相続が発生するとあらゆる資産を相続人が引き継ぐことになります。資産の中でも住居として利用している土地・建物などの不動産が大部分を占めていることも多いでしょう。当記事では自宅を相続する方法や注意点について解説します。
自宅の評価
自宅不動産は相続税の評価額はどのように計算するのでしょうか。不動産の価格を確認する方法について解説します。
宅地の評価
宅地の評価は国税庁が定める路線価に面積をかけて計算を行います。例えば、路線価が100千円で100㎡の場合は1,000万円の評価となります。路線価は毎年変わりますが、現在の路線価額は国税庁のサイトで確認することができます。
財産評価基準書|国税庁 (nta.go.jp)
建物の評価
建物の評価は固定資産税評価額で算出します。固定資産税評価額は毎年送付されてくる納税通知書で確認するか、市役所で名寄帳を取得して確認しましょう。
自宅を相続する場合の特例
自宅を相続する場合には小規模宅地の特例を利用することができます。小規模宅地の特例は同居している親族や相続発生前3年の間、持ち家を持っていない子供など次の世代が親から実家を相続した場合に利用できる特例で、自宅の土地のうち最大330㎡まで80%減額することができます。大きく評価を減額できる特例ですので、条件を満たすのであれば、節税につながりますので、ぜひ利用したい制度です。ただし、被相続人の財産が基礎控除額(式;3,000万円+法定相続人の人数×600万円)以下の場合は特例を活用する必要はありません。基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円で計算することができます。
また、店舗などで利用している事業用の不動産については400㎡まで80%減額することができます。主要駅から徒歩でいけるようなアクセスの良い土地は評価額もかなり高くなるため、節税効果も大きいです。使える特例はしっかり確認して、節税できるようにしましょう。
配偶者が存命している場合の注意点
住んでいた自宅を相続する場合の注意点は配偶者が存命している場合と既に亡くなっている場合で注意するべき点が大きく異なります。まずは配偶者がいる場合の注意点を見ていきましょう。
配偶者の自宅を確保する必要がある
配偶者が存命の場合は、被相続人名義で保有していた自宅に配偶者が住み続けるケースが多いでしょう。配偶者の生活を守るために引き続き配偶者が住むことができる住宅を確保する必要があります。
被相続人の財産の大部分が自宅不動産である場合、自宅の価値が法定相続分を超え、他の相続人が相続する分が少なくなるため、配偶者以外との遺産分割の協議が難しくなります。
例えば、自宅の価値が3,000万円で現預金が500万円で夫が亡くなり、妻が自宅を引き継ぐことで、ほとんどの財産を妻が引き継ぐことになり、法定相続分や遺留分を侵害するケースもあります。一方で自宅を分けてしまうと配偶者が住む場所が無くなってしまうという問題があります。
このようなケースで対応するために法的に整備されたのが配偶者居住権です。配偶者居住権は自宅の所有権は子などに相続させる一方で、配偶者には終身の居住権を法的に与えるものです。配偶者居住権の制度を活用することで、他の法定相続人と財産配分の話し合いをする際にバランスを考えながら配偶者は被相続人が所有していた住まいに、そのまま住み続けることができる強い権利です。そのため、ある程度生活するための現金を受け取ることが認められるため、今の生活を維持できます。子供が放棄をしないケースでは配偶者居住権の利用も検討してみましょう。
他にも代償分割という遺産相続の方法があり、一人で自宅不動産を相続する代わりに手持ちの資金で他の相続人に支払うという方法もあります。東京など不動産の相場が高い地域の不動産をもらう場合は、多額の資金を他の相続人に支払い負担も大きくなりますので、配偶者の財産が減ってしまうことになります。
生活資金を確保する必要がある
遺された配偶者に財産があまりない場合は、生活資金も考慮して配分を決める必要があります。配偶者が高齢になるにつれ、いずれ有料老人ホームへの入居費用や、一人暮らしをするための介護や高額のリフォーム代が生じるリスクもあります。相続発生時に判断した以上にお金が必要になることもありまして、余裕をもって確保しておく必要があります。
配偶者がいない場合
配偶者がいない場合の注意点について解説します。
共有はできるだけ避ける
配偶者がすでに亡くなっており、いない状況の場合は、親の死後に子どもが話し合って相続します。子どもがいない場合は兄弟姉妹や甥姪が相続することになります。相続人が2人以上いる例では誰が自宅を相続するか話し合う必要があります。
長男と次男で二人で共有するケース等、自宅を複数で共有した場合、さまざまな選択肢や考え方がありますので、それぞれの意見があわず売却して処分するか持ち続けるかや売買の金額、修繕費用などで各人の考えがまとまらず揉めることがあります。建物が建っている限り土地を部分的に処分することはできませんし、人数が多ければ多いほどさまざまな異なる意見がでてきますので、できれば1人が単独で相続した方がよいでしょう。
相続人間の関係が良好であっても、全員で共有となったことをきっかけに関係がこじれる可能性もありますので、出来るだけ共有状態にしないことをおすすめします。
空き家もメンテナンスが必要
空き家を所有すると庭の草刈りや台風など発生時に所有する家屋から他の家に被害を及ぼしトラブルにならないようにメンテナンスが必要になります。固定資産税やマンションの場合管理費も負担する必要がありますので空き家を相続した場合、デメリットも多くあるということも認識しておく必要があります。
相続後は売却を検討するようにしましょう。相続後3年以内に売却することで、譲渡所得税から3,000万円控除することができる特例もありますので、相続後売却することを検討してもよいでしょう。
生前にできる対策
相続は亡くなってから対応すると、相続人の負担も大きくなります。自宅を相続させる際に生前にできる対策について解説します。
遺言書を作成する
自宅を特定の人に遺す場合、もめることがないようにできるだけ、事前の対処法として全員が納得できるように配分を決定し遺言書を作成しておいた方がよいでしょう。自宅を誰が相続するかを話し合う過程で相続人同士で権利を主張しあい、大きな争いに発展する可能性もあります。
そのため、最悪のケースでは相続財産の分割について弁護士を通じて、結果的に家庭裁判所で調停や審判にて解決する事態となる恐れもあります。相続が発生する前にあらかじめ誰が相続するかを決めておくことで、相続発生後の手続きを簡単にできるうえに、争いを避けることができるというメリットがあります。
遺言書を作成する際は、生前に贈与をした金額もふまえて検討する必要があります。
特に公平に分けられないときは財産配分を決めた理由を付言事項として記すことや、保管や取り扱いにも注意しましょう。また、遺言の記載方法や配分の割合について不安がある場合は弁護士や司法書士が所属する法律事務所や、税理士事務所などに相談するとよいでしょう。
遺言書の形式は民法で定められており、公正証書遺言と自筆証書遺言、秘密証書遺言で作成されます。
公正証書遺言の場合は、費用は掛かりますが、作成時に法律的に有効な遺言を作成することが可能です。一方で、自筆証書遺言は、費用が掛からず気軽に作成できるというメリットはありますが、相続発生後に家庭裁判所で検認の手続きを行う必要があります。
秘密証書遺言は内容を他の人に見せずに作成する方法です。公証役場で公証人と証人で遺言を作成されていることを確認する形式ですが、内容を誰にも見せずに作成することになるため、相続発生後に形式不備で無効となる可能性があります。
いずれにしても、遺言を作成していることは相続人には知っておいてもらわないと実際に亡くなった後に気づかれないケースもあるため、相続人が多数いる場合でも最低一人には伝えておくようにしましょう。
評価額を把握しておく
相続開始後は原則10ヶ月という短い期限内に相続税の申告を必ず行う必要がありますので、早く準備をする必要があります。相続発生後、遺された家族は葬儀や各種手続き等の対応で多忙になります。10ヶ月以上経過してしまうと特例を利用できなくなったり、税務署から超えた期間分の延滞税が請求されたりするなどペナルティもあります。
課税の対象となる自宅不動産の価値を把握しておくことで、現状の問題点も把握できるため、相続人の手間も省くことができ、安心です。不動産の相続時に支払う登録免許税も評価額がわからないと計算することができません。
また、不動産だけでなく、現在取引をしている金融機関の預貯金や株式などなるべく正確に遺産をまとめて一覧を作成しておくことで、金融機関の窓口などで財産を調査する手間を省くことができますので、手続きを進めやすくなり、相続人の負担を和らげることができます。そのほか、通帳や保険の証書、不動産の所有者を証明する登記事項証明書などの資料や金などの現物資産の保管場所を伝えておくようにしましょう。あくまで相続発生時点の評価を行うことにはなりますが、取引金融機関や不動産の所在地がわからないと相続人の負担が大きくなってしまいます。
手続きが難しい場合は税理士に相談を
上記の通り、相続税の計算や小規模宅地の特例の適用、配偶者居住権の設定など非常に複雑な計算や法務局での不動産登記の手続きが必要になります。また、相続発生後は市区町村役場で出生から亡くなるまでの戸籍謄本の収集や金融機関の名義変更など様々な手続きを同時進行で進める必要があります。
知識がない人は何から手続きを始めていいかもわからないケースが多く、不動産の登記や金融機関の手続きもある中で被相続人の死亡から10ヶ月以内に納税するべき税額を計算し、財産を取得する者が自分で申告や納付をすることは、経験がない人にとって簡単なことではありません。書類の作成に慣れておらず、自分で申告することが難しい場合は、費用はかかりますが、税金の専門家である税理士や税理士法人に依頼する方がよいでしょう。プロに依頼することで確実に期限内に申告書を提出することができます。
まずは無料で行ってくれるサービスの範囲で相談してみるのがよいでしょう。相続人や財産の内容を一覧を用意し、相談にいくとスムーズに手続きに入ることができます。申告を依頼した場合いくらくらいの費用がかかるかあわせて確認してみてもよいでしょう。まずは電話やメールなどで予約をし、相談にいくことをおすすめします。
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