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相続時精算課税選択届出書の各項目ごとの書き方

2021年10月31日

贈与税の改正があり、相続時精算課税制度も110万円の基礎控除が新設されるなど、制度が改善されたため、今後相続税対策で利用する人も増えるでしょう。

相続時精算課税制度を活用したいと考えている方に向けて、相続時精算課税選択届出書の書き方について解説する記事です。

贈与税が免除されるこの制度を利用すれば、非課税となる為、高額な贈与を行うこともできます。

しかし、本制度を利用する際に壁となるのは、書類の作成方法ではないでしょうか。
書類のどこにどのようなことを書くべきなのか、間違えると本制度を利用できなくなることもあるので慎重に記載したいものです。

そこで今回の記事では、相続時精算課税選択届出書の書き方について項目ごとに以下に解説していきます。
当記事を読んでいただければ、書類の作成のための参考にしていただけるはずです。

相続時精算課税制度とは

まず、相続時精算課税制度の仕組みについて解説します。

相続時精算課税制度とは祖父母や父母から子や孫に贈与をする際の方法の一つです。相続時精算課税制度を利用すると2,500万円までの贈与について、贈与税ではなく、相続発生時に相続財産に加算して相続税の対象として計算を行います。2,500万円を超える部分については一律20%で課税されます。

税金の計算自体は後で計算を行いますが、課税価格の評価は贈与時の時価で行うため、将来値上がりが期待できる株式や収益を生む土地や建物など不動産を贈与することで、次の世代に有利に財産を移転することができます。

また、2024年の改正で110万円の基礎控除の枠が新設されたため、少しずつ資金を下の世代に移したいと考えている人の相続税対策としても利用しやすくなりました。相続時精算課税制度と暦年贈与制度は選択制となっており、どちらか一方を選ぶ制度となっています。

相続時精算課税制度を選択する場合は贈与を行った翌年の2月1日から3月15日までの確定申告の時期に税務署に相続時精算課税選択届出書を提出する必要があります。

相続時精算課税選択届出書の書き方

それではさっそく、相続時精算課税選択届出書の書き方について、ポイントごとに分けながら解説していきます。

①贈与を受けた人(受贈者)の情報

まずは右上の大きな欄に記入する贈与を受けた人の情報から解説します。

贈与を受けた人の情報では、贈与を受ける人の現住所と電話番号、氏名、ふりがな、生年月日、贈与をした人との続柄について記入しましょう。
特に難しいことはなく、一般的な書類に記入するように贈与で財産を受けた人の情報を記入してください。

②特定贈与者に関する事項

中央付近にある枠には、贈与をした人の情報を記載します。

贈与を受けた人の情報と同じように、贈与をした人の現住所と住所、ふりがな、生年月日を記入するだけで大丈夫です。
ただし、贈与を受けた人が養子縁組などにより年度の途中で親族になった場合は、「年の途中で特定贈与者の推定相続人又は孫となった場合」も記入してください。推定相続人が孫になった理由や年月日を記入します。贈与をした人の情報に加え、必要であれば推定相続人となった年月日や理由を記入しましょう。

③その他の事項

受贈者・贈与者の情報以外を記入する欄もあるので、必要であれば記入を忘れないようにしましょう。

贈与を受けた人情報を各欄の左にある欄には、提出年月日と提出する税務署名を記入してください。なお、提出する税務署名は、贈与を受けた人の住所を管轄する税務署となります。

また、一文目の空欄には贈与を受けた年を記入します。
「年の途中で特定贈与者の推定相続人又は孫となった場合」欄の下には、添付書類の確認欄があるので、戸籍謄本や住民票または戸籍の附票などの添付書類を準備したら四角にチェックマークを入れましょう。

基本的な必要事項の記入を確認したら、その他の事項も記入されているか確認し、贈与税の申告書と添付書類と一緒に提出してください。

相続時精算課税制度を選択する際の注意点

相続時精算課税制度を利用する際はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。注意点やデメリットについて具体的に確認しておきましょう。

相続税の節税にはならない場合がある

中には財産が基礎控除を下回る場合や、生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人)、小規模宅地の特例や配偶者控除などを適用することで、相続税がかからないケースもあります。このような場合は相続時精算課税制度を利用しても節税メリットはありません。

そのため、まずは財産を表にして相続税の税額のシミュレーションをしてから制度を利用するか検討するようにしましょう。

暦年贈与には戻れない

相続時精算課税制度と暦年贈与は併用することができません。

相続時精算課税制度を利用して贈与を行って以降は、暦年贈与に戻すことはできません。財産が多い場合は、暦年贈与で1月1日から12月31日の間の1年間で110万円を超える贈与を行い、多少の贈与税を支払った方が税率が低く有利なケースもあります。

国税庁のホームページにアクセスすれば、相続税の計算について記載がありますが、慣れていない人が計算を行うことは簡単ではありません。対応については慎重に検討し、専門家である税理士にも相談してみるとよいでしょう。

年齢要件がある

相続時精算課税制度は60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫に贈与をすることができる制度です。小さい孫に贈与をする場合は相続時精算課税制度を選択することができず、暦年贈与を活用することになります。

配分が偏る可能性がある

相続人が複数いるケースで相続時精算課税制度を利用し、住宅用の宅地など評価の大きい財産の贈与を行った場合、配分が偏り、相続人間でトラブルになってしまう可能性があります。

不安がある場合は、遺言を作成するなど配分の対する対策も検討しておいたほうがよいでしょう。

相続時精算課税選択届出書作成時は書き方に注意して

いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで相続時精算課税選択届出書の書き方がご理解いただけたと思います。
相続時精算課税制度の申告は書類の作成も含め複雑なので、専門知識を持つ税理士に相談されることをおすすめします。

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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい