相続が開始すると、遺言書が書かれていない場合は相続人全員で遺産分割の話し合いを行うことになります。しかし、相続人で協議を行っても、預貯金や土地・建物など遺産の分割方法がまとまらず、分け方が決まらないケースも多くあります。
このような場合、どのような流れで名義変更までの手続きを進めていけばよいのでしょうか。当記事では遺産分割がまとまらない場合の対応方法について解説します。
遺産分割がまとまらない場合の流れ
遺産分割がなかなか成立しないケースでも様々な例があります。ケース別に対処法や注意点を見ていきましょう。
相続人同士で合意できない
相続人同士は利害関係者ですので、できるだけ自分が多くの相続財産を得ようとすると、対立し、話しがまとまらず、揉めるケースがあります。生前に介護をしている場合や、生前贈与を受けているケースでは寄与分や特別受益をそれぞれが主張して、意見があわないケースも多くあります。他にも離婚した元妻との間に子供がいるケースなどはトラブルが発生するケースが多いです。
相続人同士で話し合いがまとまらない場合は、弁護士を交えての交渉を行うことになります。それでもまとまらない場合は、家庭裁判所での調停を申し立て、調停員を交えた話し合いで、全員が納得できる状態を目指します。調停でも不成立となった場合は審判に進むことになります。このように配分で合意できず、平行線になる場合は法的な制度を利用して解決するしかありません。
相続人の中に認知症の人がいる
相続人の中に認知症の人がいる場合は話し合うことができませんので、対象の財産を法定相続割合通りに分割するか、代理人をたてて遺産分割をすることになります。
代理人は成年後見等の法定代理人を建てることになりますが、被相続人の配偶者が認知症になっていた場合、子どもが同じ相続人で利益相反関係となりますので、代理人になることはできません。
法律事務所等で司法書士など第三者に依頼する必要があります。
相続人との連絡がつかない
財産を受ける法定相続人との連絡がつかない場合も実質的に財産を受ける、当事者同士での話し合いができないため、手続きを進めることは認められていません。
連絡が取れない者がいる場合はまずは戸籍謄本と戸籍の附票を取得し、住所を調べたうえで手紙などで連絡を取ってみるようにしましょう。それでも連絡を取れない場合は、遺産分割調停の申し立てを行います。
戸籍などで調査をしても行方不明の場合は家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらい、不在者の代理人として資産を管理することになります。
手続きに協力してもらえない
相続人の中に相続放棄もせずに、手続きに非協力的で連絡を取っても、無視して対応してくれない人がいる場合は、まずは弁護士に相談し、弁護士を通じて、連絡をとるとよいでしょう。このようなケースでは意見がないことを理由に相続放棄をしたものとして、勝手に進めてしまおうと考える人も多いですが、後で法定相続割合の分の財産や遺留分などを請求される可能性がありますので、注意が必要です。
それでも対応してもらえない場合は、最終的に家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。遺産分割調停を申し立てても相続人が裁判所に来ないなど協力してもらえない場合は、裁判官が他の相続人から事情を聞き、遺産分割方法を指定します。
事前の対策は遺言の作成がおすすめ
相続人同士で話し合いを行うと遺産の分け方を決めることが難しい事例は多々あります。財産の内容などから法定相続分通りに分けることが難しく、自分が亡くなった時に分け方が決まらない可能性が高い場合は事前に配分を決定し、遺言を作成することをおすすめします。遺言書は財産の一部についてのみ書くこともできますが、全ての財産について記載した方がよいでしょう。
遺言書を作成する際は財産の一覧の表を作成し、誰に何を遺すのかを検討して、内容を決めていきましょう。ただし、書き方を誤ったり、遺留分を侵害するような遺言を作成してしまったりするとかえってトラブルになることもあります。
自分で作成する自信がない場合は、問題が起こることを回避できるように弁護士や司法書士、税理士など相続関連業務に強い専門家に相談することをおすすめします。
遺産分割のお悩みは専門家に相談を
上記の通り、遺産分割がまとまらない事例は多くあります。相続発生前は家族の関係が良くても、相続発生をきっかけに配分が納得できないなどの理由で関係が悪化するケースもあります。
相続が発生すると相続人のうち誰かが代表して話し合いや各種手続きを行わないといけません。自分が遺産相続の知識や経験がなく、慣れていない場合は必要に応じて資料の作成や登記をする際の書類を一つ提出するだけでも手間がかかり、大変な作業になるでしょう。
また、相続税の申告は被相続人が死亡した翌日から10ヶ月以内と期限が定められています。遺産分割の話し合いでトラブルになり、全員で合意するまでに時間がかかってしまった場合、小規模宅地の特例や配偶者控除などの特例を活用できなくなる可能性があります。特例を適用できなくなると実際に支払う税金の額が大きくなるなどデメリットも大きいです。
相続税の計算も複雑ですので、遺産相続についてお悩みがあるなら、弁護士や司法書士、税理士などに早めに相談し、サポートを受けることをおすすめします。専門家に依頼することで、費用はかかりますが、安心して手続きが進められるメリットは大きいです。
広島相続税相談テラスでは遺産相続の実績と経験が豊富な税理士が多数在籍しており、多くのお悩みを解決しております。初回の相談は無料で対応しておりますので、お気軽にお電話やメール等でご連絡ください。