氏名:税理士:藤田 正則(ふじた まさのり)
資格:税理士(税理士登録番号109481号)
AFP(日本FP協会)
専門分野:相続税、資産税、地主の節税対策
出身:広島県広島市
趣味:海外旅行
お客様に一言:税金の計算や支払いに不安のある方は気軽にご相談ください
広島市在住の40代の男性Aさん
相続人はAさんと弟のBさん
被相続人はAさんの母
預金 2,000万円
有価証券 1,000万円
死亡保険金 1,000万円
合計 4,000万円
Aさんはお母様が亡くなられて四十九日後に来所されました。
色々お話を伺うとAさんの相談内容は次の様な事でした。
① 相続の手続きは何をしなければいけないのか?
② 相続の手続きには期限があるのか?
➂ ①や②の手続きをしなかった場合や期限に遅れた場合にはどうなるのか?
死亡診断書を受け取り、死亡届を提出したら、まず初めに、被相続人(亡くなった人)の資産を把握する事です。故人と取引のある金融機関の預貯金の残高や証券会社の株式、不動産、生命保険契約、ゴルフ会員権、金などの現物資産を調査して各種財産を確定する必要があります。財産はプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も調べておく必要があります。確認できた財産は何度も確認することになりますので、一覧の表にして保管しておきましょう。
銀行の預金や投資信託などの残高を確認する場合、サービスで発行してもらえる明細と手数料を支払って発行できる明細があります。取り急ぎ残高を確認するだけであれば、無料で発行してもらえるもので十分ですので、金融機関に連絡して依頼しましょう。死亡保険金が受け取れる生命保険がある場合は早めに保険会社にも連絡しておきましょう。
また、戸籍によって相続人を確定させる必要があります。出生から亡くなるまでの戸籍謄本や除籍謄本を収集して、配偶者や子供など法定相続人を公的な書類で確認し、財産を相続する権利があることを対外的に証明する必要があります。戸籍謄本は本籍地のある市区町村の役場で取得することができますし、司法書士に依頼して収集することも可能です。
その後、公正証書遺言や自筆証書遺言などの遺言がない場合、被相続人の遺産について、民法で定められた法定相続割合を基準に相続人同士で遺産の分割について話し合いを行い、相続人全員で財産の分け方
について同意し、遺産分割協議書(注1)を作成する必要があると説明しました。
預金など財産の名義の変更や解約には、必ずしも法定相続分通りに分割するとは限らないため、遺産分割協議書が必要になるからです。
次に、具体的な相続手続きについては、相続財産の内容や相続人などによって様々ですが、別紙の相続手続きの一覧表を参照しながらAさんに該当するものをしっかりチェックして頂き、Aさんに該当する相続手続きの洗い出しをしてもらいました。相続手続きは様々なことを行う必要があります。そのため、まずはやるべきことを一覧で洗い出し、一つずつ確実にこなしていくとスムーズに手続きが進めることができます。業務として相続に携わっている税理士等の専門家に相談することで、役所への届出など必要なことや注意点を洗い出すことができます。
また、上記②③の相談内容については、相続税の申告(注2)や相続放棄行う場合には期限があるとご説明しました。遺留分の放棄は生前に行うことができますが、相続放棄や限定承認の手続きは被相続人の死亡後にしかすることができません。
今回は、お母様の遺産が相続税の基礎控除額(注3)以下だったので相続税の申告の必要がありませんでした。基礎控除の額は3,000万円+法定相続人×600万円で計算できます。
また、借金などの負債がなかったので、ご家族には相続の放棄の必要もないとご説明しました。借金がある場合、財産を処分すると単純承認したことになりますので、注意が必要です。
仮に、相続税の申告が必要な場合には、期限に遅れると延滞税などの追加の税金を請求される事になります。
また、相続放棄は、原則、相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内に行わなかった場合には、出来なくなるため、多額の債務がある可能性がある場合は早いタイミングで確認することが大切である事も説明しました。
その後、Aさんは、財産の把握を行い、弟Bさんと話し合い、遺産分割協議書を作成し、相続手続きを完了する事が出来ました。
上記の相続手続き一覧表がとても参考になった様です。
相続は一般的に一生のうち何回も経験する事ではないので何をすればいいのかわからず戸惑うのが普通だと思います。
分からない事が分からないのではないでしょうか?他にも被相続人に所得があった場合、4ヶ月以内に所得税を支払うために準確定申告をする必要です。また、公正証書遺言は公証役場で公証人が遺言者に印鑑証明書を提出させて、本人が書いた有効な遺言であることを証明しますが、自筆の遺言があれば家庭裁判所で検認を受ける必要となります。状況によって必要な手続きも異なりますし、手続きが終わるとほとんどの方が思った以上に大変だったといわれます。
当記事で解説したように、早めに専門家に相談すれば、状況に応じて解決できるケースが多いです。法律は知らなかったでは済まされないし損することもありますので遠慮せずに気軽に相談する事をお勧めします。
遺産相続の手続きは、年金事務所での国民年金や厚生年金の手続きや法務局での不動産の登記などさまざまな場所で行う必要がありますので、仕事をしている人にとって大変な作業です。また、相続税の申告の有無によって大きく負担が変わります。相続税の申告をする場合は自宅の土地や建物など各財産の評価も行う必要がありますので、高度な知識も必要となりますので、専門家に代行してもらえるところは依頼するとよいでしょう。
また、相続税の申告は10ヶ月以内に申告書の作成と納付を終わらせる必要があります。加入しているサービスの退会手続きや年金・健康保険の手続き、公共料金などの手続きもあり、それぞれスケジュールも気にしながら行わなければならないため、自分で行うことが不安な場合、費用はかかりますが、専門家である税理士のサポートを受けて相続税の申告手続きをすすめることをおすすめします。税理士に依頼することで、特例の利用や財産の記載もれがなくなるなどメリットも多くあります。特に勤務先と被相続人の住所地が異なる場合は、手間も多くなりますので、費用面を勘案して自分で行うか、負担を軽減するために税理士に依頼するか選択しましょう。
できれば、生前に準備をして、対策を行っておくとなおよいです。その理由は生前に相談することで、生前贈与や遺言の作成などさまざまなアドバイスを受けることができるからです。不動産を評価するための路線価や固定資産税評価は毎年変わりますが、大きく変わることはありませんので、税金がかかりそうかどうか、かかるとしたらどれくらいかかるかを現在の価格で把握することができます。詳細に把握できなくても相続税の目安がわかれば、親族も事前に対策を検討しやすくなりますし、時間があるとじっくりと時間をかけて判断することが可能です。
(注1)遺産分割協議書
被相続人の遺言書が無い場合には、相続人が遺産をどのように取得するのかを相続人全員で話し合い決めなければなりません。遺産分割協議書とは、その話し合いで合意した内容をまとめた書類です。
尚、遺産分割協議には相続人全員が署名し押印することが必要です。
(注2)相続税の申告(相続税法第27条):国税庁HP:NO.4205
1.相続税の申告と納税は、相続又は遺贈により取得した財産(被相続人の死亡前3年以内に被相続人から贈与により取得した財産を含みます。)及び相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の額の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える場合に必要です。
その遺産に係る基礎控除額の範囲内であれば申告も納税も必要ありません。
2.相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。
例えば、1月6日に死亡した場合にはその年の11月6日が申告期限になります。
なお、この期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、これらの日の翌日が期限となります。 申告期限までに申告をしなかった場合や、実際に取得した財産の額より少ない額で申告をした場合には、本来の税金のほかに加算税や延滞税がかかる場合がありますのでご注意ください。
相続税の申告書の提出先は、被相続人の死亡の時における住所が日本国内にある場合は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。財産を取得した人の住所地を所轄する税務署ではありません。
3.相続税の納税は、上記の申告期限までに行うことになっています。
(注3)相続税の基礎控除額(相続税法第15条)
相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額から、3,000万円と600万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額を控除する。