配偶者や子、親などに認められる、最低限財産を相続する権利が遺留分です。遺留分を侵害する遺言を作成しても、侵害された人が請求すると、遺言どおりにわけることはできません。遺留分と相続税にはどのような関係があるのでしょうか。
当記事では遺留分と相続税の関係について解説します。
遺留分を請求しても相続税は原則かかる
結論から言うと、遺留分を請求して取得した財産にも、原則として相続税は課税されます。
「遺留分はトラブル解決のためのお金だから非課税では?」と誤解されがちですが、税務上はそうは扱われません。
相続税は「どのような経緯であれ、相続によって取得した経済的価値」に対して課税されるため、遺留分によって取得した財産も例外ではありません。
「遺留分=相続財産」である理由
遺留分とは、民法で保障された法定相続人の最低限の取り分です。
遺言書や生前贈与によって相続財産の大部分が他人に渡っていたとしても、配偶者や、子、親などが相続人となる場合はその侵害分を請求する権利を持ちます。
税務上も、遺留分によって取得した財産は
そのため、遺留分で取得した財産は相続財産として相続税の対象になると整理されています。
遺留分侵害額請求でも課税対象になる仕組み
2019年の民法改正以降、遺留分は「物そのもの」ではなく、金銭請求権(遺留分侵害額請求)として行使する形が原則となりました。
しかし、金銭で支払われた不動産の代わりに現金を受け取った場合でも、相続による財産取得である点は変わりません。
税務署は「形式」ではなく「実質」を重視するため、
遺留分侵害額請求=相続税の課税対象
という扱いになります。
遺留分と相続税の基本的な関係
遺留分と相続税は、法律(民法)と税法(相続税法)という別のルールで動いています。
しかし、相続の場面では両者が密接に絡み合います。
遺留分の有無によって、
取得したかが変わり、その結果として相続税額も変動します。相続税の計算は法定相続割合どおりに取得したものとして、相続税の総額を計算し、実際に取得した金額に応じて按分します。誰が相続するかによって配偶者控除や小規模宅地の特例の適用可否が異なるため、遺留分が行使されるかによって総額が変わる可能性もあります。
遺留分とは何か
遺留分とは、何かを簡単におさらいしておきましょう。
兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分割合は、相続人の構成によって異なりますが、法定相続分の1/2または1/3が基準となります。
相続税は「取得した財産」にかかる
相続税は、遺言に書いてある内容や法定相続割合は関係なく、最終的に誰が、いくら分の財産を取得したかで判断されます。
つまり、
遺留分請求が発生する典型的な相続パターン
遺留分請求が問題になりやすいのは、次のようなケースです。
-
特定の子どもだけに全財産を相続させる遺言がある
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再婚で、前妻の子が相続から外されている
-
生前贈与で財産の大半が特定の相続人に渡っている
-
内縁の配偶者や第三者に遺贈されている
これらの場合、遺留分の請求があり、財産の配分と相続税の再計算が同時に発生することがあります。
遺留分で取得した財産の相続税評価の考え方
遺留分で取得した財産も、通常の相続と同じ評価方法で相続税額を計算します。
現金で支払われた場合の評価
現金で支払われた場合は、
受け取った金額=相続税評価額
となります。
分割払いの場合でも、原則として確定した金額全体が課税対象になります。
不動産で取得した場合の評価方法
不動産を遺留分として取得した場合は、
話し合いの金額や時価とは異なるため、評価額のズレに注意が必要です。
株式・預貯金・その他財産の評価
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上場株式:相続時点の市場価格等
-
非上場株式:類似業種比準価額など
-
預貯金:死亡日時点の残高+経過利息
いずれも、遺留分かどうかに関係なく、通常の相続評価が適用されます。
生命保険金が関係する場合の扱い
生命保険金自体は「みなし相続財産」として扱われますが、
遺留分算定の基礎財産に含まれるかどうか、相続税の非課税枠が使えるかどうかは、ケースによって異なります。
生命保険は基本的に遺留分の計算する時に除外されますが、過去に財産の大半を生命保険で遺していた事例で、生命保険も遺留分算定の計算に含めるとした判決も出ています。
そのため、遺留分請求と保険金が絡む場合は、専門家の確認が不可欠です。
遺留分請求と相続税申告のタイミング
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日から10か月以内です。
しかし、遺留分請求は長期化することも多く、期限に間に合わないケースが珍しくありません。
遺留分の確定が申告期限に間に合わない場合
この場合でも、相続税申告自体は期限内に行う必要があります。
「まだ決まっていないから申告しない」は認められません。
未確定のまま申告する方法
一般的には、仮の分割内容で申告し、後日、修正申告や更正の請求で調整するという方法を取ります。
この判断を誤ると、加算税・延滞税のリスクが生じます。
遺留分請求後に必要になる相続税の手続き
遺留分請求が確定した後は、相続税の見直し手続きが必要になることがあります。
修正申告が必要になるケース
この場合は、修正申告を行い、不足分の税金を納付します。
更正の請求ができるケース
この場合は、更正の請求により還付を受けられる可能性があります。
遺留分を請求する側・支払う側それぞれの相続税リスク
遺留分は「もらう側」だけでなく、「支払う側」にも税務リスクがあります。
遺留分を請求する側・支払う側それぞれの相続税リスク
遺留分は「もらう側」だけでなく、「支払う側」にも税務リスクがあります。
支払う側の相続税が減るケース・減らないケース
支払った遺留分が
判断が分かれるため、注意が必要です。
「現金がない」場合に起こりやすい問題
不動産が中心の相続では、
不動産を売却した場合、売却益にも課税されます。そのため、結果として、想定外の税負担や資金繰り問題につながることもあります。
遺留分トラブルが相続税トラブルに発展するケース
遺留分トラブルが、相続税の申告等のトラブルに発展する典型的なケースを確認しておきましょう。
感情的な対立で申告が遅れるケース
遺留分請求が発生すると、相続人同士の不信感や連絡を拒否する、話し合いが感情論に流れるといった状況になりがちです。
その結果、財産配分が確定しないことや誰が申告を主導するか決まらないということがあり、結果として誰も期限である10か月を意識できなくなることがあり、相続税申告が遅れるケースが多発します。
相続税では、無申告加算税や延滞税等が発生する可能性があり、税負担が増える場合があります。
不動産評価を巡る争い
遺留分トラブルでは、不動産の評価を巡る対立が非常に多く見られます。
-
請求する側:「評価が低すぎる」
-
支払う側:「相続税評価額が基準だ」
遺留分算定と相続税評価では、評価の考え方が必ずしも一致しないため、このズレが争いを深刻化させます。
不動産評価が確定しないまま時間が経過すると、申告内容が決められず、修正申告が複雑になります。
税理士・司法書士・弁護士の連携不足による問題
遺留分と相続税のトラブルで意外に多いのが、専門家同士の連携不足です。
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弁護士:遺留分の交渉・調停だけを見ている
-
税理士:相続税申告だけを見ている
-
司法書士:名義変更だけを進めている
それぞれが「自分の専門分野」だけで判断すると、税務上不利な合意となったり、後から修正が必要になる分割となるなど想定外の負担がかかることもあります。
遺留分と相続税を同時に考えるべき理由
遺留分と相続税は、切り離して考えることができません。
遺留分の結論が、そのまま相続税額に直結するからです。
民法だけ・相続税法だけで判断すると失敗する理由
民法だけを見ると、「遺留分を確保できれば良い」と考えがちですが、税務を考慮しないと、思った以上に相続税がかかることや手元に残る金額が少ないという問題が生じる場合があります。
逆に、税金だけを優先すると、遺留分を軽視した遺言や将来の紛争を招く分割
につながり、結果的にトラブルが拡大します。
事前に専門家へ相談するメリット
遺留分を請求する前、または請求される可能性がある段階で専門家に相談することで、遺留分と相続税を同時に整理が可能となり、最も負担の少ない解決方法を選べることや申告期限を意識した進め方ができるといったメリットがあります。
特に、相続税の視点を持つ専門家が関与することは、後悔しない相続に直結します。
遺留分を請求する前に相続税まで確認しよう
遺留分は「請求できるかどうか」だけでなく、「請求した結果、何が起こるか」まで確認することが重要です。
最低限押さえるべきポイント整理
遺留分を巡って最低限確認しておきたいポイントは次のとおりです。
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遺留分で取得した財産も相続税の対象になる
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申告期限(10か月)は待ってくれない
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不動産評価で揉めると税務も複雑化する
-
修正申告・更正の請求が必要になる可能性がある
これらを知らずに動くと、法的には勝っても、経済的に損をする結果になりかねません。
早めの相談がトラブル回避につながる理由
遺留分と相続税の問題は、「揉めてから相談」よりも「揉める前・揉め始めた段階で相談」する方が、圧倒的に選択肢が多いのが特徴です。
早めに専門家へ相談することで、
-
冷静な判断ができる
-
不要な対立を避けられる
-
税務上のリスクを最小限にできる
結果として、相続人全員にとって納得感のある解決につながります。
広島相続税相談テラスでは、経験豊富な税理士が初回の相談無料で、皆様のお悩みの解決のサポートをしております。お気軽にお電話やメール等でご連絡ください。