・二次の相続税の計算をすることは簡単ではありませんし、さまざまなパターンがあります。自分で行うことが難しい際は専門家である税理士に依頼することを検討してみてもよいでしょう。

相続税の申告は複雑で注意点も多くあります。また、相続税の申告は被相続人の死亡の翌日から原則10ヶ月以内に税務署に提出する必要があり、期限も短くあっという間に時間が過ぎてしまいます。出生から亡くなるまでの戸籍謄本の収集や法務局で不動産の登記、通帳を持っている金融機関の名義変更なども忙しい中で同時に進める必要があります。時間がない場合は自分で申告することが難しいケースもあるでしょう。

もし、税務調査で指摘されると追加で税金を払う必要が生じるケースもありますし、期限を過ぎて申告をしなかった場合は無申告加算税というペナルティが課されます。自分で申告をすることが難しい場合は、税理士に依頼することで、手続きの手間も省きスムーズに進めることが可能です。

申告を依頼する場合は費用が掛かりますが、初回の面談はサービスで無料で応じてくれるケースも多いので自分で手続きをすることに不安がある場合はまずは電話などで気軽に相談し、見積もりを依頼してみるとよいでしょう。税理士にもそれぞれの専門分野がありますので、相続税・贈与税を業務として多く扱っており、実績が豊富な税理士事務所・税理士法人に依頼することをおすすめします。

 

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい