相続が発生するとあらゆる財産に相続税がかかります。当然、自宅不動産も相続税の課税対象となりますが、マンションと戸建てでどのように違いがあるのでしょうか。当記事ではマンションと戸建ての相続税の違いについて解説します。
相続税はマンションでも必要になるのか?
結論から言えば、マンションであっても相続税が必要になるケースは十分にあります。
「マンションは評価が低いから相続税はかからない」「戸建てより税金が安い」といったイメージを持つ方は多いですが、これは必ずしも正しくありません。
相続税がかかるかどうかは、不動産の種類ではなく、相続財産の総額によって決まります。
マンションであっても評価額が高ければ、戸建てと同様に相続税の対象となります。
相続税がかかるかどうかの基本的な判断基準
相続税がかかるかどうかは、次の基準で判断されます。
この基礎控除額を超えるかどうかが、相続税が発生するかどうかの分かれ目です。
マンションか戸建てかは、この判断に直接は関係ありません。
「マンションだから非課税」という誤解が多い理由
マンションが「非課税だと思われがち」な理由として、次の点が挙げられます。
しかし、これらは感覚的な印象に過ぎません。
相続税では「どう感じるか」ではなく、評価ルールに基づく金額が使われます。
戸建てでもマンションでも判断基準は同じ
相続税の仕組み上、
で税金のかかり方が変わることはありません。
どちらも
土地の評価額 + 建物の評価額
を合算し、他の財産(預貯金・有価証券など)と合わせて判断します。
違いが出るのは「評価の計算方法」であり、「課税の有無」そのものではありません。
マンションと戸建てで相続税評価はどう違う?
マンションと戸建ての違いは、評価額の出し方の構造にあります。
特に差が出やすいのが「土地の評価」です。
相続税評価額は「土地」と「建物」に分けて考える
不動産の相続税評価額は、必ず次の2つに分けて計算されます。
マンションでも戸建てでも、この考え方は同じですが、マンションは2024年に設けられた新制度によって、時価と大きな乖離がないように、区分所有補正率を乗じて計算することになります。
特にタワーマンション等の場合は時価と相続税評価額に乖離が大きかったため、新設されて制度です。
マンションの土地評価の仕組み(敷地権割合)
マンションの場合、土地は区分所有者全員の共有です。
そのため、土地全体の評価額を各部屋の敷地権割合で按分して評価します。
敷地権割合は、
などによって決められており、
「駅近」「都心」「再開発エリア」などでは、一戸あたりの土地評価が高額になることも珍しくありません。
また、前述の通り、マンション一室の評価額を市場価格の60%に近似させる補正が行われますので、機械的に土地の価格を算出するだけでなく、階数や築年数によって複雑な計算が必要となる場合があります。
戸建ての土地評価との決定的な違い
戸建ての場合、土地は原則として単独所有です。
評価額は、
などを基に算定されます。
一方、マンションは
「土地を少ししか持っていない」ように見えても、
立地が良いほど評価額が集中しやすいという特徴があります。
建物評価はマンション・戸建てでどう違う?
