基礎控除を超える財産を保有する人が亡くなった場合、相続税の申告・納付が必要です。相続税の納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内です。「まだまだ時間があるから納税は急がなくて良いだろう」と考えている方が多いかもしれません。気持ちは理解できますが、確実に期限内に税金を納めるためにできるだけ早く手続きを始めることをおすすめします。10か月を超え、税務調査を受けてしまうと、無申告加算税や延滞税などのペナルティを課されるうえ、配偶者の税額軽減を始めとする多くの特例を受けることができなくなるなどデメリットが大きいからです。以上の他にもいくつかの理由があります。
この記事では、相続・遺贈に関する各手続きを迅速に行いたい理由を解説しています。以下の情報を参考にすれば、時間的に余裕があるように見えてもゆっくりと構えていられない理由がわかるはずです。申告や納付の期限が気になる方は参考にしてください。
なぜ急いで対応を進めるべきなのか
申告期限ギリギリになってから手続きを始めると、あるいはゆっくりとしたペースで手続きを進めていると、相続税の申告期限に間に合わないことがあります。その理由として、以下の4点が挙げられます。
1.遺産をリストアップするのに手間がかかるから
相続税の申告で欠かせないのが、遺産の内容や評価額を正確に把握し、一覧にすることです。この点が明らかにならないと、遺産分割協議をすすめることも、相続税を計算することもできません。
したがって、相続人が資産の内容を把握していない場合、遺産の調査が必要になります。調査を行うべきタイミングは、相続が始まった日から3カ月以内が原則です。この期間をすぎると、相続の放棄や限定承認ができなくなるからです(期間の延長は可能です)。
調査の対象になる遺産として挙げられるのが、預貯金・株式・投資信託・不動産・有価証券・生命保険などです。遺産調査は基本的に相続人1人から行えます。取引がある可能性がある金融機関や実際に郵送物が届いている金融機関には、窓口や電話などで口座の有無や金額を調べるようにしましょう。ただし、被相続人の戸籍謄本(死亡が記載されているもの)、被相続人と相続人(調査する人)の関係を示す戸籍謄本、本人確認書類などが必要です。具体的な調査方法は遺産の種類で異なります。
例えば、預貯金は通帳やキャッシュカードから金融機関を把握して残高証明書を発行してもらうことなどで調査できます。各遺産の調査方法を記載すると膨大な量になるため割愛しますが、遺産を見つけること自体が難しく、詳細を把握するとなるとさらに手間がかかります。また、預貯金や株式などのプラスの財産だけでなく、債務がある場合もありますので、あわせて確認しておきましょう。
調査で判明した遺産は、財産目録にまとめます。財産目録は遺産分割協議や相続税の申告などで必要になる書類です。遺産を把握するだけでもさまざまな手続きを行わなければならないため、迅速に対応する必要があるのです。
また、財産に漏れがあると、相続税も加算されますので、申告をやり直す必要があり、注意が必要です。
2.相続人が多いと意見がまとまらないから
遺言がない場合、遺産は一時的に相続人全員の共有する財産となります。その後、相続人間で遺産の分配について協議することになります。具体的には、各相続人がどの遺産を取得するか、どのように遺産を分割するかなどを決めていくことになるのです。これを遺産分割といいます。遺言がある場合は、基本的に遺言に従うことになりますが、遺留分を侵害している場合など、必ずしも遺言通りにならないこともあります。
基本的には、法定相続分に基づき分割することになりますが、家族の事情によって必ずしもこの通りに分けなければならないわけではありません。相続人全員の合意があれば、割合を自由に変更できます。また、遺産の中には、土地などのように価値はあっても簡単には現金化ができないものもあります。
したがって、遺産分割について相続人間で意見がまとまらないことは少なくありません。遺産分割協議が整うまで時間がかかるケースが有るため、早めに対応する必要があるのです。
3.申告・納付する前の手続きが多いから
相続が発生するとさまざまな手続きが必要になります。主な流れは次のとおりです。
【主な流れ】
- 相続人調査と法定相続人の確定
- 遺産調査
- 相続の放棄・限定承認の手続き
- 遺言書の確認
- 相続財産の確定と評価
- 遺産分割協議
- 相続税申告書の作成と提出
以上に加え、被相続人の準確定申告も必要になります。手続きの中には、専門的な知識を要するものがあります。例えば、相続の放棄・限定承認の手続きは、相続が始まったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申し出なければなりません。相続の放棄は相続人1人で、限定承認は相続人全員で行います。
財産の評価なども専門的な知識が必要です。すべての手続を10カ月以内に行わなければならないため、時間に余裕があっても急ぐ必要があるのです。
4.申告・納付する際に提出する書類が多いから
さまざまな書類を作成したり取得したりしなければならない点も、準備を早く進めたい理由としてあげられます。
具体的な必要書類はケースで異なりますが、次の書類などが必要になります。
【必要書類の例】
- マイナンバーカードを確認できる書類
- 身元確認書類(相続人分)
- 相続が始まってから10日以内に作成した全相続人がわかる戸籍謄本
- 遺産分割協議書のコピーまたは遺言書のコピー
- 全相続人の印鑑証明書
- 相続時精算課税制度を利用した場合は被相続人と同制度を利用した人の戸籍の附票の写し
以上に加え、適用を受ける特例や遺産に関連する書類の提出も求められます。これらの書類の準備にも時間がかかるため、早めの対応が求められるのです。万が一、税務署に提出する特例に関する資料が用意できず、申請ができない場合、必要以上に高い額の税金を支払うことになります。
相続税の申告は税理士に相談
いかがでしたでしょうか?今回は、相続税の手続きを早めに始めたい理由を解説しました。納付期限に余裕があっても、油断しすぎないことが重要です。家族が亡くなったあとは何かと忙しいものです。いつかやろうと思っているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。
申告期限を過ぎるとペナルティを課されます。延納という方法もありますが、利子税が請求されますので、多くの税金を支払うことになります。相続税でトラブルを避けたい方は、税務の専門家である税理士に早めに相談してみてはいかがでしょうか。早めに相談を行っておくことで、安心して手続きを進めることができます。
税理士にも専門分野がありますので、相続税法にくわしく、申告業務の実績がある税理士に依頼することをおすすめします。
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