相続税対策として生前贈与を活用する方は多くいますが、贈与税が課税されるケースがあり、注意が必要です。当記事では、贈与税の制度や贈与する際の注意点について解説します。
贈与税をかけずに財産を渡すことは可能?
結論から言うと、合法的な制度を正しく利用すれば、贈与税をかけずに財産を渡すことは可能です。
日本の税制度では、家族間の資産移転を円滑にするため、一定条件のもとで非課税となる制度が設けられています。
ただし、制度を誤って利用すると課税対象となる場合もあるため、仕組みの理解が重要です。
贈与税がかかる仕組みの基本
贈与税は、個人から財産を受け取ったときに課税される税金です。
■課税の基本ルール
例:
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100万円 → 非課税
-
200万円 → 90万円に課税
非課税で財産を渡せるケースとは
次のようなケースでは贈与税が課税されません。
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年間110万円以内の贈与
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生活費や教育費として通常必要な範囲の支援
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住宅取得資金の非課税特例
-
教育資金・結婚子育て資金の特例
-
相続時精算課税制度の活用
制度の目的は「家族生活の維持」と「円滑な資産承継」です。
「節税」と「脱税」の違いに注意
節税とは、法律で認められた制度を活用して税負担を軽減することです。
一方、脱税は違法行為です。
✔ 節税(合法)
✖ 脱税(違法)
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名義だけ変更して実質管理は親
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贈与の事実を隠す
-
申告を故意に行わない
税務調査では「実態」が重視されます。
年間110万円まで非課税|暦年贈与の基本
最も利用されている方法が暦年贈与です。
毎年110万円以内の贈与であれば贈与税はかかりません。
長期間続けることで大きな資産移転が可能になります。
基礎控除110万円の仕組み
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。
✔ 誰からの贈与でも合計額で判断
✔ 複数人から受け取った場合は合算
例:
複数年に分けて贈与するメリット
毎年110万円以内で贈与すれば非課税で移転可能です。
例:
メリット
-
相続税対策になる
-
将来の税負担を軽減できる
-
計画的な資産移転が可能
暦年贈与が否認されないためのポイント
税務署に贈与として認められるには次が重要です。
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贈与契約書を作成
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振込で記録を残す
-
受贈者が管理する口座へ入金
-
受贈者本人が通帳管理
定期贈与とみなされるリスク
毎年同額・同時期に贈与すると、
「最初からまとめて贈与する予定だった」
と判断される可能性があります。
回避ポイント
-
金額や時期を固定しすぎない
-
毎年贈与契約書を作成
-
都度判断で贈与する
相続時精算課税制度を活用する方法
この制度は、生前贈与を促進するための特例です。
制度の仕組みと2,500万円特別控除
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最大2,500万円まで非課税
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超えた部分は一律20%課税
-
相続時に精算して課税
さらに2024年改正により:
✅ 年間110万円の基礎控除が新設
(この部分は相続財産に加算されない)
どんな人に向いている制度か
向いているケース:
-
値上がりが見込まれる資産を移したい
-
早期に大きな資産を渡したい
-
相続税対策を計画的に進めたい
暦年贈与との違い
| 項目 |
暦年贈与 |
精算課税 |
| 年間控除 |
110万円 |
110万円 |
| 大型贈与 |
不向き |
可能 |
| 相続時課税 |
なし |
精算あり |
一度選択すると戻れない注意点
相続時精算課税制度を選択すると、暦年贈与へ戻ることはできません。
しかし、相続時精算課税制度にも110万円の非課税枠が別途認められたことで、デメリットは大きく解消されています。
生活費・教育費など非課税になる贈与
扶養義務者間で通常必要と認められる支援は非課税です。
扶養義務者からの生活費が非課税になる条件
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日常生活に必要な費用
-
都度支払われるもの
-
貯蓄に回されない
例:食費、家賃、医療費など
教育費が非課税になる範囲
まとめて渡すと課税されるケース
生活費や教育費でも、
❌ まとめて数百万円渡す
❌ 貯金される
場合は贈与とみなされる可能性があります。
非課税と認められる使い方のポイント
住宅取得資金の贈与特例
親や祖父母から住宅取得資金の援助を受ける場合、非課税枠が設けられています。
非課税枠と適用条件
非課税枠は年度・住宅性能により異なりますが、省エネ住宅の場合、1,000万円、一般住宅の場合は最大500万円まで非課税となります。
適用を受けるための手続き
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贈与を受けた翌年に申告
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必要書類の提出
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住宅取得の証明
期限・対象住宅の要件
-
床面積要件あり
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自己居住用住宅
-
期限内の入居が必要
結婚・子育て資金贈与の非課税制度
結婚や子育てにかかる費用を支援する目的で、父母や祖父母からの資金贈与を非課税とする制度があります。若い世代の経済的負担を軽減し、安心して家庭生活を始められるよう設けられています。
制度の概要と非課税枠
この制度では、一定の条件を満たすことで
最大1,000万円まで非課税
となります。
内訳:
-
結婚関係費用:最大300万円
-
妊娠・出産・子育て費用:最大1,000万円
※金融機関で専用口座を開設して利用します。
対象となる費用の範囲
■結婚に関する費用
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挙式・披露宴費用
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衣装代
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引越費用(結婚に伴うもの)
■妊娠・出産・子育て費用
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不妊治療費
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出産費用
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医療費
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子どもの保育料
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ベビー用品費用
※対象外の費用もあるため事前確認が必要です。
制度利用の注意点
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金融機関経由での管理が必要
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領収書の提出が必要
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目的外使用は課税対象
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受贈者が50歳時点で残額があると課税
また、制度は期限付きのため、最新の適用期限を確認することが重要です。
贈与税がかからないようにする実務上のポイント
非課税制度を利用しても、実務上の管理が不十分だと課税される可能性があります。
重要なのは「贈与の事実」と「財産移転の実態」を明確にすることです。
贈与契約書を作成する重要性
贈与契約書は、贈与が成立した証拠になります。
記載内容例
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贈与日
-
贈与額
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贈与者・受贈者の署名押印
-
贈与の意思表示
書面を残すことで税務調査時の証明力が高まります。
通帳管理と名義預金とみなされない対策
名義預金と判断されないためには、
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受贈者本人が通帳・印鑑を管理
-
受贈者が自由に使用できる状態
-
贈与後は親が管理しない
ことが重要です。
現金手渡しを避ける理由
現金での手渡しは記録が残らず、贈与の証明が困難になります。
推奨方法
✔ 銀行振込
✔ 振込記録の保存
透明性を確保することで否認リスクを下げられます。
記録を残すことで税務調査に備える
次の資料を保存しておきましょう。
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贈与契約書
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振込記録
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通帳コピー
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領収書(特例利用時)
税務調査は数年後に行われることもあります。
贈与税が発生してしまうよくある失敗例
制度を知らずに行った贈与が課税対象になるケースは少なくありません。
名義預金と判断されるケース
以下の場合、親の財産と判断される可能性があります。
-
子名義の口座を親が管理
-
子が口座の存在を知らない
-
通帳・印鑑を親が保管
結果として相続財産に含まれる可能性があります。
まとめて贈与して課税される例
→ 贈与とみなされ課税対象になる可能性があります。
使途が不明確で否認されるケース
教育費や生活費でも、
場合は贈与と判断されることがあります。
親が管理している口座のリスク
贈与後も親が管理していると、
❌ 財産移転が成立していない
❌ 実質的に親の資産
と判断される可能性があります。
生前贈与を活用するメリットと注意点
生前贈与は、資産承継を円滑に進める有効な手段です。
相続税対策としての効果
生前贈与により相続財産を減らすことで、
が期待できます。
家族間トラブルを防ぐ効果
事前に財産を分けておくことで、
につながります。
早めに準備する重要性
生前贈与は時間をかけて行うほど効果的です。
-
暦年贈与を長期活用できる
-
家族と合意形成ができる
-
税制改正への対応が可能
早期の計画が重要です。
贈与税をかけずに財産を渡すためのチェックリスト
以下を確認することで、税務リスクを減らせます。
非課税制度を正しく理解しているか
☑ 暦年贈与のルールを理解している
☑ 特例制度の条件を確認している
☑ 適用期限を把握している
記録・契約書の準備はできているか
☑ 贈与契約書を作成している
☑ 振込記録を保管している
☑ 領収書を保存している
税務署に否認されない対策ができているか
☑ 名義預金対策をしている
☑ 受贈者が管理している
☑ 贈与の実態が明確
非課税制度を活用した資産移転で押さえておきたい重要ポイント
贈与税の非課税制度は、現金や預貯金だけでなく不動産や有価証券、お金以外の資産にも適用される場合があります。適切に制度を活用すれば、配偶者や子ども、さらには孫世代へ円滑に財産を移転することが可能です。
ただし、制度の適用条件や期限、申告手続きなどは細かく定められており、原則として一定額を超える贈与については申告や税額の計算、必要に応じた税金の納付が求められます。
不動産や高額資産の贈与で注意したい点
住宅の購入資金援助や不動産そのものの贈与は、相続対策として有効な方法の一つです。しかし、不動産の評価額は市場価格ではなく相続税評価額で算定されるため、課税関係の判断には専門的な知識が必要です。
また、持分移転や共有名義化などの方法を選択する場合、将来の売却や管理面の負担も含めて検討することが重要です。
孫世代への資産承継と信託の活用
教育資金贈与制度などを活用すれば、孫の教育費や生活支援を非課税で行えるケースがあります。さらに、資産規模が大きい場合は信託を活用することで、資産の管理や分配方法を柔軟に設計することも可能です。
信託は資産管理や承継を計画的に行える一方、設定や運用にコストがかかるため、目的に応じた活用が求められます。
配偶者への贈与と婚姻期間の特例
婚姻期間が20年以上の夫婦間では、居住用不動産またはその取得資金の贈与について、一定額まで非課税となる特例があります。これは配偶者の生活基盤の安定を目的とした制度であり、相続対策としても有効です。
なお、この特例は一生に一度のみ適用されるため、利用のタイミングが重要です。
特定の事情に配慮した非課税制度
障害のある方の生活保障を目的とした「特定障害者扶養信託」など、将来の生活を支えるための制度も設けられています。これにより、一定額まで贈与税が非課税となり、長期的な生活支援が可能になります。
制度の期限・申告期限に注意(3月31日など)
非課税制度の多くは適用期限や手続き期限が定められています。特例制度によっては、翌年の3月31日までに申告や必要書類の提出が求められる場合があります。
期限を過ぎると適用を受けられない可能性があるため、早めの準備が重要です。
国税庁の指針と最新情報の確認が重要
贈与税制度は税制改正により内容が変更されることがあります。制度の適用条件や非課税枠、申告方法などは、国税庁の公表情報を確認することが大切です。
特に相続開始(被相続人が亡くなった時)以降の税務処理や贈与財産の加算対象など、制度の細かな取り扱いには注意が必要です。
法人や一般の贈与との違い
個人間の贈与とは別に、法人から個人への資金提供は原則として給与や所得とみなされ、贈与税ではなく所得税の対象となる場合があります。
また、一般的な贈与と異なり、事業関連の資金移動は税務上の取り扱いが異なるため注意が必要です。
非課税制度の活用は専門家への相談がおすすめ
贈与税の非課税制度は種類が多く、適用条件も個々の状況に応じて異なります。
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どの制度を使えばよいか
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何に注意すべきか
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税負担を最小限にする方法
これらを総合的に判断するためにも、税理士など専門家への相談がおすすめです。
まとめ|非課税制度を正しく活用して安心して財産を引き継ぐ
贈与税をかけずに財産を渡すことは、制度を正しく活用すれば十分に可能です。
重要なポイントは:
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非課税制度を理解すること
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贈与の実態を明確にすること
-
記録と証拠を残すこと
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長期的な視点で計画すること
適切な準備を行えば、税負担を抑えながら円滑に資産を引き継ぐことができます。
不安がある場合は、税理士など専門家へ相談しながら進めると安心です。広島相続税相談テラスでは相続や贈与に関するあらゆるご相談に対応しております。初回のご相談は無料で承りますので、お気軽にご相談ください。