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孫に財産を遺す場合の注意点は?

2025年11月08日

終活ブームもあり、遺産相続が発生した時のために、自分の財産の分け方について検討する人が増えています。

中には相続が開始した時に法定相続人以外の人に財産を遺したいと考える人も多いでしょう。相続人以外の人に財産を遺すケースで特に多いのが、かわいい孫にあげたいというケースです。

当記事では孫に財産を遺す方法と注意点についてポイントをおさえて解説します。

孫に財産を遺すことを検討する際の注意点

孫に財産を遺す際はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。具体的に解説していきます。

相続人間でトラブルになる可能性がある

特定の孫に大きな財産を遺すことにした場合、法定相続割合とは大きく異なる配分となり、配偶者や子など他の相続人や親族とトラブルになるケースがあります。自分が亡くなった後にトラブルとなり、結果的に遺産を引き継げないケースや関係が悪化するケースもあります。

代々引き継いだ土地や事業承継などが理由でも、財産を遺したいと考えている孫だけでなく他の家族のことも考慮して検討する必要があります。特に子や孫が複数いる場合は、

若いうちに多額の財産を手にすることがある

父母から相続するのではなく、祖父母から相続すると若いうちに多額の財産を受け取ることになります。

若いうちの大きな金額を相続で取得することで、勤労意欲が低下しやすくなるなどデメリットもあります。教育上の問題もあり、孫が祖父母から財産を受け取ることが必ずしもその子にとっていい影響があるとは言い切れない点も注意をする必要があるでしょう。

かわいい孫だからこそ財産を受ける孫にとって本当に良いことなのかを慎重に検討する必要があります。

孫に財産を遺す方法

孫に自分の財産を遺したいと考える場合、どのような方法があるのでしょうか。具体的な方法とメリット、デメリットについて解説します。

遺言書を作成する

遺言書を作成し、孫に財産を遺すことを記載することで、基本的に相続が発生した時に孫に財産を遺贈することができます。遺言を作成することで、相続が発生した時に孫に何を取得させたいか方針を明確にすることができ、相続人の負担を軽減することができます。遺言を作る前に財産をまとめて、一覧の表にするとよいでしょう。

注意点としては孫に遺産を渡す場合、通常の相続税よりも2割加算される制度があり、通常よりも多く税金がかかるため、相続税の負担が大きなものとなります。特に不動産などを遺贈する場合は、課税される金額に応じて現金も一緒に遺贈しないと税金を納税するための現金が用意できず、相続税が払えなくなる可能性がありますので内容については慎重に検討する必要があります。特に東京などアクセスがよく評価が高いエリアに不動産を保有している場合は、引き継ぐ際の税負担も大きいため注意が必要です。

ただし、子が亡くなっており、代襲相続により孫が財産を取得する場合は2割加算の対象とはなりません。

生前贈与をする

相続が発生する前に生前贈与をするのも一つの方法です。生前贈与をした場合、贈与税の基礎控除を使うことができるため、年間110万円を限度に非課税で贈与をすることが可能です。暦年贈与は1月1日から12月31日までの贈与について、贈与税が計算されます。毎年、生前贈与をすることで、相続が発生した時の被相続人の財産が減少しており節税になるため、結果的に相続税対策にもなります。110万円を超える贈与を行った場合は贈与税の申告が必要となります。

贈与を進める際に注意が必要な点は生前贈与をした際に通帳や印鑑を祖父母が保管していると実質的に贈与が行われておらず、相続が発生した時に相続財産として相続税の計算組み入れられる可能性があります。贈与をする際は孫や未成年の場合は親権者自身が自分で手続きをして出金できる状態にしておくことが重要です。

また、直系尊属から孫などに贈与をする場合、住宅取得資金であれば最大1,000万円まで、教育資金であれば最大1,500万円まで、結婚・子育てのための費用であれば一括で非課税で贈与できる課税制度もあります。これらの特例を適用することで、資産を減らすことができ、相続税の圧縮にもつなげることができます。

養子縁組をする

養子縁組の制度を活用することで、孫を子どもにすることも可能です。養子縁組をすることで法律上は子どもになりますので、他の子どもと同じように、民法上の法定相続人として相続権や遺留分を有することになります。

生前に養子にすることで、法律のうえでは子どもとなり、相続人の範囲が広がることで親や叔父・叔母と甥・姪の関係であったのが兄弟姉妹の関係となり相続権を持ちますが、本来は孫であることは明らかであるため、他の相続人と同じ法定相続分であることでトラブルになる可能性があります。

それぞれが権利を主張して意見が合わず、遺産分割の配分が決められなくなると、弁護士を交えての相談や家庭裁判所での調停や審判へと進み、結果的に通常以上に相続手続きの負担も大きくなりますので、先に誰に何を遺すかを明確にするために遺言書を作成することや、他の相続人にも一定の説明をしておくなどの対応もあわせて行うようにしましょう。

養子縁組のメリットとしては、実子がいる場合は1人まで基礎控除の額や生命保険の非課税枠を増やすことができます。法定相続人の数が1人増えることで基礎控除は600万円、生命保険の非課税枠は1人につき500万円増やすことができますので、基礎控除を超える場合でも相続税の節税効果も高く有効な手段です。

相続税の申告や事前の対策は税理士に相談を

上記に解説した通り、孫に財産を遺す場合、注意点が多くありますのでよく確認しておく必要があります。

相続税の計算や制度は非常に複雑で税制改正も頻繁にあり、さまざまな特例があります。国税庁のホームページに計算方法や税率が掲載されていますが、仕組みが複雑ですので、慣れておらず、知識がない一般の人が自分で計算することは簡単ではありません。

課税対象となる財産の評価額の合計が基礎控除以下の場合は申告は不要ですが、基礎控除を超える場合、財産を取得した者は被相続人の死亡の翌日から10ヶ月以内に申告の書類を提出する必要があります。期間も短く、万が一誤った申告を行った場合、税務署による税務調査で指摘され、加算税を請求される可能性もありますので慎重に手続きを行う必要があります。

特に孫に財産を遺すケースでは2割加算の適用など非常に複雑な対応が必要となりますので、亡くなる前の対策の検討をするための特例や控除を利用した場合のシミュレーションや相続発生時の申告は税務の専門家である税理士に相談することで安心して進めることができます。

相続税は頻繁に改正もありますので、その時点の税制で検討することも重要です。税理士にも専門分野があります。そのため、相続税を中心に行っている実績のある税理士事務所・税理士法人と契約し、サポートを受けることをおすすめします。税理士に依頼することで、特例などをうまく選択し、結果として相続税の税額を低く抑えることができる場合もあります。

広島相続税相談テラスでは初回の相談はサービスで無料で対応しております。相続に関するお悩みがある場合は支援いたしますので、ぜひお気軽にお電話やメール等でご連絡ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい