氏名:税理士:藤田 正則(ふじた まさのり)
資格:税理士(税理士登録番号109481号)
AFP(日本FP協会)
専門分野:相続税、資産税、地主の節税対策
出身:広島県広島市
趣味:海外旅行
お客様に一言:税金の計算や支払いに不安のある方は気軽にご相談ください
相談者は、広島市在住の50代男性Aさん
Aさんの弟が大阪で1人暮らしをしていたが死亡
相続人は、Aさんと妹のBさん
金融資産200万円
死亡保険金1,000万円
合計1,200万円
弟の部屋が俗に言うゴミ屋敷状態となっており、片付け費用等が200~300万円必要。
又、カ-ド会社からの請求書が何通か届いており未払いの状態で判明している金額は既に100万円位。
今後もカード会社からの借金等が出てくる可能性もありどうすればいいのか悩まれていました。
今後も借金が増える可能性が高い事などを考慮して、相続放棄(注1)する事を提案しました。
Aさんも最初は、相続放棄を検討されたいたようですが死亡保険金1,000万円があるので相続放棄をすると保険金が受け取れないのではないかと躊躇されていました。
ここで勘違いされている方が非常に多いのですが、死亡保険金は民法上の財産(注2)に該当しない為、当記事のケースのように相続放棄を行った人でも死亡保険金は貰う権利があります。
この事を説明すると非常に喜び安心され、相続放棄をする事になりました。相続は当事者として人生で何度も経験することはありませんので、知識がないのは当然です。正しい情報がわかりやすく解説されているサイトや税理士などの専門家にしっかりと確認することが大切です。
又、今回、相談に来られた時点で、預金の解約を行っていなかったのが良かったです。
その理由は、被相続人が亡くなったあとに家族が葬式や当面の生活資金としてお金が必要となり、預金の解約を行っていた場合には、遺産相続について単純承認(注3)したとみなされ、原則、相続放棄が認められなくなりますので注意点として覚えておきましょう。また、相続放棄は被相続人が亡くなった時から3ヶ月と、期限も短いため、すぐに手続きを始める必要があります。
その後、家庭裁判所から相続放棄が認められ、死亡保険金だけを受取り無事終了しました。
尚、預金は、当然相続する事は出来ませんでしたが、カ-ド会社への借金等の債務の支払いも免状され支払いませんでした。
又、法律的な義務ではありませんが、道義的にカード会社等には相続放棄の事について報告する事としました。
最後に、相続放棄の可能性がある場合には、安易に預金などの解約手続きは絶対にしないでください。
生命保険はみなし相続財産として受け取ることができるため、相続人間で差をつけたい場合などに有効な手段です。また、契約者の法定相続人×500万円まで、非課税の枠を適用することができます。課税対象の財産が基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を超えている方は相続税対策としても有効です。場合によっては非課税枠を使えば税金がかからないということもあるでしょう。相続税を申告する必要がなくなりますので、妻や子が申告書を作成する手間も省くことができます。
生命保険は金融機関などの窓口で契約することも可能です。生命保険には保険料が一時払いのものや平準払いのものなど様々なタイプがあり、ニーズに合った商品を選ぶことができます。
ただし、極端な配分にして取得する割合に大きな差がでた場合、親族間でトラブルに発展するケースもありますので注意しましょう。また、土地や建物など不動産を特定の人に遺したい場合は生命保険では設定することができませんので、遺言を作成する必要があります。
生命保険は生前贈与と並び、簡単で確実な相続対策ですので、相続税がかかる場合は、生命保険の契約を検討することをおすすめします。相続税がかかるかどうかわからない方は財産を一覧にしてそれぞれの評価額を記載していきましょう。
生命保険を活用した相続対策を検討している方は、自分一人で考えるのではなく、相続や贈与関連の実績が数多くある税理士のサポートを受けることをおすすめします。
(注1) 相続放棄(民法第915条)
相続の開始があったこと知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に行う。
(注2) 生命保険金(最高裁平成14年11月5日判決)
生命保険金は、指定された受取人に支払われる為、指定された受取人の固有の財産となる。したがって、原則、相続財産には含まれない。
(注3) 単純承認(民法第921条1号)
相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認したものとみなされる。