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土地を渡すには相続と贈与どちらがお得?

2025年01月20日

高齢になると将来の相続に備え終活をすることが一般的になり、次世代に財産を遺す方法を検討している人も多いでしょう。財産を遺す際に土地等、不動産の遺し方は非常に重要になります。不動産は財産としての価値も高く、登録免許税や不動産取得税などさまざまな税金がかかるため、渡す方法も重要となります。

生前贈与で遺すか、亡くなった時に相続させるかどのような違いがあるかわからず、どちらがいいか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。当記事では不動産を生前贈与をするケースと相続させるケースのそれぞれのメリットとデメリットを比較して解説します。

不動産の評価方法

課税対象となる不動産は土地と建物を分けて評価額の算出を行います。

土地は路線価×面積で評価を行い、建物は固定資産税評価額で評価を行います。相続と贈与の評価方法は同じで、同じように計算を行います。

不動産を生前贈与をする方法

不動産を生前贈与をする際に贈与税の課税方法を選択することができます。一つ目は暦年贈与という方法で、年間110万円の基礎控除があります。

基礎控除の110万円を差し引いた金額が課税価格となります。1月1日から12月31日までに受けた贈与額が110万円を超えると受贈者本人が贈与税の申告と納税が必要となりますが、不動産は一般的に価値が高く、基礎控除を大きく上回るケースが多く、税率も高くなります。

一方の相続時精算課税制度は相続時に2,500万円までは贈与税は非課税となり相続が発生した時に相続税として課税される制度です。不動産を生前贈与する場合は相続時精算課税制度を適用する方が多いでしょう。

不動産を生前贈与するメリット

不動産を生前贈与をするとどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に確認してみましょう。

不動産から得られる収益を次の世代が受け取ることができる

土地を活用し、マンションなどの賃貸不動産などを経営している場合、土地や建物から得られる収入は保有している者が受け取ることになります。親や祖父母が持っている不動産を早めに子や孫に贈与をし、名義の変更をしておくことで、不動産から得られる収益も長い期間、所有者である子や孫が受け取ることになります。例えば、収益の額が毎年100万円であれば相続発生の20年前に贈与をしておくことで2,000万円と大きな資金を次の世代に移転することができ、相続税の計算から省くことができるため節税になります。収益を得られる不動産を保有しているケースでは、財産をまとめて事前に節税効果を確認し、贈与をすることを検討してもよいでしょう。

不動産を渡す人を明確にできる

相続が発生すると相続人全員で取得する財産の配分について話し合いを行う必要がありますが、事前に渡すことでトラブルを回避することができる場合があります。価値の高い不動産がある場合や相続人の数が多い場合、法定相続割合通りに分けることができず誰が相続するか決めるのに時間がかかることも多くあります。会社を経営している場合などは事業用に利用している土地は一般的に事業を承継する子どもに渡しておいた方が負担が軽減できる場合が多いです。

また、自宅などの不動産でも遺言がなく遺産分割で誰が取得するか決められない場合、2人以上で共有にすると後で継続して保有するか売却するかそれぞれの考えがあり合意することが困難でトラブルになり関係が悪化してしまう場合もあります。

事前に贈与をしておくことで、相続が発生する前に登記の手続きなどを行うことができるため、相続人同士で誰が不動産を取得するか話し合う必要がありません。一方で不動産を事前に贈与を受けており、他の相続人よりも贈与を受けている額が多い場合、特別受益となり、実際に遺留分を侵害する可能性もあるので相続発生時の配分には注意が必要です。

そのため、誰にいくら贈与をしたか内容を記録しておく必要があります。

不動産を相続させるメリット

不動産を生前に贈与をするのではなく、相続させることでどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に確認してみましょう。

基礎控除が大きい

相続税の基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円と贈与税の基礎控除よりも大きいです。被相続人が亡くなった時点の相続財産の総額から基礎控除を差し引いたうえで税率をかけあわせて計算を行うという流れで相続税の計算を行いますが、財産が基礎控除以内であれば非課税で相続することができます。

財産の一覧の表を作成し、基礎控除以下であれば、相続により渡した方が税負担がありませんのでは有利となります。

特例を利用できる場合がある

相続税の課税制度にはさまざまな特例がありますが、同居の配偶者や子供などが相続する際に利用できるのが小規模宅地の特例です。小規模宅地の特例は家の敷地として利用していた土地の評価を最大330㎡まで80%評価を減額することができる制度です。1億円で評価される物件であっても課税価格は2,000万円となりますので、評価額が低くなることで大きく税額を下げることができます。

子どもが相続する場合は同居していなくても相続発生前3年間で持ち家を保有していなければ、利用できる可能性もあります。小規模宅地の特例を利用できるかは相続する人の状況にもよりますので、特例の要件をしっかりと確認して、利用できるかどうか相続が発生する前に確認しておきましょう。誰が相続するかによって利用可否が異なりますので事前に特例の条件を確認しておき、住宅を保有していない相続人がいる場合は、要件を満たす人が相続できるように遺言書を作成しておくということもできます。

他にも配偶者控除を利用することで、配偶者が相続する分については不動産に限らず1億6,000万円または法定相続分までは相続税がかかりません。このような特例を有効に利用することで税金を負担せずに承継することができる場合があります。

不動産取得税がかからない

贈与や売買などが理由で不動産を取得する者は登記を行い、名義変更をする際に不動産取得税がかかります。しかし、相続により遺産として不動産を取得した者には不動産取得税が課税されません。

どちらが良いかはケースバイケース

不動産を相続する方が得なのか、贈与をする方が得なのかはケースバイケースですので事前にシミュレーションを行うことが重要です。物件の価値や相続人同士の関係などによってどちらが良いか結論は変わるため一概にどちらがよいと決めることはできません。課税の対象となる資産の総額や特例の概要など情報を整理したうえで判断する必要があるでしょう。

相続税の制度は国税庁のホームページに記載されていますが、家族の相続は普通は何度も経験するわけではありませんし仕組みも複雑ですので、自分で決めることは簡単なことではありません。基本的な知識がなく自分では判断できないことが多いでしょう。

自分の場合は相続した方がよいのか贈与をする方がよいのか迷う場合は、税の専門家である税理士に相談するようにしましょう。経験が豊富な税理士のサポートを受け、検討することで、自分にあった方法が見つかるはずです。

税理士にも専門分野がありますので、相続に強い税理士事務所を選ぶことが重要です。初回の相談は無料で対応している税理士が多いので、まずは電話やメールで気軽に連絡してみることをおすすめします。

また、相続が発生すると10ヶ月以内に書類を作成し、税務署に申告を行う必要があります。期限が短いため、事前に準備をしておくことで相続人の負担を減らし、安心して進めることができるでしょう。

広島相続税相談テラスでは実績豊富な税理士がサポートいたします。相続税の申告で疑問点がある場合はぜひ広島相続税相談テラスにご相談ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい