生前贈与を行っている場合、相続財産を配分する時に特別受益として考慮して全員で納得できるように資産を取得する割合について話し合いを行います。
特別受益は遺留分の算定にも影響するため、遺言書を作成する場合は特別受益分も考慮して作成する必要があります。しかし、被相続人が特別受益の持ち戻し免除の意思非表示をしていた場合、どのような対応をすればよいのでしょうか。当記事では具体例を交えて解説します。
特別受益の持ち戻し免除とは
特別受益とは先に贈与された分は遺産相続相続の時に調整して配分するための考え方です。
例えば、子どもが二人おり、財産が5,000万円ある人が長男に2,000万円を先に贈与し、次男に贈与をしていなかった場合、相続が発生した後で残りの3,000万円を1,500万円ずつ分けてしまうと、生前贈与分を含めると生前贈与の受贈者である長男が3,500万円を取得することになり法定相続分と比較して大きく異なる配分となるため、不公平です。
そのため、長男が先にもらっていた2,000万円は先に取得していたものとし、相続発生時には長男が500万円、次男が2,500万円引き継ぐことで調整することができます。この調整のことを持ち戻しといいます。
この戻すことをしなくていいということを意思表示をするのが持ち戻し免除です。持ち戻し免除の意思表示を贈与者が行うことで贈与分の調整を行わなくていいということになります。持ち戻し免除の意思表示は口頭で行うこともできますが、証拠を残すためにも書面にした方がよいでしょう。持ち戻し免除は事業承継や地主などが一人の相続人に多くの財産を残したい場合に利用されることが多いです。
また、特例を利用し、婚姻期間が20年以上続く夫婦が配偶者に自宅の居住用の用不動産を贈与する例では持ち戻し免除の意思表示をしたものとみなされます。
持ち戻し免除は遺留分算定にも影響する?
持ち戻し免除をすることで、遺産分割の時に先に贈与を受けた分に調整をしなくていいということになります。では遺留分の算定も持ち戻し免除によって特別受益について考慮しなくていいかというとそうではありません。
遺留分は、民法で認められている最低限財産を相続する権利で、被相続人の配偶者や子が対象となります。
遺留分は遺言者の意思によっても無くすことはできませんので、他人にすべての財産を遺贈をするという旨の遺言が書かれていても配偶者や子はそれぞれが最低でも遺留分は相続人同士の協議を経ずに取得することができます。特別受益の持ち戻し免除をしている場合でも遺留分の計算には持ち戻しの効力はなく、侵害されていることを主張することができるので注意しましょう。
遺言書を作成する時も特別受益がある場合、遺留分を侵害しないように注意する必要があります。例え持ち戻し免除の意思表示をしていたとしても遺留分を侵害していれば相続開始時に遺留分侵害額請求をされる可能性があります。相続放棄を行わず、遺留分について主張された事例は遺言の記載通りに分けることはできなくなってしまいます。
遺言書を作成する際はまずは自分の財産を調査したうえでまとめて一覧の表にし、誰に何を相続させるかを検討するという流れで行います。その際に、遺留分の額も気にして配分する必要があるでしょう。また、東京などアクセスがよく価値の高い不動産がある場合は、一つの不動産を単独で相続するだけで遺留分を侵害する可能性もあります。
不明点がある場合は専門家に相談を
今回は特別受益の持ち戻しの内容や遺留分との関係について解説しました。贈与税の基礎控除の範囲で資金を家族に生前贈与することは節税対策としてはメリットの大きい方法です。しかし、税金を減らせる一方で、一人の人間に多くの額を贈与してしまうと、特定の人が大きな利益を得るなど、いずれ相続が発生した時点でトラブルとなり関係が悪化する可能性もあり公平性の観点では問題点もある方法です。上記に解説のとおり、持ち戻しを免除しているケースでも遺留分の問題があるため、かならずその人に財産を多く遺せるわけではありません。
相続は慣れていない人が多く、知識が無い人がどのように考えればがいいかわからないことは当然で、参考となる書籍やホームページを見ても手続きを進めることは簡単ではありません。相続について不明点がある場合は費用がかかりますが弁護士や司法書士、税理士等の専門家に相談し、進めることをおすすめします。
特に財産が基礎控除を超えており相続税の申告が必要な場合は、原則10ヶ月以内に申告をする必要があり、不動産の登記や金融機関の名義変更などで忙しい中で手続きを進めていく必要があります。
広島相続税相談テラスでは実績のある税理士が相続発生後の申告手続きや生前の相続税対策についてもサポートします。初回の相談はサービスで無料で対応しておりますので、電話やメールなどでお気軽にご連絡ください。