親などが亡くなると、遺された相続人は相続財産を引き継ぐ権利と義務があります。
しかし、相続財産の中には引き継ぐことで負担が大きく、引き継ぎたくないと考える資産もあるかもしれません。
中でも負担が大きいのが農地です。農地を引き継ぐと負担が大きく、処分したいと考えても簡単に売却できないことが多いです。保有し続けることで固定資産税もかかるので、継続的に負担がかかります。 当記事では農地の処分方法や注意点についてポイントをおさえて解説します。
農地を売却する制約
農地を売却する際は通常の宅地とは異なり、さまざまな許可を得る必要があります。例えば農地を農地のまま売却する場合は農地法3条により農業委員会の許可を得る必要があります。 農地を農地として他人に譲渡する際はその農地を引き継いで継続して農業を営むことができる人にしか譲渡をすることができません。買い手が農家に絞られることで通常の宅地と異なり売却の制約はかなり高くなり、思うような価値で売却できないリスクが高くなってしまいます。
また、農地を他の目的で使用する土地に転用して他人に譲渡する場合は農地法5条により都道府県知事の許可が必要です。
立地などによって許可が降りないことも多く、農地を譲渡することは簡単なことではありません。
相続農地の処分方法
相続する予定の農地を引き継ぎたくない場合、どのような方法があるのでしょうか。具体的に確認しましょう。
相続放棄をする
相続放棄をすれば初めから相続人ではなかったこととなり、農地を相続することはありません。借金などマイナスの財産がある場合も有効な手段です。 相続放棄を希望する場合は3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出ることで放棄をすることが可能です。 期間を過ぎると放棄は出来なくなりますので相続発生後すぐに検討する必要があります。 ただし、預貯金や株式、自宅の土地・建物など他の資産も引き継ぐことはできなくなります。 また、他の相続人に迷惑がかかる場合がありますので、必ず親族に連絡してから放棄の手続きを進めるようにしましょう。
他の農家に貸し出す
相続した農地を他の農業従事者に貸し出すことが可能です。ただし、都合よく、自分が相続した土地を耕してくれる農家がいるとは限りません。 過疎地で人手不足になっている地域も多いので、エリアによっては貸し出すことが難しい場合もあります。
相続土地国庫帰属制度を利用する
相続土地国庫帰属制度は不用な土地を国に帰属させることができる制度です。相続放棄をすると、全ての財産を引き継ぐことができませんが、相続土地国庫帰属制度を利用することで預貯金や自宅の土地・建物を引き継ぎ、農地を国に帰属することができます。
ただし、全ての土地を引き取ってくれるわけではありません。農地に建物がある場合は不可です。 また、引き取ってもらえる土地には要件があり、要件を満たさない場合は国庫に帰属させることはできません。 相続土地国庫帰属制度の利用を検討する場合は土地の所在地の管轄の法務局で相談してみると良いでしょう。
宅地転用する
市街化区域にある農地の場合は農地をやめて宅地に転用することが可能な場合があります。農地転用する場合、農業委員会への届け出と農地転用許可申請が必要となります。
ただし転用した後に売却やアパート、駐車場の経営がうまく行かないリスクはあります。また、後ほど解説する、納税猶予制度を活用していた場合、転用した時点で相続税を納税する必要があります。
農地を相続した場合の税優遇制度
相続した農地で相続人が引き続き農業を営む場合は農地分の相続税について支払いが猶予される制度です。 納税猶予の適用を受け、相続人が死亡するまで、農業を営んだ場合は相続税の支払いは免除されます。地域によって20年で免除されるエリアもあります。相続した農地を20%以上、売却や転用した場合、猶予されていた税金を納める必要があります。
農地がある場合は遺言書の作成が重要
農地がある場合、通常の相続とは異なるさまざまな手続きをする必要があります。相続人に負担をかけないために、事前に遺言書を作成し、分け方を明確にしておくことが重要です。遺言書を作成する場合は自宅で保管する自筆証書遺言よりも、公正証書遺言をおすすめします。公正証書遺言は公証役場で作成するため、費用がかかるというデメリットがありますが、確実に法律上有効な遺言を作成することが可能です。
農地の相続の相談は専門家に相談を
相続税の計算や手続きは複雑で、知識や経験がない人に取って簡単なものではありません。相続発生後は市町村役場での手続きや、金融機関での名義変更、法務局での不動産所有権移転登記などさまざまな場所に出向いて手続きをする必要があります。 特に農地がある場合は特例の利用可否の確認や農業委員会への許可や届け出が必要になるケースがあり、複雑化します。
相続税の申告が必要な場合は、相続発生の翌日から原則10ヶ月以内に自分で手続きを進める必要があります。自分で申告を行って誤って納税した場合税務調査で指摘される可能性があります。そのため、不安がある場合は税務のプロである税理士に相談すると良いでしょう。広島相続税相談テラスでは初回の相談無料で相続に関するお悩みを解決のサポートをしております。まずはお気軽にお電話やメールなどでご連絡ください。