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相続税対策にもつながる生前贈与でおさえておくべきポイント

2021年12月14日

相続税の節税について考えた際、よく検討されるのが生前贈与です。ここでは、生前贈与の詳細と、生前贈与と比較されることが多い相続税について解説します。

適切な対策を行うことで、実際に支払う税金を大きく減らすことができます。場合によっては財産を基礎控除未満にして、相続税の申告手続きの負担を無くすこともできるでしょう。相続税について知識を深めたい方はぜひ参考にしてください。

生前贈与とは?

生前贈与とは、存命中に財産を別の個人に無償で渡すことをいいます。
この場合に贈与を受ける方は贈与税を支払わなければなりません。年間に一定額を贈与する方法を暦年贈与といいます。ただし、1月1日から12月31日までの1年間で年間110万円以内の場合は贈与税の課税対象外です。110万円を超える場合は贈与税がかかります。

尚、生前贈与は法定相続人以外にも財産の引き継ぎは可能なので、非課税で生前に財産を少なくすることによりうまく相続税の節税ができるメリットがあります。将来の相続税が気になる方は積極的に活用してください。

110万を超える場合、課税されるので、申告が必要です。多額の財産を持つ資産家の方が110万円を贈与する場合、毎年できる金額は少しずつですが、10年以上の長い期間をかけて、早い時期から方針を定めて計画的に贈与をすることが必要です。

現行制度では贈与をしたあと3年以内の贈与者が亡くなった場合は、相続財産に繰り戻されます。2024年以降は繰り戻しの期間が7年に延長される予定です。相続開始の時期はわからないため、早めから対応して資金を贈与することが必要となります。資産移転を早めるためには贈与をする人の数を増やすのも有効です。例えば子どもだけでなく、孫や子の配偶者にも贈与をすることで、子どものみに贈与をするよりも多く贈与をすることが可能です。

贈与契約は双方の口頭での意思表示で契約が可能ですので、必ず書面を残さないといけないわけではありませんが、書面を遺すことで、万が一税務署に調査を受けた場合でも、しっかりと対応することが可能です。税務調査で調査をされて財産の申告漏れなどがあった場合、加算税を請求されるリスクがあります。

なぜ贈与税が相続税とよく比較されるのか?

2つが比較されることが多いのは、どちらも相続税の節税につながるからです。相続税はできるだけ抑えて次の世代に財産を遺したいと考えている方が多いことでしょう。

相続する財産の合計が基礎控除以下であれば、相続税がかかることはありませんので、生前贈与による相続税対策は特に必要ありません。しかし、基礎控除を上回る場合は生前贈与を検討してみると良いでしょう。相続税、贈与税にはそれぞれ基礎控除があり、税率も異なります。このあたりも含めてどうすれば最も節税に繋がるのか考える必要があります。

相続税は被相続人の財産によって税率が異なります。例えば、将来の相続税の税率が30%の方の場合には、贈与税の税率30%以下の範囲(10%、15%、20%)で生前贈与を行えば、単純に税率の差が相続税の節税に繋がります。

また、夫婦間で財産を相続する際は配偶者控除を活用できるため、あまり相続税はかかりません。相続税と贈与税の課税制度を理解することで資産を上手に移転することができます。

暦年贈与以外の相続税対策

生前贈与以外にも様々な相続税対策があります。おすすめの対策と注意点をご紹介します。

生命保険の非課税枠の活用

生命保険はみなし相続財産として相続税の対象ですが、法定相続人1人につき500万円までの非課税枠があります。非課税枠を活用することで、税額を抑えて財産を受けることができます。

一括贈与の特例を使う

年間一定額を贈与する暦年贈与の他に贈与の目的や受贈者側の状況を考慮して、一定額を一括で贈与できる制度があります。使える特例を活用して贈与を行っていけば、暦年贈与よりも多くの財産を早く移転することが可能です。

例えば、父母や祖父母等直系尊属から孫への教育資金の一括贈与の特例は教育資金に限り、1,500万円まで非課税で贈与をすることが可能です。他にも結婚・子育て資金であれば、1,000万円まで、一定の要件を満たす配偶者への住宅贈与であれば2,000万円まで、子が居住する用の住宅の購入資金用の贈与であれば最大1,000万円まで一括贈与をすることができるなど、対象の特例を活用することで効果的にに相続財産を移転することが可能です。

ただし、一括贈与の特例を活用し、大きな金額の贈与をすることで、法定相続分とは大きく異なる財産配分になることもありますので、遺産分割協議の際に注意が必要です。負担を軽減することができても、遺産相続で揉めるようなトラブルがあっては、相続人にとって大きな負担となりますので、事前に分け方について相続人間で話し合ったり、遺言を書いておいたりするなど、対策も併せて検討しておきましょう。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は2,500万円まで、一括贈与が可能で、相続が発生した際に相続財産に加算され、相続税として精算することができる制度です。財産の評価は贈与を行って受贈者が取得したタイミングとなります。この制度を使う場合、金銭よりも贈与した時点より将来値上がりする可能性が高い株式などの財産や収益を生む投資用の不動産など特定の財産を贈与する際に有効です。

相続時精算課税制度は暦年贈与との併用は不可で、選択して適用することになり、暦年贈与との併用はできませんので、暦年贈与とどちらが税金を抑えることができるか、財産の内容にもよりますので、二つの制度を比べて、デメリットも理解したうえで利用するようにしましょう。

節税は慎重に検討しなければ損をする可能性がある

いかがだったでしょうか。
今回、節税に役立つ可能性がある生前贈与についてご紹介しました。

相続税についてご理解いただけたかと思いますが、人によって親族との関係や財産の種類も異なりますので、実際に自分のケースであてはめて考えるのは簡単ではありません。

生前贈与したほうが良いのか、どの程度贈与すれば最も効率的かはケースによって異なります。自分で判断するのはなかなか難しいため、生前贈与するかどうかは専門家である税理士に相談して決めると不安を解消できるでしょう。税理士に依頼することで費用はかかりますが、状況に応じて有効な対策を打つことで費用以上に納税する金額を減らすことができる例も多くあります。

相続税や贈与税は頻繁に税制改正がありますので、相続や贈与を業務として専門的に行っており、実績のある税理士や税理士法人のアドバイスを受けるようにしましょう。

贈与をするか否かの判断は、まずは各財産の評価額をまとめて一覧の表を作成して相続税のシミュレーションをして、確認しておくことをおすすめします。金融機関に預けている預貯金や株式、投資信託、土地・建物などの不動産、金などの現物資産もそれぞれ評価を行って、相続税がかからないようであれば、生前贈与をする必要はありません。評価の方法が分からない場合は、資料を持って税理士に相談するようにしましょう。

基礎控除を超えるようであれば、家族とも相談しながら税額を抑えるために贈与を検討してみるとよいでしょう。遺産を把握しておくことは、相続税が相続発生から10ヶ月以内に提出する必要があり、期限も短いため、事前準備としても有効です。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい