相続が開始すると被相続人が亡くなった後、原則10ヶ月以内に相続税の申告を行う必要があります。相続税の申告は複雑な計算を行って、資料も多く集める必要があり、大変な作業です。もし期限内に申告を行わなかった場合どのようなペナルティがあるのでしょうか。
当記事では相続税の申告が遅延した場合や申告を行わなかった場合のペナルティについて解説します。
ペナルティの種類
相続税は国税として相続財産を取得した人に支払う義務があります。
相続税の申告におけるペナルティは大きく分けて、申告をしなかった場合と過少申告をした場合に分けられ、国税庁が定めています。それぞれのペナルティと加算税として納める税金について解説します。
申告をしなかった場合
保有する課税の対象となる遺産の評価額の合計が基礎控除を超える人が亡くなった場合、必ず申告を行う必要があります。
もし、申告をしなかった場合は無申告加算税といい、重い加算税が請求されることになります。無申告の場合の加算税は下表の通りです。修正申告を提出する時期によって、加算税の割合は異なります。
修正申告の時期 |
無申告加算税 |
法定申告期限等の翌日から調査通知日まで |
5% |
調査通知以降から調査による更正等予知前まで |
10%(15%) |
調査による更正等予知以降 |
15%(20%) |
上記表の()書きは、加算される部分に対する加算税割合を表します。
また、現金をタンスに隠している場合など、意図的に故人の名義の預金などの財産を隠蔽するなどして、悪質なケースでは重加算税が課される場合があります。タンス預金の無申告などがバレて重加算税が課された場合は最大50%の税金が課税され、本来の相続財産に応じて支払う税金よりも非常に大きな額の負担となります。また、相続発生から10ヶ月以上経過した時は延滞した期間に応じて、延滞税も徴収される例もあります。
過少申告をした場合
過少申告は財産の記載漏れがあるなど、本来の財産よりも過少に申告した場合のペナルティです。過少申告加算税も修正申告の時期によって加算税の税率は異なります。
税務署から税務調査の調査通知が来るまでに、相続税の計算をし直して、自主的に修正申告の手続きを行った場合は加算税の対象外となります。申告後、誤りに気付いた場合は、速やかに修正申告をするようにしましょう。
修正申告の時期 |
過少申告加算税 |
法定申告期限等の翌日から調査通知日まで |
対象外 |
調査通知以降から調査による更正等予知前まで |
5%(10%) |
調査による更正等予知以降 |
10%(15%) |
上記表の()書きは、加算される部分に対する加算税割合を表します。
過少申告加算税も相続発生後に口座から出金しているなど、故意の財産隠しなどの脱税とみられる行為があった場合、追徴で重加算税が課されます。重加算税の割合は45%と重い税金が課されることになります。取得する財産が多額となる場合は調査が入る可能性も高いので、正しく申告することが必要です。
相続発生前7年以内に暦年贈与により財産を取得する家族に行った贈与や相続時精算課税制度を適用して行った贈与も相続財産に含まれますので、申告漏れとなってしまいます。
申告漏れ、過少申告が起こらないための生前の対策
相続税の申告期限は10ヶ月と短く、申告漏れや過少申告でペナルティを課されることを回避するために、生前に対策や準備を行っておくことが重要です。生前にできる対策をポイントをおさえて具体的にご紹介します。
財産の一覧を作成しておく
被相続人の死亡後、本人以外が保有していた財産やどこの金融機関と取引をしているか分からないというケースは意外と多いものです。被相続人の財産がわからないと、申告漏れにつながる可能性が高くなります。そのため、遺族が銀行などの取引状況や財産をしっかりと把握しておくことは非常に大切です。口座を保有している金融機関や支店名、保有している預貯金、有価証券、土地・建物等の不動産、金などの現物資産など、課税対象となる財産と評価額を網羅的に記載した表を作っておくことで、相続人はかなり楽に財産調査をすることができます。生命保険は法定相続人×500万円まで非課税となりますが、手続き漏れを防ぐためにも記載しておくと良いでしょう。
財産をまとめた一覧を作成することで、遺産分割の際にも活用し、協議をスムーズに進めることもできますし、財産の総額と、現時点でのおおよその税額も把握することが可能です。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)以下であれば、納税と申告の必要はありません。財産の金額が基礎控除を超えるようであれば、年間110万円までの控除の枠を使って、生前贈与をするなど、節税対策を行ってかかる税金を減らすことも可能です。生前にシミュレーションしておき、配偶者や子どもなどに事前に説明しておくことで、現状に応じて対策を打つことが可能になります。
利用できる特例を確認しておく
相続税には配偶者控除や小規模宅地の特例等、承継する財産の状況や、被相続人との関係を理由に優遇されるさまざまな特例や控除があります。特例を利用することで相続税が0円になるケースもありますが、特例を利用する場合は申告手続きが必要となりますので、注意が必要です。
事前に利用できる可能性のある特例の、それぞれの条件や必要な書面を確認しておくことで、特例のメリットを漏れなく受けることができますし、相続発生を受けてからもスムーズに対応することができるでしょう。
遺言を作成しておく
相続発生後は、金融機関の手続きや年金の手続きなど、相続税の申告以外の他の手続きも多く忙しいものです。その中でも財産配分について、話し合いが必要なケースでは多くの時間と労力が割かれることになります。相続人が全国に散らばって、集まりにくいケースや、相続人の数が多く財産配分で揉めそうな場合は遺言を作成しておくことで誰が何を取得するか明確にしておくようにしましょう。
遺言書を作成しておくことで相続人の負担を軽減し、スムーズに申告手続きに移ることができます。
申告が難しい場合は税理士に相談を
相続税法に関する制度は複雑ですが、申告しなかったり、間違いがあった場合は、加算税が課され、結果的に納税額が増えてしまいます。もし既に申告済みで、誤っていることが分かった場合、発覚した時点で自主的に修正申告を行うようにしましょう。
法定相続人の中に、税金の手続きに強い人や知識のある人がおらず、自分たちでj評価額や特例を判断して申告をすることに不安がある場合は税務の専門家である税理士に相談して、関連する手続きを遅れないように確実に進めるようにしましょう。税理士は相続税に関する税制改正や実際の手続きなどさまざまな情報を持っています。費用はかかりますが、税務署に指摘されて、加算税を払うより安く済むケースもありますし、書類の書き方も教えてもらえますので、安心して期間内に続きを進めることができます。
相続税に関する初回の面談は無料で行っている税理士事務者や税理士法人も多いので、気軽に相談してみることをおすすめします。税理士を紹介してもらう場合は、相続税や贈与税の申告実績が豊富な税理士を紹介してもらうようにしましょう。
広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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