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小規模宅地等の特例の概要・要件と減額される金額の求め方

2021年12月04日

「相続で小規模宅地等の特例を使える?」「どれくらいの減額を受けられる?」などの疑問を抱いていませんか。土地は一般的に家屋よりも評価額が高いことも多く、該当する場合、納税額に大きな影響を与える特例なので、気にしている方は多いでしょう。この特例を適用したい場合、一定の要件をクリアしなければいけません。また減額を受けられる割合はケースで異なります。

この記事では、上記の疑問を持つ方に向けて小規模宅地等の特例の概要と評価減を受けられる割合、評価減されたあとの課税の対象となる金額の求め方や注意点などを解説していきます。以下の内容を参考にすれば、適用できるかどうか、条件を満たした場合、どれくらいの評価減を受けられるかなどがわかるはずです。相続が発生した方は、ぜひチェックしておきましょう。

小規模宅地等の相続税の特例とは?

土地の評価は路線価×面積で算出します。小規模宅地の特例は、一定の要件を満たす宅地を相続で取得したときに、通常の評価額から一定割合の評価減を受けられる特例です。対象は以下の種類などに分かれます。

  • 特定居住用宅地:相続が始まる直前まで被相続人が居住していた宅地
  • 特定事業用宅地:相続が始まる直前まで被相続人などの事業に使用されていた宅地
  • 貸付事業用宅地:相続が始まる直前まで被相続人などの不動産貸付業などに使用されていた宅地

特例を適用する場合、次の要件を満たす必要がありますので詳細を解説していきます。

特定居住用宅地の要件

  • 被相続人の配偶者が取得:所有要件・居住要件ともなし
  • 被相続人と同居していた親族が取得:申告期限までその宅地を所有し居住している
  • 別居の親族が取得:相続開始前3年間に日本国内の自身が所有する家などに居住したことがなく申告期限までその宅地を所有しているなど

住居として使っている区分所有のマンションでも特例を利用することができます。ただし、法定相続人が相続すれば、適用できるわけではありませんので注意しましょう。過去の税法では有料老人ホームや特別養護老人ホームに入居しており、自宅に住み続けて、生活しているわけではない場合、特例の対象外でした。しかし、税制改正により、被相続人が老人ホームに入居していた場合でも、自宅を借家などの賃貸物件として貸しておらず、要介護や要支援の認定を受けて介護を受けている場合など、要介護認定などの入居の理由によって特例を利用できる可能性があります。適用の可否を迷う場合は税理士に問合せてみるとよいでしょう。

特定事業用宅地の要件

  • 被相続人の事業に使用されていた宅地を事業承継した親族が取得:申告期限までその宅地を所有して事業を続けている
  • 生計一親族の事業に使用されていた宅地をその親族が取得:申告期限までその宅地を所有して事業を続けている

貸付事業用宅地の要件は、特定事業用宅地と大きく変わりません。アパートやマンションなど建物を建てて、住宅として貸し付けている場合などの敷地が特例の対象となりますが、構築物が何もない青空駐車場は特例の対象とはなりません。判断に迷う場合は税理士に確認するようにしましょう。

特例により減額される割合について

条件を満せば、特例を用いることによって減額される割合は、宅地の種類で異なります。具体的な減額割合は、下記の通り定められています。

宅地の種類 限度面積 減額割合
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

特定居住用宅地等と特定事業用宅地等を同時に適用する場合、限度面積は最大730平方メートルになります。土地の面積が限度面積に満たない場合は、保有している部分について評価額が減額されます。上の表を見ていただくと、最大の減額割合が80%と効果の大きい特例であることがお分かりになるでしょう。特例の条件や減額割合については国税庁のホームページで確認することができます。

小規模宅地等の特例でどれだけ減額されるか

特例で評価額から減額される金額は、次の計算式で求められます。

【計算式】
評価減される金額=宅地の評価額×限度面積(総地積が上限)/総地積×減額割合

評価額が5,000万円、総地積が400㎡の特定居住用宅地等の場合、評価減される金額は以下の通りです。

5000万円×330㎡/400㎡×80%=3,300万円

したがって、特例適用後の評価額(課税価格)は1,700万円になります。尚、以上の金額は、相続税額の減少額ではありません。相続税額の減少額はケースで異なります。課税価格は、相続税額算出の一要素だからです。

住んでいる自宅が持ち家でない者、いわゆる「家なき子」が親から相続すると、条件を満たせるため、節税になる場合があります。2人以上相続人がいる場合、不動産を受ける人によって特例の利用可否が異なるということになります。非常に大きな特例ですので、相続税の総額も大きくかわってきます。

いくらくらい節税になるか特例の可否も明らかにしたうえで財産の分け方を決定するようにしましょう。遺産分割協議は必ず相続人全員で行う必要がありますが、生前に遺言書を作成し、配分を確定しておくことも有効です。

最大限特例を利用することで、基礎控除の範囲に収まるケースもあります。この場合も特例利用前の課税対象財産が基礎控除を超えている場合は、相続税の申告は必要となりますので、注意しましょう。

小規模宅地の特例を適用する場合の注意点

小規模宅地の特例を利用する場合の重要な注意点について解説します。

納税する金額が0円になる場合も申告が必要

小規模宅地の特例により、大幅に評価金額を減額することができるため、相続税の納税額が0円になることもあります。このようなケースでも相続税の申告は必要となりますので、忘れずに申告を行いましょう。

申告期限までに売却すると適用できない

親等からの相続をきっかけに不動産の売却を検討する方もいるでしょう。しかし、配偶者が特定居住用宅地等の特例を利用するケースを除き、申告期限までに売却をすると小規模宅地の特例の減額を受けることができません。配偶者のみ特別に認められていますが、基本的に特例を受けられなくなります。そのため、小規模宅地の特例を利用する場合は申告期限までは売却せずに保有するようにしましょう。

小規模宅地等の特例は税理士に相談

いかがでしたでしょうか?今回は、小規模宅地等の特例の基本的なポイントを解説しました。小規模宅地の特例は、減額される率も高く、課税対象の財産を大幅に減らすことができる制度です。同じ財産でも特例を活用することで相続人が払う税金を大きく減らすことができます。
適用可否の判断や評価減額の算出をする際の対応には、さらに専門的な知識をもっていなければなりません。また、戸籍謄本や登記簿など特例を利用できることを証明する資料も必要です。誤って過少申告をしていた場合、税務調査で指摘され、加算税を請求されるケースもあります。

適用を検討したい方や評価額から減少される金額を知りたい方、税務署に提出する申告書の書き方や添付する書類が分からない場合等は、税務の専門家である税理士に相談するとよいでしょう。税理士に依頼することで費用はかかりますが、自己で判断すると、使える特例を使うことができていなかったり、誤った申告により加算税を請求される可能性もあります。相続発生後は金融機関の手続きや不動産の登記など、様々な手続きを進める必要があり、忙しい中で時間はあっという間に過ぎてしまいます。

相続税の申告は相続発生の翌日から10ヶ月以内に完了する必要があります。自分が代表として手続きをする必要がある場合で、自分を申告手続きを行うことが難しい場合は税理士に依頼するようにしましょう。

税理士に依頼する場合はまず、預貯金、株式、不動産など相続財産をまとめ、一覧を用意し説明するようにしましょう。税理士にもそれぞれ、専門の分野がありますので、相続税や贈与税を専門にし、継続的に業務を行っている税理士事務所や税理士法人に依頼することをおすすめします。初回の相談はサービスで無料で行っている場合もありますので気軽に相談してみましょう。

また、相続対策は亡くなってからできることは多くありません、自分の保有する資産や家族の関係や状況に応じて亡くなる前に対策を行うことで、相続人にかかる負担を軽減することができます。ぜひ生前に検討し、相続人がスムーズに財産を承継しやすくなるような対策を行ってください。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい