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相続時精算課税制度のメリットとしておさえておくべきポイント

2021年11月01日

相続時精算課税制度とは、2,500万円までの価格を限度に贈与を受ける者に対し贈与税が課税されることなく贈与できる生前贈与の方法です。

この制度を適用することで、どのようなメリットがあるのか確認しておきましょう。制度の内容についてよく理解したうえで、自分にとって向いているかどうかを考える必要が出てきます。

そこで「詳細なメリットを知ったうえで相続時精算課税制度を利用するか検討したい」と考えている方のため、メリットをご紹介します。自分にとってメリットと感じる部分が大きければ相続時精算課税制度がどのような人にとってメリットがあるのかがわかり、制度を利用するかどうか選択しやすくなるでしょう。

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度について簡単におさらいしておきましょう。

相続時精算課税制度とは60歳以上の祖父母から18歳以上(成人年齢引き下げにより、20歳以上から18歳以上に変更)の子や孫に対し、相続時精算課税制度を利用することで、最大2,500万円以内の生前贈与で条件にあえば、贈与税の対象ではなく、相続税の対象とするものです。2,500万円を超過する場合は一律20%の税率で課税されます。

配偶者に贈与をする場合はこの制度を利用することはできませんが、配偶者が相続する場合は特別控除を使うことで相続時に1億6,000万円または法定相続割合までは納税する税額が0円となる、大きな控除があり、多くの場合相続税がかかりません。

相続時精算課税制度を利用した場合は、翌年以降の贈与も相続時精算課税制度の対象となり、累計で2,500万円を超える贈与は一律20%の税率で課税され、暦年贈与制度に戻ることはできませんのでどちらを選択するか選ぶ必要があります。

税制改正により、相続時精算課税制度にも基礎控除が設けられ1月1日から12月31日までの間で1年ごとに110万円までの非課税枠を使うことができます。相続時精算課税制度を選択した場合、暦年贈与のように7年の繰り戻しはありません。繰り戻しは改正前は3年でしたが、税制改正により7年に延長されています。

改正により確実に一定の節税が見込めるようになったため以前より使える制度となっていますので、利用する人は増えるでしょう。一度相続時精算課税制度を選択すると暦年贈与に戻ることはできません。一方で、こどもが一人いる場合で長男は相続時精算課税制度を使い、次男は暦年贈与を使うなど、それぞれ別の制度を使うことは可能です。

相続時精算課税制度を利用する場合は戸籍などの資料を添付して税務署に申告書を提出する必要があります。年間110万円の範囲で暦年贈与を行う場合は、手続きは不要ですが、相続時精算課税制度を利用する場合は翌年の2月1日から3月15日までに必ず届出が必要です。

相続時精算課税制度は暦年贈与とは違い、書類を提出して届出を行わないと制度を使うことができませんので注意しましょう。

なお、相続時精算課税制度を使った場合も財産が基礎控除の範囲内(3,000万円+法定相続人×600万円)であれば相続税を払う必要はありません。

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度を利用するにあたり、考えられる主なメリットを解説します。

①税金の支払いを先へ延ばせる

通常の贈与を行った場合、贈与時に贈与税を支払わなければなりません。しかし、相続時精算課税制度の場合は2,500万円まで非課税となり、贈与税の課税対象外です。そのため、贈与した時点での税額は0円です。

その後、相続が発生した際には相続時精算課税制度で贈与された分も遺産に含めて相続財産として相続税が課税(精算)されます。つまり、相続発生時まで税金の支払いを先延ばしにできる方法だといえるでしょう。

相続時精算課税制度を利用して、贈与した財産と相続発生時の財産の合計が基礎控除の範囲内であれば、相続税はかかりません。

②節税につながる場合がある

本制度の利用方法によっては、税務的なメリットを得ることができ節税に繋がる可能性もあります。節税に繋がるかどうか考えるうえで重要になるのが、将来的に価値が上がるものの贈与か否かです。

相続時精算課税制度で財産を取得し、その後に相続が発生した場合には、贈与により取得した財産を遺産に加算し相続税の計算をすることになります。贈与する資産は現金などに制限されていません。

この際に遺産に加算する金額は相続開始時ではなく贈与があった時の金額となります。そのため、贈与時はそれほど価値が高くない場合や、一時的に安くなっている場合などでタイミング的に今は低い価格でも将来的に時価の値上がりが期待できる財産の場合には、贈与から相続までの値上がり分を加味しなくていいので、将来の相続税を抑えることが可能となります。逆に将来値下がりする可能性が高い資産を贈与することは避けた方がよいでしょう。

それから、例えば父親が経営しているアパート等の賃貸物件など収益性の高い財産を早い段階で本制度を利用して贈与したとしましょう。この場合、受贈した財産に加えて将来的に発生する家賃収入なども承継されるため、父親の家賃収入による金融資産の増加を抑えることができるます。土地や建物や株式などを贈与した場合、現在の課税価格そのもの以上に相続税の節税に繋がる可能性があります。価値の高い不動産を所有している例では、納税資金が不足し、物納や延納をせざるを得ないようなケースでも早めに贈与をすることで貯めたお金で期限内に納付できるケースもあります。

将来評価額があがりそうな財産や収益を生む財産など、早く渡しておきたい財産がある場合は、遺贈するよりも生前贈与が有利といえるでしょう。また、父母から子へ移転するよりも祖父母から孫に移転することで、一世代飛ばすことができるため、登録免許税などの諸経費も減らすことができ、節税効果はさらに大きくなります。ただし、相続の際にはかからない不動産取得税が贈与の場合はかかるので、注意が必要です。

一方で小規模宅地の特例を使える土地を相続時精算課税制度を使って贈与をした場合、特例を使うことができなくなります。節税対策として利用する場合はどの資産を生前贈与するか、よく検討して決めるようにしましょう。東京や大阪など土地の価値が高い場所に自宅があり条件を満たす場合、小規模宅地の特利を利用する効果が大きいため、相続時精算課税制度を利用して、土地を贈与することでかえって多く税金がかかることもあります。

③多額の贈与を一括でできる

相続時精算課税制度と比較されることが多い暦年贈与に比べ、多額の贈与を一括で行えます。暦年贈与でも非課税枠が用意されていますが、年間110万円以下であるため、なかなかまとまった金額を贈与できません。相続時精算課税制度は額の大きい財産を一度で移転できるという点が魅力です。

相続時精算課税制度であれば2,500万円まで非課税枠が用意されているので、多額の贈与にも活用できるでしょう。また、一括に贈与しなくても贈与の累計金額が2,500万円まで認められる形となります。なお、贈与を受けた金額が2,500万円を超えた分については一律20%で課税されます。

④相続時の争いを回避しやすい

相続時に、遺産分割による相続争いを防止したいと考えた際にも相続時精算課税制度が役立ちます。相続争いで特に揉めやすいのが、現金と違って分割が難しい不動産です。相続があると、相続放棄をした人以外の相続人全員で合意する必要があるため、それぞれが希望を言うとまとまらないことが多いです。

しかし、生前贈与で住宅などの不動産を贈与しておけば、亡くなったあとの不動産関連の相続争いや親族間のトラブルを防ぐ効果が期待できます。特に事業用と使用している土地などの資産があり、特定の人に引き継ぐ理由がある場合は、後を引き継ぐことが決まっている家族に遺す方がよいでしょう。

相続人間の関係等も考慮して資産の移転を検討してみてもよいでしょう。ただし、一部の人に贈与をしている場合、相続時に多めに相続することを要望される可能性があります。

他の相続人には資金を多く渡すなどバランスを考えないと親族間の争いになる可能性がありますので注意が必要です。遺言を作成し、相続発生時の分け方も明確にしておけば安心です。

活用方法によってはメリットが大きい

いかがでしたでしょうか?今回は、相続時精算課税制度を利用するにあたり、理解しておきたいメリットについてご紹介しました。うまく活用できれば節税効果が得られるなど、メリットも期待できる生前贈与の方法です。

ただし、ただ単に相続時精算課税制度を利用するだけで節税につながるのではないので注意しましょう。

また、メリットが大きいと思って利用したものの、自分にとってはデメリットが大きく出てしまったケースもあります。特に暦年課税には戻れない点は注意が必要です。国税庁のサイトで、税金の計算方法や特例の要件などは記載されていますが、誤った解釈で手続きを進めると結果的に申告漏れとなり税務調査で指摘される可能性があります。

実際にどれくらいメリットが出るかは、預金や株式、不動産など財産の評価額をまとめて一覧の表にし、総額を確認してシミュレーションをしてみないと判断ができません。相続時精算課税制度による贈与を検討する際には、税の専門的な知識を持ち、相続に強い税理士や弁護士などの専門家にアドバイスを受けることをおすすめします。

また、親等の相続が発生した時も原則、被相続人の死亡の翌日から10ヶ月と短い期限内に申告手続きを完了させる必要があります。相続税の計算するための仕組みや式も複雑ですので、期間内に自分で申告することが難しい状況の場合は業務として普段から相続や贈与関連の手続きに従事している税理士など専門家に支援を依頼した方がよいでしょう。

正式に依頼する場合は費用がかかりますが初回の相談はサービスで無料で応じてくれる税理士事務所や税理士法人も多いので、不安がある場合は具体的に何を相談したいかを決めて電話やメールで問合せみてもよいでしょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい