2021年、贈与税に関する改正が発表されました。暦年贈与制度の廃止も噂されており、課税制度の変更に伴う具体的な内容や影響が気になっている方は多いでしょう。
今回の税制改正で、教育資金に係る贈与税の非課税制度など、身近な制度のルールが変更されています。内容を確認しておかないと、想定外のトラブルに発展するかもしれません。
資産が多いく相続税の基礎控除を超えそうな方にとって、贈与によって、先に相続人に相続財産を移転することは大きな節税効果があります。そのため、贈与税の税制改正は重要です。この記事では、2021年に行われた贈与税に関する改正のポイントを紹介しています。
贈与税は税制が頻繁に改正されます。贈与税には教育資金や住宅資金の贈与を一括で贈与できるものなど、代表的な特例があります。今後、教育資金や住宅資金の贈与の特例の利用を検討している方は、適切に対応するため確認しておきましょう。
教育資金に係る贈与税の非課税制度
2021年の法改正により、適用期限が令和5年3月31日まで延長されました。また、相続税の課税対象についても一部の変更措置が加えられています。
同制度では、契約期間中に贈与者にあたる直系尊属が亡くなった場合、管理残額(教育資金非課税申告書などに記載した同制度の適用を受ける非課税拠出額の合計から教育資金の支払い事実が確認された教育資金支出額を減じた額)に対して相続税が課されます。
改正前の課税対象は死亡前3年以内の拠出分でした。改正後は、年数に関わらず課税対象となります。
つまり、贈与を行った時期と相続発生までの期間は関係なくなったのです。ただし、受贈者が以下のいずれかにあてはまる場合は課税対象になりません。
【条件】
- 23歳未満
- 学校などに在学中
- 教育訓練(教育訓練給付金の対象)を受講中
また、子以外の直系卑属(孫やひ孫など)が受贈者の場合、相続税額の2割加算の対象になることになりました。改正により、相続税課税の要件が厳格化されたといえるでしょう。
住宅取得等資金の贈与税の非課税制度枠が拡大
住宅取得資金の贈与税の非課税枠とは、土地や建物など、居住用不動産の購入を支援する祖父母や親から子や孫へ贈与する場合に贈与税が控除される特例です。家屋は新築でなくても利用できますので、中古物件でも利用可能です。
令和3年4月1日以降の契約分は、非課税限度額が引き下げられる予定でした。2021年の法改正により、非課税限度額が引き上げられています(実際のところは据え置き)。なお、受贈者の条件は20歳以上でしたが、民法改正によって成人年齢が18歳に引き下げられたことにより、18歳以上に変更となっています。
改正前と改正後の非課税限度額は下記のとおりです。
【改正前】
|
省エネ等住宅 |
省エネ等住宅以外 |
消費税10% |
1,200万円 |
700万円 |
上記以外 |
800万円 |
300万円 |
【改正後】
|
省エネ等住宅 |
省エネ等住宅以外 |
消費税10% |
1,500万円 |
1,000万円 |
上記以外 |
1,000万円 |
500万円 |
また、対象となる受贈者、住宅の条件も変更されています。改正前は、贈与を受けた年の合計所得金額(事業所得・給与所得・不動産所得などを合計した額)が2,000万円以下の方、床面積50㎡以上240㎡以下の住宅が対象でした。
改正後は、床面積40㎡以上50㎡未満の住宅であれば合計所得金額1,000万円以下の方も対象となります。
改正前よりも、制度を活用しやすくなったといえるかもしれません。相続時精算課税制度や教育資金に係る贈与税の非課税制度など、下の世代に財産を移転することで、資金利用を促進する施策のひとつです。
住宅取得資金の贈与税の非課税枠は暦年課税の110万円とは別に非課税枠として利用することができます。この制度は頻繁に細かい設定が改正されていますので、令和4年度の改正も注目が集まっています。
贈与をする場合は、配分のバランスに注意が必要
相続税を減らすために生前贈与をすることで、税金を減らすことができます。しかし、教育資金の贈与や住宅取得資金の非課税枠を利用すると子供が複数いる場合に、それぞれの家庭の事情によって配分のバランスが崩れることがあります。贈与の範囲と相続は一体で検討した方がよいでしょう
多額の資金を贈与した場合は、贈与した資金と現在の財産を一覧表にして、一覧表を参考に、法定相続分が大きく崩れないように財産の配分も検討するようにしましょう。
贈与でバランスが崩れた場合には生命保険の受取人を贈与できなかった子供にしておいたり、遺言を作成したりすることを検討してもよいでしょう。
贈与は節税に有効ではありますが、バランスが崩れる可能性があるので、家庭の関係や、経済状況においてベストな選択をする必要があります。
贈与税の改正はこまめなチェックが必要
いかがでしたでしょうか?2021年に行われた贈与税の改正について解説しました。
現行制度を理解することも重要ですが、贈与税は改正も多いので、新しいルールに従い対応することが重要です。
細かな改正は毎年のように行われ、税制改正大綱に記載されています。今後も改正が行われる可能性が高いといえるでしょう。今後も制度や税率が改正される可能性があります。税制が改正されたら、対策も見直しをする必要があります。2021年の改正ではそのままとなっていますが、年間110万円までは非課税となっている暦年贈与も今後改正となるかもしれません。暦年贈与の非課税枠は利用している人も多く注目が集まっています。
贈与の特例制度は富裕層向けの制度となっています。経営している法人を次の世代への承継を検討している方や、不動産を多く持つ人は注意して改正を確認するようにしましょう。贈与税は贈与した時点の評価が適用されますので、時価が変動する、株や不動産は贈与する時期によっても贈与税に差がでます。基礎控除を超える財産を持つ人はうまく、保有する財産を次の世代に承継することで納税の負担を減らすことができます。
高齢者から消費意欲の高い下の世代に財産を移転させることで、経済の活性化を促進することができます。
一方で、贈与によって富裕層が次の世代に財産を承継することで、格差が広がることも問題視されています。一般的に相続税がかからない家庭が贈与をする必要はありません。税負担が少なく、財産が次の世代に承継される仕組みがあれば、富裕層との格差が固定されることは回避できないでしょう。
税の基本は公平に税金を納める能力が高い人から負担してもらうという考え方です。今後、日本政府は、相続税と贈与税の一体化など、国民が納得いく形で、格差を是正していく観点でも制度を構築することを検討していくでしょう。2021年の改正は軽微な修正にとどまりましたが、2022年は相続・贈与の法律のあり方が問われ、大幅に見直す可能性もあります。
無理な贈与で税務調査などの思わぬトラブルや相続人の負担を避けるため、贈与税・相続税の申告は専門家である税理士に相談しましょう。
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