お役立ちコラム一覧

相続時精算課税制度の詳細と特別控除枠、贈与対象をチェック

2021年10月29日

資金や不動産などの現物資産の合計の評価額が基礎控除を超える場合、遺産に対応して相続対策を行うことが重要です。

相続税対策をしようと考えている方の中には、相続時精算課税制度が気になっている方もいるのではないでしょうか。相続時精算課税制度で生前贈与をすれば2,500円まで非課税になると考えている方もいますが、注意すべきポイントがあります。

そこで「相続時精算課税制度を活用したいけれど制度の内容がよくわからない」と悩んでいる方のため、制度の詳細と注意点を解説していきます。この記事を読むことによって、きちんと理解した上で相続時精算課税制度を検討できるようになるでしょう。

相続時精算課税制度とは?

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子や孫に生前贈与を行う際の方法の一つです。一定の金額まで取得した財産に税金は掛からないのですが、贈与した人が亡くなった際、相続時の財産に生前贈与した分もプラスして相続税が掛かってきます。

生前贈与する方は、贈与を利用する際に相続時精算課税制度を活用するかどうか将来の相続税のことも考慮しての選択が肝要です。

また、相続時精算課税制度を活用して、贈与を受けた場合、翌年の2月1日から3月15日までに相続時精算課税制度を選択する旨を税務署に届ける必要があります。

一度選択すると「暦年贈与」を使うことができなくなる点にも注意しなければなりません。

相続時精算課税制度を検討している方のために、特別控除額と贈与者や受贈者の対象に関して説明していきましょう。

基礎控除

相続時精算課税制度には暦年贈与のような年間110万円の基礎控除はありませんでしたので、少しでも贈与をすると相続税の対象として税金がかかる制度でした。しかし、2024年の改正により年間110万円の基礎控除が新設され、利用しやすくました。

以前は節税効果が薄い制度でしたが、この改正により、年間110万円以下であれば、贈与税・相続税がかかりません。長期間かけて贈与を行えば大きな節税となりますので、2024年以降は制度を利用する人が大幅に増えると予想されています。

特別控除額

相続時精算課税制度で用意されている特別控除額は2,500万円です。この制度を適用することで相続人1人に対して2,500万円までの贈与であれば、贈与税の税額は0円となり、相続財産に加算され、相続税の対象として課税されます。一度で2,500万円ではなく、複数年にわたって利用可能です。

また、贈与した金額が2,500万円を超えてしまった場合、それ超えた部分の金額については一律20%の贈与税が課税されることになります。

なお、相続時精算課税制度は、贈与者ごとに選択することができます。例えば、父からの贈与と母からの贈与の両方ともに、この制度を選択した場合には、特別控除額は父と母のそれぞれ2,500万円ずつで合計5,000万円まで利用することが出来るのです。この特例を適用することで、早期に相続財産を次の世代の渡すことができます。

土地や建物や株式を贈与することが可能ですので、収益不動産を贈与した場合、不動産から生まれる収益を次の世代に移すことができますし、将来値上がりが期待される株式も、相続発生時点ではなく贈与時点の評価額で相続税の計算をすることが可能です。預金を贈与するよりも値上がりや収益を期待できる資産を贈与した方が有利でしょう。

贈与者の対象

相続時精算課税制度で贈与者(財産をあげる人)の対象は、60歳以上の父母または祖父母であることです。

受贈者の対象

次に、受贈者(財産を貰う人)の対象には2つの条件が定められています。1つ目が、贈与をする年の1月1日において18歳以上であることです。2つ目が、贈与者の子、または孫などの直系卑属であることです。

もともと、この制度で孫は対象に含まれていなかったのですが、平成27年の法改正時に対象となりました。

相続時精算課税制度のメリットとデメリット

相続時精算課税制度にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

相続時精算課税制度を利用するメリット

相続時精算課税制度を利用するメリットは、早く次の世代に財産を渡すことができるということです。今後、評価額が上がりそうな財産や賃料などの収入を生む資産を事前に贈与しておくことで、若い世代がメリットを受けることができます。

相続時精算課税制度を選択するデメリット

相続時精算課税制度を利用することで、暦年贈与に戻ることはできません。

ただし、2024年の改正により、相続時精算課税制度にも基礎控除が新設されたため、毎年110万円まで非課税で贈与をすることが可能となり、デメリットはかなり小さくなったといえるでしょう。

また、住宅を相続する場合は小規模宅地の特例を利用できる可能性がありますが、相続時精算課税制度を利用して贈与する際の評価額は特例を適用した金額とはなりません。このようなデメリットも把握して制度を利用する必要があります。

相続発生時には原則、被相続人の死亡の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告書を作成し、納付を行う必要があります。相続時精算課税制度を選択した場合、贈与をした金額も含めて申告を行う必要があります。

誤った申告をすると税務調査で指摘される可能性もありますので、事前に財産の一覧表を作成し、シミュレーションを行い、適用対象となる特例も確認しておくなど、滞りなく申告ができるように準備をしておきましょう。

相続時精算課税制度を利用するために必要な手続き

相続時精算課税制度を利用するためには贈与税の申告書と相続時精算課税制度選択届出書と贈与者と受贈者が推定相続人であると子や孫であると関係がわかる戸籍謄本などを添付して税務署に提出する必要とがあります。

適用を受けるためには制度を利用することを申請する必要があります。贈与をすることで、自動的に制度を利用したことになるわけではありません。翌年2月1日から3月15日までの期限に提出する必要がありますので、注意しましょう。

利用についてはよく検討が必要

いかがでしたでしょうか?今回は相続時精算課税制度に関して、どんな制度なのかその内容についてご紹介しました。確かにこの制度は2,500万円まで非課税枠は用意されていて魅力的ですが、贈与者が亡くなった際には生前贈与分も合わせて相続税が課税される点や一度選択してしまうと暦年贈与制度を利用出来なくなるので選択する場合には注意が必要です。

また、相続税とは別の問題として、配分が偏る可能性があります。贈与によって相続人間で不公平が生じることがありますので、贈与をした金額がわかるように一覧にして書いておくことも重要です。特例を利用することは重要ですが、偏った贈与によって相続人間で争いが生じないように配慮することも重要です。

相続時精算課税制度に基づいて贈与税を申告する手続きは複雑です。間違って計算しないためにも税理士に相談しましょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
税理士選びにお困りなら、まずは無料相談でお気軽にご相談ください!

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい