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農地や山林を相続した場合の対応方法

2025年09月15日

相続が発生すると、遺された家族はあらゆる財産を引き継ぐことになります。所有する相続財産の中にはプラスの財産だけでなく引き継ぐことで負担となる借金や債務などのマイナスの資産。管理の手間がかかるなどデメリットの方が大きい不動産の所有権が含まれていることもあります。

特に注意が必要なのは引き継いだ財産の中に農地や山林が含まれているケースです。農地や山林は制度上の問題や需要の問題で簡単に売却することができず、財産を受けることで毎年の固定資産税などが相続人にとって負担となるケースが多くあります。

当記事では農地や山林を相続した際の対処法や注意点について解説します。

相続放棄は可能?

農地や山林を引き継ぎたくない場合は相続権を放棄をすることが可能です。相続放棄は相続開始後3ヶ月の間に家庭裁判所に申立てすることで、手続きを行うことができます。

放棄をすることで、相続人として一切の権利と義務を失いますので、借金を返済する必要もなくなり、農地や山林も引き継ぐことはありません。

全ての相続人が相続放棄の申述を行い、相続人が誰もいなくなった場合、家庭裁判所により相続財産管理人が選任され、被相続人の財産は国庫に帰属することとなります。

自分が相続放棄をすることで、後順位の人が相続人となるケースがあります。相続放棄には申請までの期限が決められていますので、トラブルを避けるためにも後順位の人にも十分に時間をとって検討してもらう必要があります。相続放棄をする予定の場合は早めに他の相続人や後順位の相続人に連絡する必要があります。

相続人として戸籍謄本や現住所が記載されている戸籍の附票を取得することができますので早めに相続放棄をすることを伝えておくようにしましょう。

農地や山林を相続する際の注意点

農地や山林を遺産相続する際の注意点はどのようなものがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

維持・管理の負担が大きい

農地や山林を法定相続人として相続した場合、固定資産税などの金銭的な負担だけでなく、雑草の草刈りなどの労力がかかるケースが多くあります。所有者が田・畑を放置して周辺に害虫などが発生するなど、所有者が適切に対応せず、第三者に迷惑をかけた場合は損害賠償の請求がされるケースもあります。土地は面積が広いとそれだけ、アパート経営などいろいろな目的で使用することができますが、管理も大変です。

所在地と現住所が離れている場合は、行き来するだけでも負担が生じるケースも多いでしょう。そのため、頻繁に草刈りなどで帰ることはできないケースが多いと思いますが、遺産相続で取得した資産は管理責任がありますので、最低限の維持・管理は行っておく必要があります。

不動産の登記が必要

昔は不動産の登記は義務ではありませんでしたが、相続が発生した後に持ち主不明となる不動産が多くあることが、社会問題となり、相続発生により、権利を移転することを法務局で登記することが義務化されています。

相続により不動産を取得した者は自身で不動産の登記を行う義務があり、怠った場合は過料が課されます。

売却できないケースが多い

農地は農地法があり、駐車場などで利用している通常の宅地よりも規制が多く、農業委員会への届出などを行わないと売却して手放すことができません。また、農地として売却する際に農業を継続できる農家に売却する必要があるケースもあります。

農地の取り扱いについては地域によって異なりますので、農地がある地域の市町村の役場や農業委員会で確認するようにしましょう。

その後に取り扱いによって配分も変えた方がいい可能性もあります。相続が発生した際は遺産分割を完了する前に相続した土地をどのように扱うか慎重に検討し、決めておくようにしましょう。相続で争いになると、有効活用はできなくなるため、民法で定められた法定相続人で協力して手続きを進めることが重要です。

農地転用を行い、アパートを建築するなど別の用途で利用しても需要が見込めるようなアクセスのいい物件であれば、処分ができる可能性も高いですが、農業委員会への届け出や許可が必要です。

田舎にある土地であれば、建物を建てるなどの有効な手段もなく、農地転用の届け出が受理されても買い手もつかず、転用も売却も難しいケースが多いでしょう。

農地として継続する場合は納税猶予ができる場合がある

最終的に収益用の不動産を活用する場合は立地も重要となります。

三大都市圏などに多い生産緑地として指定されている農地を遺産相続し、農家として農業を継続する選択した場合、納税猶予を利用できる場合があります。

納税猶予とは田・畑を保存するために認められている税金の優遇措置で相続人が農業を継続することで、納税を猶予されます。引き継いだ相続人が亡くなって、次の相続が発生するまで、農業を継続した場合は、免除されますが、土地の価値が上がったことなどを理由に売却して手放したケースや、農地転用をした場合、猶予を受けていた税金を納付する必要があります。

事前の対策は遺言書が有効

農地や山林を保有している場合、遺言書を作成するなど事前にしっかりと準備をすることをおすすめします。遺言書がないと相続人全員で話し合いをすることになり、時間がかかります。死亡後に相続人同士で話し合いを行うとトラブルになるリスクもあります。

農地や山林の手続きは時間がかかることが多いので、事前に検討し、遺言を作成しておく方が良いでしょう。

遺言は相続開始の直前に書けばいいと考える方も多いと思いますが、自己の判断で作成するためには心身ともに健康である必要があります。高齢になり認知症になってしまうと遺言書の作成を検討することができなくなってしまいますので、対策を早めに打っておくことをおすすめします。遺言を作成するための検討を早めにしておくkとおで、生前贈与や保有不動産の売買など別の対策も時間をかけて検討することができます。

遺言書を作成することで、配分を自由に決めることができますので、山林などを相続人以外の人に遺贈することも可能です。ただし、遺留分を侵害すると、遺留分について請求された場合、生前に作成した遺言通りに財産を配分できず、遺産分割の協議を行う必要が生じる可能性がありますので、気を付けましょう。また、書いてある内容が明らかであり内容が把握できる場合でも、形式的な要件を満たしておらず、無効となるケースもあります。

また、遺言を作成する際は預貯金や株式、不動産などの財産をまとめた一覧を作成することをおすすめします。一覧を作成することで、遺留分についても確認することができますし、どれくらいの税金がかかるかも把握することができます。

遺言書は何度でも変更することが可能ですので、現在の状況で作成しておくことをおすすめします。

相続手続き等に関するお悩みがある場合は専門家に相談を

相続について、一般的な検討事項について学ぶことはできますが、実際は相続に関する手続きは複雑で事例によって問題もさまざまですので、相続手続きに慣れておらず、知識が無い人が解決することは難しいでしょう。

相続手続きについてお悩みの場合は弁護士、司法書士、税理士などに相談し、どのように対処すればいいか判断するためのサポートを依頼するとよいでしょう。専門家に相談することで費用はかかりますが、専門的な知識や経験を活かしたアドバイスをしてくれます。

被相続人の財産が基礎控除以下の場合は、相続税の申告のための書類の作成は不要ですが、基礎控除を超えている場合は原則相続開始後10ヶ月以内に税務署への申告書の提出と納税が必要です。相続が発生した後で忙しい状況の中で短い期間内に手続きを進める必要があり、手続を怠った場合は税務署から調査され、加算税を請求される可能性もあります。

広島相続税相談テラスでは、経験豊富な税理士が多数在籍しており、税金の計算や相続手続きなどあらゆる面で皆様のお悩みを解決することができます。相続に詳しい専門家に依頼することで、特例等をうまく活用し、税金の負担を減らすことができるケースも多くあります。

初回の相談は無料で対応しておりますので、お電話やメールなどでお気軽にご連絡ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい