相続税は、相続した財産の額によって収める額が異なります。
原則として、受け継ぐ財産が多いほど収める相続額の額も高額になります。
そのため、「相続税を支払う現金が足りない」「不動産ばかり相続してしまい納税資金を準備できない」と悩む方は珍しくありません。
また、相続人同士で遺産分割の話し合いがまとまらず、相続税の納付期限までに手続きが進まないケースもあります。
相続税には申告・納付期限が定められているため、資金不足や手続きの遅れを理由に放置すると、延滞税などの負担が発生する場合もあるため、注意が必要です。
なお、事情があって相続税が払えない場合でも、延納や物納などの制度を利用できる場合があります。
状況に応じた対処法を知り、早めに対応することが必要です
この記事では、相続税が払えない主な原因や対処法、相続放棄との関係について詳しく解説します。
相続税が払えないのはなぜ?主な原因を解説
相続税が払えないのには、様々な理由があります。
相続財産の内容や相続人の状況によって異なりますが、原因を知っておけば対策も可能です。
ここでは、相続税が払えなくなる主な原因を紹介します。
相続財産の多くが不動産で現金が少ない
相続税が払えない理由として最も多いのが、相続財産の大半を不動産などすぐに換金できないものが占めているケースです。
例えば、自宅や賃貸アパート、土地などを相続した場合、財産評価額は高くても、すぐに納税へ充てられる現金が十分にあるとは限りません。
相続税は原則として現金で納付する必要があるため、不動産を多く相続した方ほど納税資金の確保に悩むケースが珍しくありません。
特に都市部では土地価格が高く評価されやすいため、想定以上の相続税が発生することもあります。
不動産を売却すれば納税資金を準備できる場合もありますが、思い入れのある自宅や、収益を生み出している不動産をすぐに手放すことが難しい場合もあるでしょう。
被相続者名義の不動産を多く所有している場合は、相続が発生する前から財産の内容を把握し、納税資金をどのように準備するか家族で話し合っておくことが大切です。
相続税が高額になってしまった
相続税が払えない原因として、想定よりも税額が高くなってしまうケースも珍しくありません。
相続税は、相続財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額をもとに計算されます。
相続財産が多い場合や、不動産・株式など評価額の高い財産を多く相続した場合は、納付しなければならない相続税も高額になりがちです。
また、「基礎控除があるから相続税はかからないと思っていた」「土地の評価額が想像以上に高かった」といった理由で、想定外の納税額になるケースもあります。
相続税額が高額になれば、納税資金を短期間で準備するのはむずかしくなるでしょう。
相続が発生した後に慌てないためにも、相続財産の内容や評価額を早めに確認し、おおよその相続税額を把握しておくことが重要です。
遺産分割や相続手続きが難航している
遺産分割や相続手続きが思うように進まない場合も、相続税が払えない原因となります。
相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納付しなければなりません。
しかし、相続人が複数いる場合は、遺産分割協議がまとまるまで時間がかかることがあります。
例えば、「誰が不動産を相続するか決まらない」「相続人同士の意見が合わない」といった理由で話し合いが長引くと、納税資金を準備できないまま期限を迎えてしまうケースも珍しくありません。
また、相続財産の調査や評価、必要書類の収集などにも時間がかかるため、相続手続きを後回しにすると納税準備が間に合わなくなる場合もあるでしょう。
相続税の納付期限は原則として延長されないため、相続が発生したら早めに財産を確認し、相続人同士で話し合いを進めることが大切です。
必要に応じて税理士などの専門家へ相談すると、スムーズに手続きを進められるでしょう。
相続税が払えない場合でも相続放棄はできる?
相続税を支払えない場合、「相続放棄をすれば相続税も支払わなくて済むのでは」と考える方もいるでしょう。
しかし、相続放棄には期限や条件があり、状況によっては希望どおりに手続きできない場合があります。
ここでは、相続放棄と相続税の関係について解説します。
相続放棄をすると相続税はどうなる?
相続放棄とは、被相続人の財産や負債を一切引き継がない手続きです。
相続放棄が認められると、初めから相続人ではなかったものとみなされるため、基本的には相続税を納付する義務もなくなります。
ただし、相続放棄をした後でも、生命保険金や死亡退職金など、受け取った財産の種類によっては相続税の課税対象となる場合があります。
また、相続放棄は家庭裁判所へ申述する必要があり、「相続税が高いから」という理由だけ申請したり、相続放棄を取り消したりすることはできません。
そのため、相続放棄を検討する際は、財産だけでなく負債や今後の生活への影響も踏まえて慎重に判断することが重要です。
相続放棄できるケース・できないケース
相続放棄は、原則として「自己のために相続が開始したことを知った日から3か月以内」に家庭裁判所へ申述しなければなりません。
期限を過ぎると、原則として相続放棄は認められなくなります。
また、相続財産を処分したり使用したりすると、相続を承認したと判断される場合があるため注意が必要です。
例えば、相続した預貯金を自由に使ったり、不動産を売却したりすると、相続放棄が認められない可能性があります。
一方で、相続財産の調査に時間がかかるなど、やむを得ない事情がある場合は、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられるケースもあります。
相続放棄を検討している場合は、期限を過ぎる前に弁護士や税理士へ相談し、自身の状況に合った対応を確認しましょう。
相続放棄をする際の注意点
相続放棄をすると、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含めて一切相続できません。
そのため、自宅や預貯金など受け継ぎたい財産があっても取得できなくなる点には注意が必要です。
また、相続放棄をすると、次順位の相続人へ相続権が移るため、兄弟姉妹などほかの親族へ影響が及ぶ場合があります。
相続税が払えないという理由だけで相続放棄を選択すると、後悔するケースもあります。
相続財産の内容や相続税額、利用できる制度などを確認したうえで、本当に相続放棄が適切か慎重に判断しましょう。
相続税を払えないまま放置するとどうなる?
相続税を払えないからといって、そのまま放置することは避けましょう。
期限までに申告・納付を行わないと、税金以外の負担が増える可能性があります。
延滞税や加算税が発生する可能性がある
相続税を期限までに納付しなかった場合は、延滞税が発生します。
また、申告漏れや期限後申告などがあると、加算税が課される場合もあります。
本来支払う相続税よりも負担が大きくなる可能性があるため、期限内の対応を心掛けましょう。
財産を差し押さえられる可能性がある
納税の督促を受けても支払いを行わない場合は、預貯金や不動産などの財産が差し押さえられることがあります。
差し押さえになると、財産を自由に処分できなくなるため、生活や今後の資産運用へ影響を及ぼす可能性があります。
督促や税務署から連絡を受ける場合がある
相続税を納付しない状態が続くと、税務署から督促状が送付されるほか、電話や通知などで納税を求められる場合があります。
通知を無視すると状況が改善することはありません。納税が難しい場合は、早めに税務署や税理士へ相談することが大切です。
相続税が払えない場合の対処法
相続税が払えない場合でも、状況によっては利用できる制度や資金を準備する方法があります。
置すると延滞税や差し押さえなどのリスクがあるため、利用できる制度を確認し、早めに対応することが大切です。
延納制度を利用する
延納制度とは、一定の要件を満たした場合に、相続税を分割で納付できる制度です。
相続税は原則として現金で一括納付しますが、一括で納付することが困難な場合は、税務署へ申請して認められれば延納を利用できます。
ただし、延納には担保の提供が必要になる場合があるほか、利子税が発生する点にも注意が必要です。
また、申告期限までに申請しなければ利用できないため、納税が難しいと感じた時点で早めに手続きを進めましょう。
物納制度を利用する
延納でも相続税を納付できない場合は、物納制度を利用できる可能性があります。
物納とは、現金の代わりに土地や建物など一定の相続財産で相続税を納める制度です。
ただし、すべての財産を物納できるわけではなく、国が定める要件を満たす必要があります。
また、物納は審査に時間がかかることもあるため、利用を検討している場合は税理士へ相談しながら準備を進めると安心です。
相続財産を売却して納税資金を準備する
相続した不動産や株式などを売却し、納税資金を準備する方法もあります。
相続税は現金で納付するのが原則であるため、預貯金が不足している場合は、相続財産を売却することで納税資金を確保できるケースがあります。
ただし、不動産は売却までに時間がかかることも少なくありません。
また、売却価格によっては希望どおりの資金を準備できない可能性もあるため、余裕を持って手続きを進めることが大切です。
金融機関から借り入れる
納税期限までに資金を準備できない場合は、金融機関から融資を受ける方法もあります。
相続税の支払いを目的としたローンを取り扱う金融機関もあるため、一時的に資金を借りて納税し、その後に相続財産を売却して返済するケースも見られます。
ただし、借入には利息や返済計画を考慮する必要があります。無理のない返済ができるかを十分に確認したうえで利用を検討しましょう。
税理士へ早めに相談する
相続税が払えないと感じたら、できるだけ早く税理士へ相談することをおすすめします。
税理士は、延納や物納が利用できるかの判断だけでなく、相続税額の計算や特例の適用なども含めてアドバイスを行っています。
早めに相談することで、自分に合った対処法を選択しやすくなり、余計な負担を避けられるでしょう。
相続税を払えないまま放置するとどうなる?
相続税を払えないからといって、そのまま放置することは避けましょう。期限までに申告・納付を行わないと、税金以外の負担が増える可能性があります。
延滞税や加算税が発生する可能性がある
相続税を期限までに納付しなかった場合は、延滞税が発生します。
また、申告漏れや期限後申告などがあると、加算税が課される場合もあります。
本来支払う相続税よりも負担が大きくなる可能性があるため、期限内の対応を心掛けましょう。
財産を差し押さえられる可能性がある
納税の督促を受けても支払いを行わない場合は、預貯金や不動産などの財産が差し押さえられることがあります。
差し押さえになると、財産を自由に処分できなくなるため、生活や今後の資産運用へ影響を及ぼす可能性があります。
督促や税務署から連絡を受ける場合がある
相続税を納付しない状態が続くと、税務署から督促状が送付されるほか、電話や通知などで納税を求められる場合があります。
通知を無視すると状況が改善することはありません。納税が難しい場合は、早めに税務署や税理士へ相談することが大切です。