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成年後見人は銀行預金を引き出せる?必要な手続きや注意点を解説

2026年09月25日

認知症などによって本人の判断能力が低下すると、銀行口座の管理や預金の管理や引き出しが困難になるケースは珍しくありません。
このようなとき、本人の財産を保護し、生活を支援するために利用できる制度が成年後見制度です。
家庭裁判所によって選任された成年後見人は、本人に代わって財産管理を行えます。
そのため、銀行で必要な手続きをしたうえで預金を引き出すことができます。
ただし、成年後見人であれば自由に本人のお金を使用できるわけではありません。

この記事では、成年後見人が銀行預金を引き出す方法や必要書類、口座を管理するときの注意点について解説します。

目次

成年後見人は本人の銀行預金を引き出せる

成年後見人は、本人の財産を管理するために必要であれば、本人名義の銀行口座から預金を引き出せます。
成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な人を法律面から保護・支援する制度です。
預貯金や不動産などの財産管理のほか、介護サービスや施設への入所に関する契約などについても支援を受けられます。
法定後見制度には、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類があります。

成年後見人には本人の財産を管理する権限がある

成年後見人には、本人の財産に関する法律行為について広い代理権が認められています。
例えば、本人の生活費や介護費、医療費などを支払うために銀行から預金を引き出したり、必要な金融取引を行ったりできます。

一方、保佐人や補助人の場合、代理できる行為の範囲は家庭裁判所の審判によって異なるので、注意が必要です。
銀行などの金融機関は、登記事項証明書などを通じて代理人の権限を確認します。
成年後見登記制度では、成年後見人等の権限や任意後見契約の内容などが登記され、登記事項証明書によって情報を確認できます。

預金を自由に引き出して使えるわけではない

なお、成年後見人が管理している預金や資産は、あくまで本人の財産です。
成年後見人自身の生活費に充てたり、親族へ自由に贈与したりすることはできません。
預金を引き出す場合も、本人の生活や療養、介護など本人の利益のために必要な支払いであることが基本です。

また、成年後見人は家庭裁判所の監督を受けながら後見業務を行います。
銀行から引き出した現金についても、収支を記録し、本人の財産と成年後見人自身の財産を分けて管理することが求められます。

成年後見人が銀行から預金を引き出すために必要な手続き

成年後見人に選任されたという情報が、自動的に本人の利用している銀行へ伝わるわけではありません。
本人の銀行口座を管理するには、それぞれの金融機関が定める手続きを行う必要があります。

金融機関に成年後見制度の利用を届け出る

成年後見人に選任されたら、本人が口座を持っている銀行などの金融機関へ成年後見制度の利用を届け出ます。
たとえば、ゆうちょ銀行では成年後見制度の利用を届け出た後、成年後見人等が預金の引き出しなどの財産管理事務を行えます。
銀行をはじめとする金融機関によって届出方法や取り扱いが異なるため、手続きを始める前に窓口や公式サイトで確認しましょう。

登記事項証明書などの必要書類を提出する

銀行では、成年後見人であることや代理権の内容を確認するための書類の提出を求められます。
例えば、ゆうちょ銀行の場合、成年後見制度に関する登記事項証明書、成年後見人等の本人確認書類、通帳、届出書などが必要です。
成年後見制度に関する登記事項証明書は、成年後見人の権限などの登記情報を証明する書類です。
なお、成年後見登記に関する証明書は、法務局の窓口などで交付されています。
必要な書類や提出方法は金融機関によって違うため、事前に準備するものを確認しておくと手続きを進めやすくなります。

銀行で預金の引き出しなどの取引を行う

金融機関への届出が完了すると、成年後見人は本人に代わって銀行口座を管理し、必要な取引を行います。
キャッシュカードやATMの取り扱いについても金融機関によって対応が異なります。
たとえば、ゆうちょ銀行では、本人による成年後見人の関知しない払戻しを防ぐため、本人のATMキャッシュサービス等を原則廃止する一方、成年後見人が使用する代理人カードを発行できます。
本人名義の口座の利用方法については、取引先の金融機関に確認してください。

成年後見人が本人の預金を引き出す際の注意点

成年後見人には財産を管理する権限がありますが、本人の預金を自由に扱えるわけではありません。
本人の利益を守ることを前提として、適切に管理する必要があります。

本人の生活費など必要な支払いに使用する

銀行から引き出したお金は、食費や家賃、医療費、介護サービスの利用料など、本人の生活に必要な費用の支払いに使用できます。
例えば、本人の家族と同居している場合など、生活費を家族で負担しているケースもあるため、確認が必要です。
裁判所が公開している成年後見人向け資料でも、本人が負担する生活費を現金出納帳に記録する例が示されています。
一方、親族への高額な贈与など、本人以外の利益につながる支出には注意が必要です。
判断に迷う場合は、家庭裁判所や司法書士、弁護士などの専門家へ相談しましょう。

本人と成年後見人の財産を分けて管理する

成年後見人は、本人の預金や現金と自分自身の財産を分けて管理します。
本人名義の口座から引き出したお金を成年後見人自身の口座へ入れて日常的に使用するなど、本人と成年後見人の資産が混在する管理方法は避ける必要があります。

将来の相続を想定して本人の財産を親族へ移すことも、成年後見人が自由に判断して行えるものではありません。成年後見制度は相続人の財産を確保する制度ではなく、現在の本人を保護・支援するための制度です。

家庭裁判所への報告に備えて収支を記録する

成年後見人は、家庭裁判所の監督を受けながら後見事務を行います。
そのため、銀行からいつ、いくら引き出し、何のために使用したのかを記録しておくことが大切です。
通帳や領収書、請求書なども保管しておきましょう。
専門職が成年後見人や監督人に選任された場合、家庭裁判所が報酬額を定めることがあります。報酬は本人の財産から支払われます。

成年後見制度を利用すると本人の口座や取引はどうなる?

成年後見制度を利用した場合の銀行口座やキャッシュカードなどの取り扱いは、すべての金融機関で同じではありません。
成年後見人の届出をするときに、利用できるサービスや取引の制限について確認しておきましょう。

本人のキャッシュカードやATMの取り扱いは金融機関によって異なる

成年後見制度を利用すると、本人のキャッシュカードやインターネットバンキングなどのサービスが制限される場合があります。
一方、金融機関によっては成年後見人向けの代理人カードなどを用意しています。
成年後見人がATMから預金を引き出す予定がある場合は、カードの発行方法や利用できる取引について銀行へ確認することが必要です。

後見制度支援預貯金・後見制度支援信託では引き出しに制限がある

本人が多額の預貯金を持っている場合などには、後見制度支援預貯金や後見制度支援信託を利用することがあります。
これらは、日常的な支払いに必要な金銭を成年後見人が管理し、普段使用しない財産を金融機関で別に管理する仕組みです。

後見制度支援信託の信託財産を払い戻したり、後見制度支援預貯金から預金を払い戻したりする際には、原則として家庭裁判所が発行する指示書が必要です。

認知症になった親の銀行預金を家族が引き出すことはできる?

親が認知症になった場合でも、家族や親族だからという理由だけで本人名義の銀行口座から自由に預金を引き出せるわけではありません。
重要なのは認知症という診断名だけではなく、本人にその取引を判断できる能力があるかどうかです。

本人に判断能力がある場合

認知症と診断された人でも、判断能力の程度は一人ひとり異なります。
本人が銀行取引の内容を理解して自分の意思を示せる場合には、本人自身による手続きや金融機関が用意する代理人制度などを利用できる可能性があります。
家族による代理取引への対応は銀行によって異なるため、まず本人が利用している金融機関へ相談しましょう。

本人の判断能力が低下している場合

本人の判断能力が低下し、預金管理や契約を自分で行うことが難しい場合には、成年後見制度の利用がおすすめです。
法定後見制度を利用するには、本人や配偶者、四親等内の親族などが家庭裁判所へ申立てを行います。本人の判断能力などを踏まえ、家庭裁判所が成年後見人等を選任します。
選任後は銀行へ必要書類を提出し、成年後見人が本人の代理人として財産管理を行います。

将来の財産管理に備える成年後見制度以外の方法

本人に十分な判断能力があるうちから将来の認知症などに備えたい場合には、任意後見制度などを検討できます。

任意後見契約を公正証書で締結する

任意後見制度は、本人の判断能力が十分にある段階で、将来任意後見人になってもらう人や、依頼する事務の内容をあらかじめ決めておく制度です。
任意後見契約は公正証書によって締結する必要があります。本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると契約の効力が生じ、任意後見人が財産管理などの業務を行います。
任意後見監督人には、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることもあります。

家族信託などを検討する

将来の資産管理に備える方法として、家族信託が検討される場合もあります。
ただし、家族信託と成年後見制度では目的や対応できる業務、本人を保護する仕組みなどが異なります。
本人の財産状況や希望によって適した方法は変わるため、司法書士や弁護士などの専門家から情報を得て検討することが重要です。

成年後見制度の利用を専門家に相談する方法

成年後見制度を利用する際は、家庭裁判所への申立てや必要書類の準備、金融機関への届出など、さまざまな手続きが発生します。
分からないことがある場合は、司法書士や弁護士などの専門家へ相談できます。また、家庭裁判所や法務局、銀行などが公開している情報を確認することも大切です。
銀行取引について一般的な情報を調べたい場合には、全国銀行協会などが公開する情報も参考になります。

成年後見制度は、本人の判断能力が回復したと認められる場合を除き、利用の目的となった手続きが終了したという理由だけで途中でやめることはできません。
制度の利用を検討する際は、開始後の財産管理や費用なども含めて確認しておきましょう。

成年後見人による銀行預金の引き出しに関するよくある質問

ここでは、成年後見人による銀行預金の引き出しに関するよくある質問を紹介します。

Q.成年後見人はATMで預金を引き出せる?

A.金融機関によって対応が異なります。
成年後見人が利用できる代理人カードを発行する銀行もあるため、口座のある金融機関で取り扱いを確認しましょう。

Q. 本人名義の口座を解約できる?

成年後見人は本人の財産管理に関する権限を持ちますが、本人の利益のために必要な取引であることが前提です。
口座の解約に必要な書類や手続きは金融機関によって異なるため、銀行の窓口などへ確認してください。

Q.成年後見人が銀行で手続きする際に必要なものは?

一般的には、成年後見人の権限を確認するための登記事項証明書や本人確認書類などが必要です。
ただし、必要書類や提出方法は銀行によって異なります。取引する金融機関へ事前に問い合わせ、必要な書類を準備してから手続きを行いましょう。

まとめ

成年後見人は、本人の財産を管理するために必要であれば、銀行口座から預金を引き出せます。
ただし、預金は本人の財産であり、成年後見人や家族、親族が自由に使用できるものではありません。
認知症などで本人の判断能力が低下し、銀行取引や財産管理を自分で行うことが難しくなった場合には、成年後見制度を利用する方法があります。
成年後見人に選任された後は、金融機関への届出や登記事項証明書などの提出が必要です。
銀行によって必要書類やキャッシュカード、ATMなどの取り扱いも異なります。

本人の生活費や介護費などを適切に管理しながら、家庭裁判所の監督のもとで後見業務を行うことが大切です。
制度や手続きについて判断に迷う場合は、家庭裁判所や金融機関、司法書士・弁護士などの専門家へ相談しましょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい