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相続における特別養子縁組と普通養子縁組の違いをチェック

2022年01月17日

養子縁組には「特別養子縁組」と「普通養子縁組」の2つの方法があります。養子を迎える場合、どちらの制度を選択するかによって、相続関連で変わるポイントがあるので注意しましょう。将来的なことまで考えて決めると安心です。

この記事を読むことによって各方法が相続時にどのような扱いになるのかがわかります。
異なる点を理解したうえで養子を迎えることを考えたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

特別養子縁組とは

特別養子縁組とは、実親とその血族との関係を終了させ、養親のもとで新しく親子としての関わりを創設する方法です。

特別養子縁組が成立すると、その子は実の親とは法律上の親子関係ではなくなることになりますので、この方法を選択できるケースとして、実親のもとで生活することが著しく困難な場合や不適当であるなどの条件が定められています。家庭裁判所の審判によって、この方法を選ぶことが子供の利益のために必要だということを認めてもらってから手続きを行わなければなりません。

普通養子縁組とは

普通養子縁組とは、養子となる方が実親と関わりを保ったままで養親の子供になる方法です。そのため、実親と養親両方の子供になります。

通常、一般的に養子縁組といえばこちらの方法を指します。なお、この方法を選択した際に新たに関わりが築かれるのは、あくまで養親と、迎え入れる養子です。養親と養子の実親との関わりは他人となります。

相続における特別養子縁組と普通養子縁組の違い

それぞれの方法については、相続に関する扱いにも異なる点があります。以下に注意しましょう。

違い1 特別養子縁組は実親の相続人ではなくなる

特別養子縁組の場合、実親や親族と離縁し、戸籍上の関わりを終了させてから養子になる形です。実親の相続人としては認められなくなります。そのため、実親が亡くなった際にその財産を受け取ることはできません。このあたりについては、迎え入れる養子にも理解しておいてもらうのが良いでしょう。

そもそも、この方法では実親のもとで虐待や育児放棄を受けており、養育することが困難な状況である場合に選択されることが多いです。実親やその関係者から離れ、養親のもとで新たな人生をスタートさせる方法ともいえます。このあたりを考えると、実親の相続人ではなくなるのも理解できるでしょう。

なお、相続人ではなくなってしまいますが、実親の扶養義務もなくなります。

違い2 普通養子縁組は実親と養親の相続人になる

普通養子縁組では、実親との親子関係は解消せず、存続することになります。そのため、実親と養親、両方の相続人になります。実親から受け取る遺産については、養子縁組をする前と変わらない法定相続分となるのも異なる点です。

ただし、監護が必要な年齢の場合、扶養義務も養親はもちろんのこと、実親との両方に対して同様に発生することになります。また、養子縁組をするためには実親と本人の同意が必要となります。本人が15歳未満の場合は、父母等の親権者が本人に代わって法定代理人として合意の意思表示をすることになります。

また、結婚している場合は配偶者の合意も必要となります。

相続税対策になる?

養子縁組の制度を利用し、法律上の子を増やすことで、相続税対策になるという話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

確かに、養子縁組をし、相続人の数を増やすことで、亡くなった時の被相続人の基礎控除の額に影響しますので、基礎控除を超える財産を保有する人にとっては実際に相続税対策になります。

利用されるのが多いケースとしては孫を養子に入れるケースです。孫を養子に入れることで、法定相続人が増えるので、3,000万円+法定相続人×600万円で計算する基礎控除や500万円×法定相続人で計算する生命保険の非課税枠、死亡退職金の非課税枠を一人分増やすことができます。

ただし、相続税法上は実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人までしか相続税の基礎控除の計算の人数に入れることはできませんので、3人以上養子にしても相続税の節税にはなりません。相続税の節税にはなりませんが、相続権は有することになるので、相続税対策ではなく、連れ子などに相続権を与えたい場合は、養子にすることで実子と同じ権利を有するため、有効な手段となります。

一方で、縁組によって養子となった孫は、代襲相続とは異なり、遺産相続の際に相続税の2割加算の対象となりますし、孫には相続権だけでなく遺留分が生じるので、遺言で取得する財産を0にしたり、相続放棄をさせるわけにもいかないケースも多いでしょう。

後で遺産分割協議の際にどのような割合で相続するかで家族や兄弟姉妹の間で遺産を分割する際にトラブルになるなどデメリットもあります。

例えば、長男と長女がいる場合で長男側の孫を養子に入れることで、長男側の一家が多くお金や不動産などの相続財産を取得することになるため、長女が気分を害するというケースが考えられます。

また、未成年者である孫が多額の財産を受けることが理由となり財産の管理が問題となる可能性もあるでしょう。孫を養子に入れる際は、遺言書に、遺産相続の配分方法を考慮して記載しておくなど、配分に対する対応も必要となるでしょう。

養子を迎えることで、相続税に節税にはつながりますが、注意点もありますので、夫婦でよく話し合って判断するようにしましょう。

違いについて明確に理解する必要がある

いかがだったでしょうか。2種類ある民法上の養子縁組について相続時にはどのような違いが発生するのかについてご紹介しました。
特別養子縁組と普通養子縁組で異なる点について理解したうえで、本当に養子縁組をするのかを含めて検討してみてはいかがでしょうか。

養子に入れることで相続税の基礎控除を増やすことになりますが、配偶者ともよく相談して手続きを進めるようにしましょう。

相続税は死亡から原則10ヶ月以内と短い期間で申告と納付を完了する必要があり、事前の準備をしっかりと行っておくことが重要となります。相続発生後はどこに何があるかわからないというケースも多いので、事前の準備を行うことで、相続税を軽減するだけでなく手続き的な面でも負担も減らすことができます。また、トラブルを回避するために、法的に有効な遺言の作成などの対策も重要です。

相続税対策に力を入れたいと考えているのであれば、費用はかかりますが、専門家である税理士に一度アドバイスを受けてみるのもおすすめです。まずは、相続が発生するとどれくらいの相続税がかかりそうか計算をするとよいでしょう。場合によっては各種特例を活用することで、十分に対策ができる場合もあります。

専門家に相談することで、相続に関するお悩みや疑問点を解消することができますし、税務調査をされたときも落ち着いて対応ができるでしょう。税理士に相談する際は、相続税の実績が豊富な税理士に依頼することをおすすめします。事情を説明し、様々な対策について検討してみるとよいでしょう。

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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい