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夫婦間でお金や財産を渡すと贈与税は発生するのか

2026年03月02日

目次

夫婦間でお金や財産を渡すと贈与税はかかるのか

夫婦の間でお金や財産を移動させることは日常的に行われています。しかし、税法上は夫婦であっても別々の個人として扱われるため、一定の条件に該当すると贈与税の対象になる可能性があります。

生活費の補填や日常的な支払いであれば問題ありませんが、まとまった資金や資産の移転は課税対象になることもあるため注意が必要です。

贈与税の基本的な仕組み

贈与税とは、個人から財産を無償で受け取ったときに課される税金です。現金だけでなく、次のようなものも対象になります。

  • 預貯金

  • 不動産

  • 株式・投資信託

  • 自動車や貴金属

  • 住宅取得資金

贈与税は、受け取った人(受贈者)が申告・納税を行います。

夫婦間でも贈与税の対象になる理由

法律上、夫婦であってもそれぞれ独立した財産権を持っています。したがって、一方から他方へ財産を無償で渡すと「贈与」とみなされます。

例えば、夫の預金を妻名義へ移す、妻が(対価を受け取らずに)夫名義の住宅ローンを完済・返済する、不動産を配偶者名義に変更する、といった行為は、原則として贈与に該当します。

年間110万円の基礎控除とは

贈与税には年間110万円の基礎控除があります。

■ 基本ルール

  • 1月1日~12月31日までの贈与の合計額

  • 110万円以下 → 贈与税はかからない

  • 110万円超 → 超えた部分に課税

例えば、年間80万円の贈与なら非課税ですが、150万円贈与した場合は40万円に対して課税されます。

※夫婦間の贈与にも適用されます。

贈与税がかからない夫婦間のお金のやり取り

夫婦の生活を維持するための支出は、通常贈与税の対象になりません。

生活費・教育費として通常必要な範囲

次のような支出は非課税とされています。

  • 食費・光熱費

  • 家賃や住宅維持費

  • 医療費

  • 子どもの教育費

  • 日用品の購入費

重要なのは、生活に必要な範囲であることです。

日常生活に必要な支出の考え方

生活費として認められるためには、

  • 必要な都度支払われている

  • 貯蓄に回されていない

  • 社会通念上妥当な金額

といった点がポイントになります。

例えば、毎月の生活費として渡されたお金であっても、「生活費として使い切れずに余った分を、配偶者名義の口座で多額に蓄財(資産形成)している」場合、その蓄財分は贈与と判断される可能性があります。

社会通念上妥当とされる範囲とは

生活費の妥当性は、以下を基準に判断されます。

  • 家庭の収入水準

  • 家族構成

  • 地域の生活水準

  • 支出の目的

高額すぎる生活費や、生活に関係のない支出は非課税と認められない可能性があります。

夫婦間でも贈与税が発生するケース

次のようなケースでは贈与税の対象になる可能性が高くなります。

預貯金をまとめて移した場合

夫名義の預金をまとめて妻の口座へ移すと、贈与とみなされます。

特に、

  • 数百万円以上の移転

  • 贈与契約の記録がない

場合は課税リスクが高まります。

高額な現金や資産の移転

以下のような資産移転は注意が必要です。

  • 高額な現金の贈与

  • 株式や投資信託の移転

  • 車や貴金属の譲渡

基礎控除を超える部分には贈与税が課されます。

配偶者名義での貯蓄(名義預金)

配偶者名義の口座でも、実質的に資金を管理しているのが本人である場合、「名義預金」と判断される可能性があります。

名義預金と判断されやすい例

  • 印鑑や通帳を本人が管理

  • 配偶者が口座の存在を知らない

  • 贈与の意思表示がない

この場合、相続時にトラブルになることもあります。

住宅購入資金やローン返済負担の肩代わり

次のようなケースも贈与とみなされる可能性があります。

  • 住宅購入資金を配偶者が負担

  • 住宅ローン返済を代わりに支払う

  • 頭金を一方が全額出す

持分割合と負担割合が一致していない場合、差額が贈与と判断されることがあります。

夫婦間贈与で利用できる特例・控除制度

夫婦間の資産移転には、税負担を軽減できる特例制度があります。

配偶者控除(おしどり贈与)の概要

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与する場合、最大2,000万円まで控除される制度です。

正式には「贈与税の配偶者控除」と呼ばれています。

2,000万円控除が適用される条件

主な要件は次の通りです。

  • 婚姻期間が20年以上

  • 居住用不動産または取得資金の贈与

  • 贈与翌年3月15日までに居住開始

  • その後も居住継続の見込み

  • 贈与税の申告を行うこと

基礎控除110万円と併用可能なため、その年の贈与額が合計2,110万円までであれば贈与税はかかりません。

居住用不動産贈与の要件と注意点

制度を利用する際の注意点:

■ 適用対象

  • 自宅の土地・建物

  • 自宅購入資金

■ 注意点

  • 同じ配偶者からは一生に一度のみ

  • 登録免許税・不動産取得税は別途必要

  • 将来の相続対策としての影響も考慮する

適用判断には専門的な検討が必要になることもあります。

夫婦間で財産を移す際の注意点

夫婦間の財産移転は日常的に行われますが、税務上の扱いを誤ると贈与税の課税対象となったり、相続時のトラブルにつながる可能性があります。
特に、高額資産や不動産の移転を行う場合は、事前にルールを理解しておくことが重要です。

名義変更だけでは贈与とみなされる可能性

財産の名義を変更しただけでも、実態が伴っていなければ贈与と判断されることがあります。

■ 注意が必要なケース

  • 預金を配偶者名義に変更しただけ

  • 不動産の名義だけ変更した

  • 実際の管理・使用は元の所有者のまま

税務上は「実質的な所有者」が誰かが重視されます。
形式だけの変更では、課税リスクを避けることはできません。

贈与契約書を作成する重要性

夫婦間の贈与でも、贈与の事実を明確にする証拠を残すことが重要です。

■ 贈与契約書を作成するメリット

  • 贈与の意思を明確にできる

  • 税務調査時の証明資料になる

  • 相続時のトラブル防止につながる

■ 記載しておくべき内容

  • 贈与日

  • 贈与者・受贈者の氏名

  • 贈与財産の内容と金額

  • 贈与の合意内容

  • 署名・押印

公正証書で作成すると、より証明力が高まります。

税務署に否認されないためのポイント

贈与が否認されないためには、次の点を意識することが重要です。

■ 実務上のポイント

  • 贈与契約書を作成する

  • 贈与額を基礎控除内に収める

  • 贈与ごとに資金移動の記録を残す

  • 受贈者本人が資産を管理する

  • 名義預金とみなされない管理体制にする

「形式だけ」ではなく、実態が伴っていることが重要です。

夫婦間贈与を相続対策として活用する考え方

夫婦間贈与は、将来の相続税負担を軽減する手段として活用できる場合があります。ただし、誤った方法で行うと逆効果になることもあるため、慎重な検討が必要です。

生前贈与で相続税負担を軽減できる可能性

生前に配偶者へ財産を移転しておくことで、将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

■ 活用例

  • 基礎控除内(年間110万円)の贈与を継続

  • 配偶者控除(おしどり贈与)の活用

  • 居住用不動産の贈与

ただし、相続開始前7年以内(2023年度以前の贈与は3年以内)に行われた贈与は、相続財産に加算(持ち戻し)されるルールがあるため、直前の対策には注意が必要です。

二次相続を見据えた資産移転の重要性

配偶者へ多くの財産を相続させると、一次相続では税負担が軽減されますが、配偶者死亡時の二次相続で税負担が増える可能性があります。

■ 二次相続を考慮すべき理由

  • 相続人が減ることで控除額が減少

  • 配偶者控除が使えない

  • 税率が高くなる可能性

長期的な視点で資産配分を考えることが重要です。

夫婦間贈与の判断に迷ったときの対応と手続きのポイント

夫婦間でお金や財産を渡す場合、生活費の補填なのか贈与なのか判断に迷うことがあります。税務上の取り扱いはケースごとに異なるため、自分の判断だけで進めるのではなく、制度の仕組みを理解したうえで適切に対応することが重要です。

特に高額な資金移転や不動産の名義変更を行う場合は、後から課税トラブルにならないよう、事前に手続きや記録を整えておきましょう。

■ 贈与と判断されやすい具体例

次のようなケースは、贈与と判断される可能性があります。

  • 預金をまとめて配偶者へ渡し、その後自由に使用できる状態にする

  • 高額な費用を負担して配偶者名義の資産を取得する

  • 生活費以外の目的で継続的に資金を渡す

  • 高価な時計や車などのプレゼントを贈る

夫婦間のプレゼントであっても、年間110万円を超える部分には贈与税が課される可能性があります。

■ 国税庁の考え方と課税判断の基準

贈与税は、年間の贈与額から基礎控除110万円を差し引いた残額に対して課税されます。

また、生活費や教育費など扶養義務の範囲内で必要な支出は課税対象外とされています。

つまり重要なのは、

  • 資金の用途

  • 金額の妥当性

  • 資金管理の実態

といった点です。

■ 贈与税の申告が必要になる場合の流れ

基礎控除を超える贈与を受けた場合は、受け取った側が申告を行います。

手続きの基本的な流れ

  1. 贈与額の計算

  2. 必要書類の準備

  3. 翌年2月1日〜3月15日に申告

  4. 税額の納付

不動産贈与などの場合は、登記手続きや評価額の算定など、別途必要となる手続きもあります。

■ 贈与として扱われないための管理方法

税務署から否認されないためには、次の点を意識しましょう。

  • 贈与契約書を作成する

  • 資金移動の記録を残す

  • 受贈者本人が管理する口座を使用する

  • 生活費と貯蓄資金を明確に分ける

「形式」ではなく、実態が伴っていることが重要です。

■ 夫婦間贈与を行う前に確認しておきたいこと

夫婦間の資産移転を検討する際は、以下の視点を整理しておくと安心です。

✔ 贈与の目的(生活費・資産移転・相続対策など)
✔ 贈与後の資金管理は誰が行うのか
✔ 将来の相続税への影響
✔ 他の相続人とのバランス

配偶者への資産移転は、相続対策として有効な場合もありますが、家族全体の資産分配に影響する点も踏まえて検討する必要があります。

■ 税務判断に迷う場合は専門サービスの活用も

贈与税の判断は、金額や目的、家計状況などによって異なります。

  • 不動産や高額資産を渡す予定がある

  • 相続対策として贈与を検討している

  • 税務リスクを確実に避けたい

このような場合は、税理士など専門家のサービスを利用することで、適切な対応方法を確認できます。

専門家に相談すべきケース

次のような場合は、専門家への相談が推奨されます。

  • 不動産の名義変更を検討している

  • 数百万円以上の資産移転を予定している

  • 相続対策として贈与を検討している

  • 家族構成が複雑でトラブルの可能性がある

  • 税務リスクを確実に回避したい

税理士や司法書士への相談により、適切な方法を選択できます。

よくある質問(FAQ)

専業主婦(主夫)への生活費は贈与になる?

通常の生活費として必要な範囲であれば、贈与税はかかりません。
ただし、生活費として渡された資金がそのまま貯蓄されている場合は贈与と判断される可能性があります。

夫婦共有口座のお金は贈与税の対象?

日本の金融機関には法的な「共有名義口座」は存在しませんが、便宜上、夫婦で共通して使う口座(実態としての共有口座)であっても、資金の出所と実質的な管理者が誰かによって判断されます。

毎月一定額を渡すと課税される?

生活費として必要な範囲であれば課税されません。
しかし、貯蓄目的や高額な定期送金は贈与と判断される可能性があります。

自宅の名義変更だけで贈与税はかかる?

不動産の名義変更は、原則として贈与とみなされます。
ただし、配偶者控除(おしどり贈与)などの特例を利用できる場合があります。

まとめ|夫婦間のお金の移動でも税務上の扱いに注意

夫婦間であっても、財産の移転は税務上「贈与」として扱われる可能性があります。

✔ 重要ポイント

  • 生活費など必要な支出は非課税

  • 高額資産の移転は贈与税の対象

  • 名義変更だけでは課税回避できない

  • 配偶者控除などの特例制度を活用できる

  • 相続対策として活用する場合は長期視点が重要

正しい知識を持ち、適切な方法で資産移転を行うことで、税務リスクを回避しながら将来の安心につなげることができます。

贈与にも様々なケースがあり、判断に迷う場合は、専門家に確認することが重要です。広島相続税相談テラスでは相続・贈与に関する実務に詳しい税理士が多数在籍しております。

初回のご相談は無料で対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい