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遺留分を払わないとどうなる?

2024年07月22日

相続が発生すると被相続人の財産を配分する必要があります。遺言書が作成されている場合は、原則遺言書の通りに財産を承継することになりますが、遺留分を侵害されている場合は、遺留分侵害額請求をすることで、遺産を遺言書とは異なる配分で分けることになる可能性もあります。

当記事では遺留分の概要や遺留分進学額請求をされた場合の対処法について解説します。

遺留分とは

遺留分とは民法で定められた制度で配偶者、子どもや代襲相続した孫などの直系卑属、両親などの直系尊属に認められている権利、最低限財産を相続することができる権利で、被相続人との関係により一定の割合で定められています。遺留分は相続人が直系尊属のみの場合、法定相続分の1/3、それ以外の場合は法定相続分の1/2となります。

例えば、相続人が配偶者と子供二人のケースで、全ての財産を配偶者に遺すという内容にしていたとしても、子供には1/8の遺留分がありますので、遺留分を請求すれば財産を取得することができます。

遺留分を侵害している場合、遺留分を侵害された者は遺留分侵害額請求を行い、財産を請求することになります。遺留分侵害額請求では不動産などすべての財産の評価を行い、遺留分相当額を計算したうえで、金銭で支払われることになります。

不動産などの割合が多い場合や東京・大阪など都心でアクセスの良い場所に自宅がある場合、土地の評価も高いため、売却しないと分けれないケースも多くあります。不動産の状況によっては売却して支払うことができるようになるまで、対応に時間がかかるケースも多くあります。もちろん、遺留分は必ず請求しないといけないわけではありませんので、遺留分侵害額請求がされなかった場合、金銭で遺留分相当額を支払う必要はなく、遺言書で指定された通りに配偶者が受け取っても問題ありません。

なお、兄弟姉妹や代襲相続が発生して相続人となった甥・姪には遺留分はありませんので、兄弟姉妹や甥姪のみが相続人の場合は第三者にすべて遺贈する内容となっていても遺留分を請求されることはありません。

遺留分侵害額請求に対応しなかった場合の流れ

遺留分侵害額請求をされたにも関わらず、納得いかず請求を拒否し、対応しなかった場合、多くのケースで家庭裁判所での調停に進みます。裁判所での調停は調停委員立ち合いのもと、当事者同士で話し合いによる解決を目指します。そのため、調停には強制力はありませんので、当事者が出席の要請を無視して欠席した場合や合意ができなかった場合、調停不整理となります。

調停で解決できなかった場合、相手方から訴訟を起こされる可能性が高くなります。訴訟では双方の主張をもとに裁判官が判断し、判決を下すことになり、最終的な決定となります。

訴訟により、下された判決にも応じなかった場合、支払義務に応じて財産を差し押さえられる可能性があります。最終的に銀行に預貯金を預けている口座の差し押さえや不動産の競売など強制執行が可能となりますので、法的な手段により強制的に遺留分を支払うことになります。

遺留分を請求されても断ることができるケース

遺留分を請求された場合、原則支払いに応じる必要がありますが、遺留分を請求されても断ることができる可能性がある事例もあります。適切に対処することが重要となりますので、具体的に確認していきましょう。

多額の生前贈与を受けているケース

相続発生時の配分で、受け取る金額少なく、遺留分を侵害しているケースでも、現金で多額の贈与がされており、特別受益を得ている場合は訴訟を提起しても遺留分が認められない例もあります。

生前贈与の金額が理由となり遺産分割協議でトラブルになることは多いです。相続開始後に問題とならないように事前に、事情を他の相続人に説明したり、遺言を作成したりするなどしっかりと準備をしておく方が良いでしょう。

寄与分が認められるケース

寄与分とは亡くなった人の財産の形成に寄与した人に認められる権利です。寄与分は財産の増加や維持に貢献した人に限りますので、常識的な範囲で父母を介護をしている場合などは認められることはありません。

寄与分が有効となるケースは非常に限られており、算定も難しいため、寄与分を主張する場合は弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。

相続廃除・欠格となっているケース

相続廃除とは過去に被相続人である親への暴力・虐待、被相続人が借金・債務の肩代わりをして返済をした場合等に被相続人が生前に家庭裁判所に相続廃除の申し立てを行い、相続人を遺産相続から廃除する制度です。被相続人が相続廃除を生前に行っていた場合、相続権だけでなく遺留分も失います。ただし、相続廃除は被相続人しか行うことができませんので、相続廃除となるような行為があったとしても相続発生後に他の相続人が行うことはできません。

一方の相続欠格は被相続人を殺害した場合や遺言書を強制的に書かせた場合、遺言の偽造、隠蔽を行った場合に欠格となります。相続欠格は被相続人が申し立てを行わなくても、行為があるだけで自動的に欠格となりますので証拠をそろえる必要がありますが、法律上の手続きをする必要はありません。

遺留分を事前に放棄しているケース

遺留分は被相続人の死亡前に相続人本人が、家庭裁判所で申請して放棄をすることが可能です。遺留分の放棄がされていた場合は、遺産分割の際に遺留分の申請をすることはできません。

時効が過ぎているケース

遺留分には時効があり、遺留分侵害額が可能であることを知った時から1年もしくは被相続人が死亡してから10年が経過すると時効により遺留分の請求権が消滅します。

時効を過ぎた後に遺留分を相手に請求しても金銭で支払ってもらうことはできません。

疑問がある場合は専門家に相談を

相続に関する法律や制度について正しく理解しておく必要がありますが、相続に関する法律は複雑で、当事者となり対応することは簡単ではありません。相手方が弁護士に依頼し、交渉に来ている場合、自分で対応していると知識の差があり難しい面もあるでしょう。弁護士と交渉をする場合は、自身も弁護士に依頼し、対応することをおすすめします。知り合いに弁護士を紹介してもらうことが難しい場合は、ホームページなどで相続関連の案件を数多く取り扱っている法律事務所を探してみることをおすすめします。弁護士に依頼することで、費用はかかりますが、相続財産を配分する手続きをスムーズに進めることができるでしょう。まずは電話やメールなどで気軽に問い合わせて、実際に依頼するか検討してみるとよいでしょう。

また、預金や株式、土地、建物などの資産を調査して、評価額の合計が基礎控除を超える財産を保有している場合、相続税の支払いも必要となります。相続税は不動産の登記や銀行の名義変更、戸籍などの必要書類の準備で忙しい中で10ヶ月以内という短い期限内に申告と納付を完了させる必要があります。

10ヶ月以上経過すると加算税を請求される可能性がありますので、早めに対応する必要があります。相続税について、お悩みがある場合は、業務としての実績があり相続税や贈与税に強い税理士のアドバイスを受けて正確に申告できるようにしましょう。税理士に依頼することで、家族の負担を減らすことができますし、特例等をうまく活用することで、納税も有利となるケースもあり、メリットもあります。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい