「相続に備えて遺贈について理解を深めたい」と考えていませんか。遺贈は難解で法律の知識も必要となるため、わかりやすく説明してほしいと考えている方は多いでしょう。遺贈は、遺言で相続人などに財産を無償で譲ることを指します。遺贈者(遺贈する人)は、誰にどのくらいの財産を相続させるか、誰にどの財産を相続させるかなどを指定できます。ただし、全てを思い通りに指定できるわけではありません。
この記事では、遺産相続を語るうえで欠かすことのできない遺贈の概要と種類などを解説するともに、遺贈の行い方や注意点などを紹介しています。以下の情報を参考にすれば、全体像を理解できるはずです。相続の準備を進めている方や相続でお困りの方は参考にしてください。
遺贈とは
遺贈は、遺言で相続人などに財産を移転することです。遺言は、存命中に自分の意志を示すことを指します。遺言の方法として遺言書が挙げられます。
遺贈の特徴
遺贈の特徴は、遺贈者が財産の分け方を指定できることです。通常の相続では、基本的に法定相続人が法定相続分を参考に財産の分け方を決定します。遺贈であれば、法定相続人以外に財産を移転することや特定の財産を特定の相続人などに移転することなどができます。例えば、自宅を法定相続人ではない兄弟姉妹に全部移転することなども可能です。
遺贈を受けるかどうかは受遺者が決めることができますので、相続放棄することも可能です。
遺贈の種類
遺贈をすることで、財産をどのように遺すか、方針を定めることができます。遺贈には、包括遺贈と特定遺贈があります。それぞれの概要は次のとおりです。
包括遺贈
包括遺贈は、移転する財産を指定せず遺贈する相手と割合だけ指定する方法です。
具体的には「△△の相続財産の2分の1を〇〇へ遺贈する」などが該当します。
割合だけ指定されるため、包括受遺者(遺贈を受ける人)は遺産分割協議に参加する必要があります。包括受遺者が相続人と同様の権利・義務を引き継ぐ点もポイントです。したがって、債務など負の財産がある場合はマイナスの財産も引き継ぎます(限定承認・放棄は可能)。
特定遺贈
特定遺贈は、包括遺贈とは異なり移転する財産を指定する方法です。
具体的には「□□の土地と建物を〇〇へ遺贈する」などが該当します。
何を遺贈するか財産が指定されるため、特定受遺者(遺贈を受ける人)が法定相続人でない場合、遺産分割協議に参加する必要はありません。また、負の財産を引き継ぐこともありません。ただし、放棄は可能です。放棄したい場合は、相続人など(遺贈義務者)にその意志を表示します。一定の期間内に家庭裁判所へ申し立てなければならないなどはありません。
遺贈にかかる税金・税率とは
課税価格の合計が遺産にかかる基礎控除を超える場合、遺贈も相続税を課されます。
遺贈における相続税のポイントは次のとおりです。
相続税計算の注意点
受遺者が法定相続人ではない場合、遺産にかかる基礎控除の計算(3,000万円+600万円×法定相続人の数)や相続税総額(課税遺産総額を各人の法定相続分で按分)の計算に受遺者は含めません。一方で、実際の按分割合に従い各人の納付額を算出する計算には受遺者も含めます。
配偶者・一親等の血族以外は2割加算
被相続人の配偶者・一親等の血族(父母・子と代襲相続人の孫)以外が遺贈などで財産を取得した場合、その人の税額の2割に相当する額が加算されます。
例えば、算出税額が100万円であれば、20万円が加算されて納付額は120万円になるのです。
遺贈したい場合はどうすればいいか
遺贈は遺言書で意思表示を行います。包括遺贈の場合は割合、特定遺贈の場合は財産を指定します。財産を移転する対象は法定相続人に限られません。遺言書は一定の要件に従い作成する必要があります。遺言書の種類と作成方法は次のとおりです。
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自筆証書遺言 |
公正証書遺言 |
秘密証書遺言 |
作成方法 |
遺言者が氏名・日付を含む全文を自筆して作成。 |
遺言者が口述した内容を公証人が筆記して作成。 |
遺言者が署名・押印・封をして公証人が日付などを記載して作成。 |
証人 |
不要 |
2名以上 |
2名以上 |
備考 |
法務局に保管申請可。 |
原本は公証役場に保管。 |
内容を伏せて存在だけ証明可。 |
遺贈の注意点
遺贈をする際は、以下の点の対応に注意しましょう。
財産目録を作成しておく
遺言書を作成する際は遺された親族がどのような財産があるか把握できるように財産目録を作成しておくとよいでしょう。財産目録が無ければ、親族は財産の調査から始める必要がありますので、時間と負担がかかってしまいます。
遺留分侵害
一定の相続人(配偶者・子・直系尊属)が受け取れる最低限の遺産を遺留分といいます。遺留分の割合は、遺留分権利者が直系尊属だけの場合は遺産の3分の1、これ以外の場合は遺産の2分の1です。遺留分権利者は、遺言で侵害された遺留分を取り戻す権利(遺留分請求権)を有しています。したがって、遺言書に「Aに全財産を遺贈する」などと記載すると、遺留分権利者がAに対し遺留分侵害額請求を行い、トラブルに発展する恐れがあります。遺贈を行うときは、遺留分侵害に注意が必要です。
また、生命保険は500万円まで非課税になる制度があり、多くの人が利用しています。生命保険は遺言とは別で相続人固有の財産となりますので、生命保険を全部受け取る相続人がいる場合、配分が不公平になる可能性があります。
生命保険の受取人の配分にも配慮して遺言書を作成するようにしましょう。
ルールに従い遺言書を作成
遺贈は、遺言書で行います。したがって、遺言書が無効だと遺贈も無効になる恐れがあります。遺言書は民法で定められており、ルールに従い、有効な遺言を作成することが重要です。遺言書は、遺言者の死後に開示されますので、その時点でルールに従って遺言が書かれていないことが分かっても、修正することができません。無用なトラブルを避けるためにも確実に有効な遺言書を作成するようにしましょう。
遺贈する相手が亡くなっている可能性がある場合は予備的な内容も書いておく
遺贈する相手と遺言者との年齢が近い場合、遺贈する相手が先に亡くなっている可能性もあります。例えば、大部分を遺贈する予定だった人が既に亡くなっている場合、かなり的外れな遺言になってしまいます。
先に亡くなっている可能性がある人は予備的な内容として、その人が亡くなっていた場合には、他の誰に遺すかを記載しておくことをおすすめします。
遺言執行者を決めておく
遺言書は作成した時に誰に手続きをしてもらうかを決めておいた方がよいでしょう。遺言通りに手続きを進める人のことを遺言執行者といい、遺言書で遺言執行者を選任することができます。執行者を定めることで執行者が単独で金融機関の手続きや不動産の登記がスムーズに行えるという大きなメリットがあります。相続人が全国に散らばっているようなケースでは、執行者を定めるほうがよいでしょう。
また、相続税がかかる場合も、スムーズに手続きを行えるように執行者を決めておくことをおすすめします。相続税の申告期限は10ヶ月と短く、相続発生後の期間は相続人も忙しいため、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
遺言執行者は相続人を指定することもできますが、遺言執行者は民法によって定められた強い権限がありますが、手続きを完了させる重い義務が課されるというデメリットがあります。相続人に遺言執行を行うことが難しい場合は、弁護士、税理士や司法書士、信託銀行など、家族以外の第三者や法人に依頼することもできます。
遺贈は税理士に相談
遺贈について解説しました。遺言書を活用して、特定の人に特定の財産を移転することや特定の人に移転する財産の割合を指定することなどができます。ただし、遺留分にも気をつける必要があり、相続人の範囲は人によって異なることもあり、遺言書の作成は簡単ではありません。また、遺贈をすることによって、財産の評価額に応じて相続税や不動産の場合は登録免許税もかかります。そのため、遺贈を検討したい方は、遺言書の書き方や受贈者が支払う税金について相続手続きについて実績のある税理士に相談するとよいでしょう。
報酬を支払う必要はありますが、税の専門家である税理士に依頼することで、特例なども適用し、結果的に負担を減らすことができる場合もあります。
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