建物の評価は、マンション・戸建てともに
が基本になります。
この点では大きな差はありませんが、
マンションの場合は築年数が浅く、設備が充実していると評価が下がりにくい傾向があります。
なぜマンションは「相続税が安い」と思われがちなのか
マンションは「節税になる」「相続税が安い」と言われることがありますが、実際に購入価格よりも相続税評価が低くなるケースがあります。その理由について解説します。
購入価格と相続税評価額はまったく別物
相続税評価額は、
ではなく、土地部分は路線価、建物部分は固定資産税評価額で評価を行います。
路線価は時価の8割程度、固定資産税評価額は建築費の5割から7割程度と言われています。そのため、現金をマンションに変えることで節税になるケースがあります。
都市部マンションで評価が高くなりやすいケース
評価額が高くなるのは、次のようなマンションです。
-
都心部・駅近
-
再開発エリア
-
人気学区
-
高層・高級マンション
これらは路線価が高くなりやすく、相続税評価も高くなります。
タワーマンション相続で注意すべきポイント
タワーマンションは、階層や眺望によって市場価値に差が出ます。
一方で、相続税評価ではその差が十分に反映されないケースもあり、
評価方法を巡って注意が必要です。
また、制度改正により市場価格の6割程度になる仕組みが導入されており、
「タワマンは相続税対策になる」という考え方は、現在では慎重に考える必要があります。
マンション相続で相続税がかかりやすいケース
マンション相続は「相続税がかからない」と思われがちですが、実際には課税対象になりやすい典型パターンがあります。
特に都市部のマンションや、他の財産と組み合わさった場合は注意が必要です。
基礎控除を超えてしまう典型パターン
相続税がかかるかどうかは、
相続財産の合計額が基礎控除を超えるかどうかで決まります。
マンション相続でよくあるのが、
といったケースです。
「不動産は1つだけだから大丈夫」と油断すると、基礎控除を超えてしまうことがあります。
他の財産(預貯金・有価証券)と合算した場合
相続税は、マンション単体で判断するものではありません。
などをすべて合算して計算します。
マンションの評価額が基礎控除ギリギリでも、
他の財産を合算すると一気に課税対象になるケースは非常に多いです。
配偶者がいる場合・いない場合の違い
相続税は、マンション単体で判断するものではありません。
などをすべて合算して計算します。
マンションの評価額が基礎控除ギリギリでも、
他の財産を合算すると一気に課税対象になるケースは非常に多いです。
戸建て相続と比較したマンション相続の注意点
マンション相続には、戸建てとは異なる特有の注意点があります。
税金だけでなく、相続後の扱いまで含めて考えることが重要です。
分けにくさと遺産分割トラブルのリスク
マンションは、基本的に物理的に分割できません。
そのため、
-
誰が住むのか
-
誰が所有するのか
-
他の相続人にどう代償するのか
といった点で、遺産分割トラブルになりやすい資産です。
評価額が高いほど、相続税と同時に分割の問題も深刻になります。
管理費・修繕積立金という見落としがちな負担
マンション相続では、税金とは別に、
という継続的な負担が発生します。
空室でも支払い義務は続くため、
「とりあえず相続したが放置している」状態はリスクが高くなります。
売却・居住・賃貸の判断が相続税に与える影響
マンションを相続した後の選択肢は、
のいずれかになります。
どの選択をするかによって、
-
相続税の軽減措置が使えるか
-
将来の税負担
-
キャッシュフロー
が大きく変わります。
相続税だけを見て判断すると、後悔するケースも少なくありません。
相続税を軽減できる可能性のある制度・特例
マンション相続でも、条件を満たせば
相続税を軽減できる制度や特例を使える可能性があります。
ただし、「使えると思い込む」ことが一番危険です。
自宅マンションで使える小規模宅地等の特例
被相続人が住んでいた自宅マンションであれば、
小規模宅地等の特例が適用できる可能性があります。
適用されれば、
土地部分の評価額を最大80%減額できるため、
相続税への影響は非常に大きくなります。
ただし、
居住要件・取得者の要件など細かい条件があるため注意が必要です。
配偶者控除が使える場合の考え方
配偶者がマンションを相続する場合、
相続税がかからない配偶者控除が使えることがあります。
ただし、
一次相続で控除を使い切ると、二次相続で税負担が増えることもあります。
短期的な節税だけでなく、将来も見据えた判断が重要です。
特例を使っても申告が必要になるケース
注意したいのは、
「相続税がゼロでも、申告が必要な場合がある」
という点です。
これらは、申告をして初めて適用される制度です。
「税金がかからないから申告しなくていい」という判断は危険です。
マンションを相続したときに最初にやるべきこと
マンション相続で失敗しないためには、
感覚ではなく、事実を整理することが最優先です。
相続財産の一覧を作成する
まずは、
-
マンション
-
預貯金
-
有価証券
-
保険
-
借入金や未払金
を含めた相続財産の一覧を作成します。
「マンションしかない」という思い込みを、ここで一度リセットします。
マンションの相続税評価額を把握する方法
マンションの評価額は、
などを使って算出します。
インターネットで調べることも可能ですが、
評価を誤ると相続税の判断自体がズレてしまうため注意が必要です。
判断に迷ったら専門家に相談すべき理由
マンション相続は、
が複雑に絡み合います。
「相続税がかかるかどうか」だけでなく、
どう相続するのが最も現実的かまで含めて判断するためには、
専門家への相談が結果的に安心につながることも少なくありません。
マンション相続における手続きと実務上の注意点
マンション相続では、相続税の有無だけでなく、各種手続き・期限・書類対応まで含めて整理しておくことが重要です。
税額が発生しない場合でも、遺産相続として必要な対応を行う場面は多くあります。
相続が発生した際には、原則として以下の流れで手続きを行います。
-
遺言書の有無の確認
-
相続人の確定(戸籍等による調査)
-
遺産の内容を一覧化
-
遺産分割協議または遺言書に基づく取得内容の確定
-
名義変更(登記)や納税手続き
マンションという物件を含む遺産相続では、不動産と税の手続きが並行して進む点が特徴です。
マンション相続で確認すべき遺産の内容
遺産には、マンションそのものだけでなく、次のような財産が含まれます。
-
マンション(敷地・建物・持分)
-
現金・預貯金
-
株式などの有価証券
-
生命保険金
-
事業用資産や収入を生む物件
これらを含む遺産全体を把握しなければ、正確な税額や対応方針は定まりません。
マンション相続に必要な登記と名義変更
マンションを相続した場合、所有権の名義変更登記が必要です。
登記を行わないまま放置すると、後の売却や活用ができなくなります。
登記の際には、
-
遺言書(ある場合)
-
遺産分割協議書
-
相続人全員の証明書類
-
固定資産税評価証明書
などの書類を提出します。
手続きは司法書士に依頼するケースが多く、相続内容が複雑な場合は弁護士と連携することもあります。
遺産分割協議が必要になるケース
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
マンションは分割が難しい物件であるため、
といった点で協議が長引くことも多く見られます。
協議がまとまらなければ、登記や納税の手続きを進めることができません。
相続税の申告・納付と期限
相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内が期限です。
この期限を過ぎると、延滞税などの対象となる可能性があります。
相続税は、原則として現金での一括納付となりますが、一定の要件を満たせば分割方式(延納)などを検討することも可能です。
相続税評価と固定資産税評価の違い
マンション相続では、
が混同されやすい点に注意が必要です。
固定資産税評価は毎年通知されますが、相続税評価では敷地の路線価や倍率方式などを用いて計算します。
評価方法は国税庁が定めた方式に基づいて行われます。
相続税がかからない場合でも必要な対応
基礎控除以内で相続税が不要な場合でも、
といった手続きは不要になりません。
また、小規模宅地等の特例や配偶者控除を利用して税額がゼロになる場合でも、申告そのものは必要です。
マンション相続と生前贈与との関係
マンションは、生前に贈与を行うことで相続税対策を検討するケースもあります。
ただし、贈与には贈与税がかかる場合があり、一定期間以内の贈与は相続税に含まれる点にも注意が必要です。
相続と贈与のどちらを選ぶかは、税率・時期・物件の評価を総合的に検討する必要があります。
相続後のマンション活用と税務上の考え方
マンション相続後は、
-
居住用住宅として使う
-
賃貸物件として活用する
-
売却して現金化する
といった選択肢があります。
活用方法によって、収入の有無や将来の税への影響が変わるため、相続税だけでなく中長期的な視点が重要です。
判断に迷った場合の専門家サポートの活用
マンション相続では、
-
税務(相続税・納税)
-
法律(遺産分割・遺言)
-
不動産(物件評価・活用)
が密接に関係します。
税理士、司法書士、弁護士などの専門家によるサポートを活用することで、
手続きの漏れや判断ミスを防ぎやすくなります。
まとめ
-
マンションでも相続税は必要になる
-
戸建てとの違いは「土地評価の仕組み」
-
「思い込み」で判断せず、早めの確認が重要
広島相続税相談テラスでは初回の相談無料であらゆるご相談に対応しております。経験豊富な税理士が多数在籍しておりますので、安心してご相談ください。