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農業を続けられない人が農地を相続した際の対処法

2025年09月14日

親などが亡くなると法定相続人として財産を引き継ぐ必要があります。相続財産の中には引き継いだ後に対応に困る財産もあるでしょう。

相続人が引き継いだ後に困る財産として代表的な例が農家が持つ田舎の田んぼなどの農地です。農地は簡単に売却や転用ができず、相続人が農業を続けない場合、協議をして誰が引き継ぐか決めてから相続してから困るケースも多くあります。

当記事では農地を引き継いだ時に取り得る選択肢についてポイントをおさえて解説します。

農地を引き継いだ時に対応方法

農業を続けられない人が農地を引き継いだ時に取ることができる選択肢はどのようなものがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

相続放棄をする

相続放棄とは相続人として財産を一切引き継がないことです。放棄をした者は初めから相続人ではなかったこととなり、相続財産を引き継ぐ権利や借金の返済をする義務を失います。相続放棄の手続きは家庭裁判所で行うことが可能です。

農地は管理の手間がかかるうえに、固定資産税評価額に応じて毎年負担がありますので、引き継ぎたくないという人も多いでしょう。

相続放棄をすることで、農地を引き継ぐ必要はなくなりますが、全ての財産を引き継ぐことができなくなるという点は大きなデメリットですので注意が必要です。また、自分が相続をしないということになると、他の相続人が財産を引き継ぐことになりますので、トラブルを防ぐために自分が財産を受けないことは必ず事前に伝えておくようにしましょう。

全ての相続人が相続放棄をした場合は、相続財産は国庫に帰属することになります。

農地として貸し出す

不動産として相続時に引き継ぐものの、相続人が仕事の関係などで、農業ができない場合は、農地として人に貸し出しをすることも可能です。借り手は地代を支払って、代わりに耕作をすることになります。

農地として置いておくと草刈りや排水対策などの維持管理が必要で、近くに住んでいないと自分で管理を行うことは難しいでしょう。しかし、所有する物件を放置をすると周辺に害虫などの被害がおよび、近隣に迷惑がかかり、行政指導を受ける可能性があります。

人に農地として貸し出すことができれば、管理にかかる負担を大きく軽減することができます。

しかし、収入が思うように稼げないケースも多く農業人口も減少傾向ですので、都合よく農地として利用してくれる人が現れるとは限りません。

農地を転用する

市街化区域にあり、地目が田・畑になっている農地や今後発展が期待できる場所に土地がある場合は、農地として使用せずに宅地に転用して賃貸用の建物を建てることや、駐車場などの別の用途で有効活用することも考えられます。

しかし、農地の場合、通常の土地と異なり、農地法の許可や土地がある地域の農業委員会への届出や都道府県知事への書類送付などが必要となります。通常の土地よりも有効活用のハードルが高い点は注意が必要です。

また、農地転用の手続きが無事にできたとしてもアパート経営などはリスクが伴いますので必ずしも利益を得られるとは限りません。不動産投資のリスクについてもしっかりと理解して検討することをおすすめします。

売却する

保有していると管理の手間の問題や固定資産税などを支払う必要があり、一定の負担がかかり続けます。

農地として売却する場合は買主側が農業従事者であることが条件となります。そのため、通常の土地と比べて非常に売買が成立する可能性は低くなります。不動産会社も買主を見つけられない可能性や見つかるとしてもかなり低い価格でしか売却できない可能性が高いでしょう。

市街地にある農地の場合は宅地に転用して、売却するケースもありますが、通常の宅地等の売却手続きよりも煩雑となります。

選択肢のひとつではあるものの、実質的には困難なケースが多いでしょう。

農地がある場合の事前の対策

農地がある場合、どのような生前対策を取っておけば良いのでしょうか。農地を保有している方が行っておくべき対策について解説します。

シミュレーションを行っておく

相続はいつ発生するかわかりませんので、事前の対策として、まずは現状を把握しておくことが重要です。事前に課税の対象となる各財産の評価額を確認し、財産をまとめた一覧を作成し、シミュレーションをしておくことで、実際に相続が発生した際に誰にどのように分けるとどれくらいの税金がかかるかを把握することも可能です。

事前に把握することで、相続人に事前に説明することが可能となりますし、贈与など時間がかかる対策を選択することも可能です。

農地を保有している場合、次に引き継いだ相続人がそのまま引き継いだ土地で農業をすることで、要件を満たせば納税猶予を活用できる事例もあります。納税猶予を行って引き継いだ相続人が農業を継続し、死亡した場合は猶予された税金は免除となりますので、非常に有利な制度です。

相続税の期限は10ヶ月と短く、相続が発生すると期間内に急いで手続きを進める必要があります。事前に検討しておくことで、相続人が仕事の調整を行って、農業を続けられるケースもありますので、事前に把握して、事前にある程度判断して準備しておくことが重要です。

ただし、納税猶予の制度はあくまで免除ではなく猶予が認められている状態ですので、相続した人が取得した後、農地として農業を行わなくなったときに税金がかかりますので注意しましょう。

遺言を作成しておく

農地を保有している場合、特に遺言書を作成して、誰に自身が保有する農地を遺すかを検討しておくことが重要です。農業を続ける場合も宅地に転用する場合も、誰に相続する予定かを決めておくことが重要です。

農地の手続きは通常よりも時間がかかるケースが多いので、遺産分割の話し合いを行っていると手続きが間に合わなくなる可能性が生じます。遺言を作成し、誰に遺すかを事前に決めておくことが大切です。

遺言には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。公正証書遺言は公証役場で作成するため、費用はかかりますが、作成時に法律上有効であることが確定します。

しっかりとした遺言を作成するために公正証書遺言の制度を活用した方がよいでしょう。

相続で不安な点がある場合は専門家に相談を

相続が発生すると、銀行の名義変更の手続きや法務局での不動産の登記などの手続き以外にも公的年金や電気・ガス・水道などのライフラインの契約変更など、さまざまな手続きを同時進行で進める必要があり、相続人には大きな負担がかかります。また、遺産の分割でトラブルになる可能性もあります。

特に被相続人名義の財産が基礎控除を超える場合は相続税の申告が必要な場合、相続開始から原則10ヶ月以内と短い期限内に税務署への申告書の提出と現金一括で納税を完了させる必要があり相続発生後の忙しい中で手続きを進める必要があります。農地を保有している場合は、通常の手続きの流れに加えて持ち主が変更することに対して農地特有の手続きも必要となります。被相続人の財産が基礎控除を超えない場合は相続税の申告は不要ですが、手続きの負担は相応にあります。

相続税の計算方法は国税庁のホームページに記載されています。

知識が無く慣れていない人が相続税の計算や申告書類の作成は簡単なことではありません。誤った申告をすると税務署の調査で指摘される可能性もあります。自分で手続きをすることが難しい状況の場合は相続のプロである税理士や司法書士にサポートを依頼すると安心してスムーズに進めることができます。

広島相続税相談テラスでは経験豊富な税理士が皆様のお悩みを解決しております。初回の相談は無料で対応しておりますので、お気軽にお電話やメール等でご連絡ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい