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相続に関連する手続きの期限と各手続きの基本的なポイント

2021年12月19日

「相続関連の手続きが複雑すぎて、何をいつまでに行えばよいかわからない」と悩んでいませんか。さまざまな手続きがあるうえ、期限を設けられているもの、期限を設けられていないものがあるため、専門的な知識がないと混乱してしまうケースが多いでしょう。期限を過ぎると、ペナルティを課されることや手続きを行えなくなることがあるため注意が必要です。

お困りの方のために、相続関連の手続きの中から期限があるものをピックアップして一覧にまとめています。さらに、各手続きのポイントも簡単に解説しています。以下の内容を参考にすれば、いつまでに何をすればよいかがわかるはずです。手続きの期限が気になる方は参考にしてください。

期限のある相続手続き一覧

相続関連の手続きの中には、期限を設けられているものがあります。具体的な手続きと期限は次のとおりです。

期限(相続の開始から) 手続き
3カ月以内 相続の放棄・相続の限定承認
4カ月以内 被相続人の準確定申告
10カ月以内 相続税の申告と納税
1年以内 遺留分侵害(減殺)請求
3年以内 生命保険金の請求
5年10カ月以内 相続税の還付請求

3カ月以内:相続の放棄・相続の限定承認

相続の放棄は被相続人の全財産(プラスの財産・マイナスの財産)を承継しないこと、相続の限定承認は被相続人のプラスの財産の範囲内で銀行への住宅ローンなどの借金や各種債務などマイナスの財産を引き継ぐことです。相続が始まったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申し出なければなりません。相続の放棄は、法律上は行う者が単独で行うことが可能ですが、放棄をすることで、他の相続人に影響があり、後々問題が生じるケースがありますので、なるべく他の相続人に連絡をして放棄することを通知しておいた方がよいでしょう。

相続の限定承認は相続人全員で合意したうえで申請する必要があります。そのため、市役所などで戸籍謄本を発行してもらい、相続人を確定させておく必要があります。また、人数が多い場合は一般的に時間がかかるケースが多いです。兄弟姉妹やその子が相続人となるケースは相続人も多くなるうえに、一部の人とは住所や連絡先がわからないということも多いです。

そのため、親族と早めに連絡し、話し合い、それぞれの考えを聞いておく大切です。期限に間に合わない事情がある場合は、家庭裁判所に延長の申請をすることができます。

ちなみに、単純承認(全財産を承継)の場合、申し出は必要ありません。

4カ月以内:被相続人の準確定申告

被相続人が個人事業主などの場合、相続人が代わって所得税の確定申告を行います(=準確定申告)。期限は、前年分・本年分とも相続が始まったことを知った日の翌日から4カ月以内です。相続人が複数いる場合は、各相続人が連署で準確定申告書を提出し税金を納めます。

被相続人に所得がない場合や収入が国民年金のみの場合は原則、準確定申告は不要です。

10カ月以内:相続税の申告と納税

相続税の申告と納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内です。令和3年2月1日に亡くなった場合の期限は令和3年12月1日までに完了させる必要があります。期限が土曜日・日曜日・祝日のときは、その翌日が期限になります。申告・納税の対象になるのは、相続税の課税対象になる財産の合計が遺産にかかる基礎控除を超える方です。

遺産にかかる基礎控除は、「3,000万円+法定相続人の数」で求められます。相続人が妻と長男・長女であれば基礎控除は4,800万円です。課税対象になる財産がこの金額を超える場合、申告と納税の対象になる可能性があります。

不動産の評価は売却する際の価格ではなく、土地は路線価×面積、建物は固定資産税評価で計算します。財産の評価をしないと相続税がかかるかどうかもわかりませんので、まずは預貯金や株式、投資信託、保険などの金融資産もあわせて評価を行うことが重要です。

また、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例を始めとする特例の適用を受けるときも申告が必要になりますが、生命保険の非課税枠の制度を利用することで、相続税がかからない場合は、相続税の申告は必要ありません。

期限内の申告が困難となり、延滞した場合加算税が課されますので、期限内に確実に申告を行う必要があります。どのような財産があるかわからず、期限に間に合わないケースも多いですが、生前に財産の一覧を作成して知らせておいたり、現時点でのシミュレーションをしておくなど対策をしておくと相続人はかなり楽になるでしょう。

1年以内:遺留分侵害請求

公正証書遺言や自筆証書遺言で財産の分割方法について指定がされていても、書かれている内容通りに配分すると遺留分を侵害している場合は、民法で定められた遺留分侵害請求をすることができます。

遺留分侵害請求の時効は、相続の開始を知った日と遺留分の侵害を知った日から1年、または相続開始から10年です。遺留分は、相続人が受け取れる最低限の財産を意味します。遺言で遺留分を侵害された場合、遺留分侵害請求を申し立てられます。相続発生後だけでなく、生前に多額の贈与をしている場合、遺留分侵害額請求できるケースもあります。

遺留分の割合は、法定相続人が直系尊属のみの場合は「被相続人の相続財産×1/3」、これ以外の場合は「被相続人の相続財産×1/2」です。以上の割合に、法定相続分をかけた金額が遺留分額になります。

3年以内:生命保険金の請求

生命保険の保険金を請求できる期間にも期限があります。具体的には、権利が発生した日の翌日から3年が経過すると、被保険者が亡くなったことで支払われる生命保険金を資金化できなくなります。保険法第95条で定められているからです。
このように定められている理由は、一定期間が経過すると事実関係等の調査が難しくなるからと考えられています。

ただし、時効が成立するのは、保険会社が受取人に意思表示をしたときです。したがって、3年を経過していても生命保険金が支払われることはあります。できる限り3年以内に請求し、3年を過ぎている場合も諦めずに請求してみるとよいでしょう。

5年10カ月以内:相続税の還付請求

相続税の還付請求を行える期間は、相続が始まってから5年10カ月以内です。還付請求は、多く納めた相続税を取り戻す手続きといえるでしょう。相続税は納税者が納税額を計算して申告する申告納税方式を採用しています。申告書に記載する内容が誤っていて相続税を多く納めすぎても、その後に税務署が教えてくれることはありません。適切に相続財産を把握・評価したうえで、納税額を計算することが重要です。

相続手続きの期限に注意

いかがでしたでしょうか?今回は、相続や遺産整理に関係する手続きの期限を紹介しました。

期限を過ぎると手続きを行えなくなることやペナルティを課されることがあるため、スケジュールを適切に管理し期限内に終わらせる必要があります。被相続人の死亡後、遺産分割の協議や土地・建物など不動産の評価や法務局での登記、金融機関に預けている預貯金や株式の名義変更など、相続発生後に行うべきことは数多くありますので、しばらく放置しているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。

トラブルなく納税・申告などを済ませたい方は、相続税の計算の方法や手続きについて専門家である税理士に相談して進めるとよいでしょう。国税庁のサイトで調べて自分で行うこともできますが、税理士に申告をお願いしておくと安心です。

業務として税理士に申告を依頼する場合は費用がかかるというデメリットはありますが、特例や控除についても間違えなく活用してもらうことができますし、税務調査が入った際も対応について相談することができます。

初回の相談はサービスで応じているケースが多いです。実際に依頼した時にどれくらいの費用がかかるのか、確認してから依頼するようにしましょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい