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相続の限定承認とは?押さえておきたい概要とメリット・デメリット

2021年12月23日

相続人は、被相続人の財産をどのように扱うか選択することができます。具体的には、単純承認・相続放棄・限定承認から選べます。単純承認は被相続人の預貯金株式や自宅の土地や建物などの不動産や金などのプラスの財産・借金などマイナスの財産をすべて承継すること、相続放棄は死亡した人のすべての財産(プラスの財産・マイナスの財産)を承継しないことです。限定承認は、相続財産をどのように扱うのでしょうか。

この記事では、限定承認の全体像とメリット、デメリットなどを案内していきます。以下の情報を参考にすれば、どのようなケースで選択すればよいか、いつまでに手続きを行えばよいかなどがわかるはずです。理解を深めたい方は参考にしてください。

限定承認とは何か

限定承認は、被相続人のプラスの財産、つまり資産の範囲内でマイナスの財産、つまり債務を承継する相続の方法です。具体的には、被相続人に多額の借金があったとしても債権者に対し債務を弁済して資産が残ればそれを承継します。被相続人のすべての財産が相続の対象となりますので、必ず引き継ぎたい財産があるときや債務の全貌が見えず、負債の額がわからないときなどに利用されています。

限定承認は、相続が始まったことを知った日から3ヶ月以内(この期間を熟慮期間といいます)に家庭裁判所へ申し立てを行い、選択します。

提出には出生から亡くなるまでの戸籍謄本や800円分の収入印紙を用意する必要があります。相続人が複数いる場合、期間の計算を始める日は最後の相続人が相続の開始を知った日です。申し立ては、相続人全員で行わなければなりません。亡くなってからの3ヶ月という期間は遺された家族も忙しく、それぞれの事情もありますので、あっという間に過ぎてしまいます。限定承認を検討する場合はどうしてもお時間がかかってしまいますので、早めに着手することが重要です。

熟慮期限内に家庭裁判所に限定承認の申述を行わなかった場合、単純承認を選択したものとみなされます。前述の通り、単純承認は被相続人のすべての財産を承継する方法です。資産より債務が多い場合、単純承認すると弁済の義務は相続人に移ります。そのため、債権者から弁済を請求されるなど思いもよらない状況になってしまうことが考えられます。

ただし、熟慮期間は、被相続人が最後の住所地の地域を管轄する家庭裁判所へ申し立てることで延長できます。様々な問題が発生し、準備ができない場合は、期限を伸長し、手続きを進めることができます。

被相続人が遠方に住んでいた場合は、提出に時間がかかりますので注意しましょう。遺産の調査などに時間がかかる場合は、熟慮期間の延長を申し立てるとよいでしょう。

また限定承認は民法の規定に従った形で遺言書が書かれていた場合でも申し立てることが可能です。遺言書が書かれている時は原則、遺言書通りに財産を分けることになりますが、自分が債務を引き継ぐように書かれていたとしても、相続放棄や限定承認を行うことは可能ですので安心してください。遺言書がある場合はしっかりと中身を確認しておくようにしましょう。

限定承認を実際に行い、家庭裁判所に受理されれば、相続財産精算人を選任し、限定承認をしたことを官報に掲載する必要があります。

限定承認のメリット・デメリットをチェック

限定承認には、次のメリットとデメリットがあります。

メリット

最も大きなメリットは、プラスの財産を超える債務を負わなくて良いことです。相続発生時点で債務の額が判明しておらず債務超過を回避したいときに適している相続の方法といえるでしょう。

明らかに債務超過の場合は、限定承認の面倒な手続きを行わなくても、相続放棄を選択することができます。しかし、預金や借金の額が知りえない場合は、債務を処理して、プラスの財産が残れば取得できると判断できるからです。安易に相続放棄をして、思ったより財産が大きかった場合には損をすることになります。

民法で先買権が認められている点も特徴の一つといえます。先買権は、鑑定人(家庭裁判所が専任)の評価に基づく評価額を支払うことで特定の遺産を取得できる権利です。この権利を行使すれば、特定の財産を守りたい例では確実に手放さずに取得できます。

デメリット

代表的なデメリットとして、相続人全員で行わなければならない点が挙げられます。一人でも反対する者がいると限定承認をすることはできません。したがって、単純承認や放棄など相続人間で意見が対立すると選択できないため注意が必要です。

相続人が子のみの場合は連絡がつくケースが多いですが、兄弟姉妹が相続人となるパターンでは代襲で甥・姪が多数相続人となるケースもあります。連絡がつかない相続人がいる場合なども同様で、一人で申立て行っても承認されません。

手続きが難しい点もデメリットです。限定承認を選ぶと、相続人の中から選ばれた相続財産管理人などが相続財産の清算を行うことになります。具体的には、限定承認をしたことなどの公告を5~10日以内に行い、弁済などの精算手続きを進めていくことになります。専門的な知識を要するうえ、財産の鑑定に手間と時間がかかります。

もうひとつ注意点として認識しておきたいことは、限定承認に応じて不動産を換価したとみなされて譲渡所得税がかかることです。譲渡所得税は売却した際に得た費用から購入費用など取得にかかった費用を差し引いて計算します。そのため、購入した時の金額がわからない先祖代々引き継いだ土地などは多額の譲渡所得税がかかる可能性がありますので、注意が必要です。購入時の書類が残っている場合は確認しておきましょう。また、測量の費用や登記費用など売却の際にかかった領収書などは確定申告の際に必要ですので、処分せずに残しておくようにしましょう。

検討中の方は税理士に相談

いかがでしたでしょうか?今回は、相続の限定承認について解説しました。

選択には上記のように家庭裁判所への申し出が必要ですので簡単ではありません。先買権を認められる点などは魅力ですが、専門的な知識がないと手続きを進めていくことは難しいといえます。

相続の手続きは名義変更や遺産分割の協議、相続税の申告書の作成など複雑な手続きが多くありますので、時間がかかってしまうものです。限定承認を検討している方は、財産目録の作り方や手続きの方法、書類の書き方など、税理士に相談しましょう。

費用はかかりますが、専門家に依頼することで、確実に手続きを進めることができ安心です。初回の相談はサービスで無料で応じてくれるケースも多いので、まずは電話などで気軽に聞いてみるとよいでしょう。

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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい