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相続税の配偶者の税額控除とは?1億6,000万円まで非課税になる仕組みをわかりやすく解説

2026年03月04日

相続が発生すると、相続税の申告が必要となりますが、負担を軽減するためにおさえておきたいのが、特例や各種控除です。その中でも配偶者の税額軽減は効果の大きい控除の一つですので、必ず覚えておく必要があります。

当記事では相続税の配偶者の税額軽減について解説します。

目次

相続税の配偶者の税額軽減とは

相続税には、亡くなった人(被相続人)の配偶者の生活を守るために「配偶者の税額軽減」という制度があります。

この制度を利用すると、配偶者が相続する財産については 一定額まで相続税がかからないため、多くのケースで配偶者の相続税は大幅に軽減されます。

具体的には、次のいずれか大きい金額まで相続税がかかりません。

  • 1億6,000万円

  • 配偶者の法定相続分

例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、配偶者の法定相続分は 1/2です。
この場合、遺産総額が2億円なら、配偶者の法定相続分は 1億円となります。

配偶者が1億円を相続しても、この制度によって相続税は課税されません。

そのため、相続財産の規模によっては、配偶者が相続する財産について 相続税がゼロになるケースも多くあります。

ただし、この制度を利用するには 相続税の申告や遺産分割などの条件があるため、仕組みを正しく理解しておくことが重要です。

なぜ配偶者には大きな控除が認められているのか

配偶者控除が大きく設定されている理由は、主に次の2つです。

配偶者の生活を守るため

配偶者は亡くなった人と長年生活を共にしているため、相続税の負担によって生活が不安定になることを防ぐ必要があります。

特に、自宅や生活資金を相続する配偶者にとって、大きな相続税負担が発生すると生活に大きな影響が出る可能性があります。

夫婦で築いた財産と考えられるため

多くの場合、財産は夫婦が協力して築いてきたものです。
そのため、配偶者が相続する財産に対しては税負担を軽減する仕組みが設けられています。

配偶者の税額軽減と基礎控除の違い

相続税には、配偶者の税額軽減とは別に 基礎控除という制度があります。

基礎控除は、相続税の課税対象となる財産額を減らす制度で、次の計算式で求められます。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、相続人が3人の場合は

3,000万円 + 600万円×3 = 4,800万円

まで相続税はかかりません。

一方、配偶者の税額軽減は 配偶者が取得した財産の税額を軽減する制度です。

つまり、

  • 基礎控除 → 相続財産全体から控除

  • 配偶者の税額軽減 → 配偶者が取得した財産の税額を軽減

という違いがあります。

相続税の配偶者の税額軽減はいくらまで非課税になる?

配偶者の税額軽減によって、配偶者が取得した財産は 一定額まで相続税がかかりません。

非課税となる金額は、次のいずれか大きい金額です。

  • 1億6,000万円

  • 配偶者の法定相続分相当額

そのため、遺産の規模や相続人の構成によっては、配偶者が相続する財産の多くが非課税になる可能性があります。

1億6,000万円まで非課税になる仕組み

配偶者の税額軽減では、配偶者が相続した財産が 1億6,000万円以内であれば相続税がかからない仕組みになっています。

例えば、遺産総額が8,000万円の場合、配偶者がすべて相続したとしても相続税は課税されません。

この制度によって、配偶者の生活基盤となる財産を守ることができます。

法定相続分までなら相続税がかからない

配偶者の税額軽減では、1億6,000万円を超える場合でも 法定相続分までであれば相続税がかかりません。

例えば

遺産総額:4億円
相続人:配偶者と子ども2人

この場合、配偶者の法定相続分は 2億円(1/2)です。

配偶者が2億円を相続した場合でも、配偶者の税額軽減が適用されるため相続税は課税されません。

「1億6,000万円」と「法定相続分」のどちらか大きい金額が適用

配偶者の税額軽減では

1億6,000万円
または
法定相続分

のうち 金額が大きい方が非課税となります。

そのため、遺産が高額な場合でも、配偶者が法定相続分まで取得する限り、相続税が課税されないケースがあります。

配偶者の税額軽減を適用した相続税の計算方法

配偶者の税額軽減を適用する場合、まず相続税の総額を計算し、その後で配偶者の税額軽減を適用します。

そのため、相続税の計算の流れを理解しておくことが重要です。

相続税の計算の基本的な流れ

相続税は一般的に次の流れで計算されます。

  1. 相続財産の総額を計算する

  2. 基礎控除を差し引く

  3. 相続税の総額を計算する

  4. 各相続人の取得割合に応じて税額を配分する

  5. 配偶者の税額軽減などの税額軽減を適用する

配偶者の税額軽減は、最後の段階で税額を軽減する制度です。

配偶者の税額軽減の計算式

配偶者の税額軽減は、次のような考え方で計算されます。

配偶者が取得した財産のうち、次のいずれか小さい金額まで相続税が軽減される

  • 1億6,000万円

  • 配偶者の法定相続分

この範囲内であれば、配偶者の相続税は原則として課税されません。

具体的な計算例(遺産総額別)

例として、遺産総額が 1億円で、相続人が配偶者と子ども1人の場合を考えます。

配偶者の法定相続分は 1/2(5,000万円)です。

仮に配偶者が6,000万円を相続した場合でも、配偶者の税額軽減の上限である 1億6,000万円以内なので相続税は課税されません。

このように、多くの家庭では配偶者の相続税が発生しないケースもあります。

配偶者の税額軽減を受けるための条件

配偶者の税額軽減を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

これらの条件を満たしていない場合、控除が適用されない可能性があります。

法律上の配偶者であること

配偶者の税額軽減が適用されるのは 法律上の配偶者に限られます。

そのため

  • 内縁関係

  • 事実婚

などの場合は、この制度を利用することができません。

遺産分割が完了していること

配偶者の税額軽減は、誰がどの財産を取得するかが確定している場合に適用されます。

そのため、相続税の申告期限までに 遺産分割協議が完了している必要があります。

相続税の申告を行うこと

配偶者の税額軽減を適用すると相続税が0円になる場合でも、相続税の申告は必要です。

申告を行わないと、配偶者の税額軽減は適用されません。

申告期限までに手続きを行う必要がある

相続税の申告期限は

被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内

です。

この期限までに

  • 遺産分割

  • 相続税申告

を行う必要があります。

配偶者の税額軽減を利用する際の注意点

相続税の配偶者の税額軽減は非常に大きな税額軽減効果がありますが、制度を正しく理解していないと 控除が適用されない場合や、将来の相続税負担が増える可能性もあります。

特に次のようなポイントには注意が必要です。

  • 相続税が0円でも申告が必要

  • 遺産分割が決まっていないと適用できない

  • 法律上の配偶者である必要がある

これらの条件を理解したうえで制度を活用することが重要です。

相続税が0円でも申告が必要

配偶者の税額軽減を利用すると、相続税が発生しないケースも多くあります。

しかし、相続税が0円になる場合でも 相続税の申告自体は必要です。

相続税の申告書を提出し、配偶者の税額軽減を適用することを税務署に届け出なければ、この制度は利用できません。

申告を行わない場合、後から配偶者の税額軽減を適用できなくなる可能性もあるため注意が必要です。

遺産分割が決まっていないと適用できない

配偶者の税額軽減は、誰がどの財産を相続するかが確定している場合に適用されます。

そのため、相続税の申告期限までに 遺産分割協議が成立している必要があります。

もし遺産分割がまとまらない場合は、配偶者の税額軽減を利用できない可能性があります。

ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、後から控除を適用できる場合もあります。

内縁関係では配偶者の税額軽減は使えない

配偶者の税額軽減が適用されるのは 法律上の配偶者のみです。

そのため

  • 内縁関係

  • 事実婚

  • 長年同居しているパートナー

などの場合は、配偶者の税額軽減を利用することはできません。

法律上の婚姻関係があるかどうかが、制度適用の大きなポイントになります。

配偶者の税額軽減の落とし穴「二次相続」

配偶者の税額軽減は非常に有利な制度ですが、利用方法によっては 将来の相続税負担が増えてしまう可能性があります。

その代表的なケースが 二次相続の問題です。

配偶者の税額軽減を利用する際は、現在の相続だけでなく 次の相続まで考えて財産分配を検討することが重要です。

二次相続とは何か

二次相続とは、配偶者が亡くなったときに発生する相続のことをいいます。

一般的な相続の流れは次のようになります。

1回目の相続
夫が死亡 → 妻と子どもが相続

2回目の相続
妻が死亡 → 子どもが相続

この2回目の相続を「二次相続」と呼びます。

配偶者に多く相続させると税額が増える場合がある

配偶者の税額軽減を利用すると、配偶者が多くの財産を相続しても相続税が発生しないケースがあります。

しかし、配偶者が多くの財産を相続すると、その後の二次相続で 子どもが相続する財産が増えるため、相続税が高くなる可能性があります。

また、二次相続では次のような不利な点があります。

  • 配偶者の税額軽減が使えない

  • 相続人の数が減るため基礎控除が少なくなる

その結果、トータルの相続税が高くなるケースもあります。

二次相続を考慮した遺産分割の重要性

相続税対策では、一次相続だけでなく二次相続まで考えた財産分配が重要です。

例えば

  • 配偶者がすべて相続する

  • 子どもにも一定割合を相続させる

など、将来の税負担を考慮した分割方法を検討する必要があります。

適切な遺産分割を行うことで、家族全体の相続税負担を抑えることができる可能性があります。

配偶者の税額軽減と併用できる主な相続税の特例

配偶者の税額軽減は、他の相続税の特例と併用できる場合があります。

これらの制度を組み合わせることで、相続税の負担をさらに軽減できる可能性があります。

代表的な特例として、次のような制度があります。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた土地などの評価額を 最大80%減額できる制度です。

例えば、自宅の土地の評価額が5,000万円の場合、この特例を利用すると 評価額が1,000万円程度まで下がる可能性があります。

配偶者が自宅を相続する場合、この特例と配偶者の税額軽減を併用できるケースも多く、相続税を大きく軽減できる可能性があります。

生命保険金の非課税枠

生命保険金には、次の非課税枠があります。

500万円 × 法定相続人の数

例えば、法定相続人が3人の場合

500万円 × 3人 = 1,500万円

まで非課税になります。

生命保険を活用することで、相続税の納税資金を準備することも可能です。

未成年者控除・障害者控除

相続人が未成年者や障害者の場合は、さらに税額控除を受けることができます。

例えば

未成年者控除
18歳になるまでの年数 × 10万円

障害者控除
85歳までの年数 × 10万円(特別障害者は20万円)

これらの控除も相続税の負担軽減につながります。

配偶者の税額軽減を活用した相続税対策のポイント

配偶者の税額軽減は、相続税対策として非常に重要な制度です。

ただし、単純に配偶者に多くの財産を相続させれば良いというわけではありません。

相続税対策では、家族全体の税負担を考慮した財産分配を検討することが重要です。

二次相続まで見据えた財産分配

相続税対策では

  • 一次相続

  • 二次相続

の両方を考えて遺産分割を決めることが重要です。

場合によっては、配偶者の税額軽減を最大限使わない方が、結果的に相続税を抑えられるケースもあります。

不動産と金融資産の分け方

相続財産の中には

  • 不動産

  • 預貯金

  • 有価証券

などさまざまな種類があります。

相続税対策では

  • 誰が不動産を相続するか

  • 誰が金融資産を相続するか

といった点も重要になります。

特に不動産は評価額が大きくなることが多いため、分配方法によって相続税が大きく変わる場合があります。

専門家に相談するメリット

相続税の制度は複雑であり、相続財産の内容や家族構成によって最適な対策が異なります。

税理士などの専門家に相談することで

  • 相続税の正確な試算

  • 二次相続まで考えた対策

  • 特例制度の適切な利用

などのアドバイスを受けることができます。

早めに専門家へ相談することで、より有利な相続対策を検討することが可能になります。

配偶者の税額軽減を適用する際に必要な書類と手続き

相続税の配偶者の税額軽減を適用するためには、相続税の申告を行う際に一定の書類の添付が必要になります。
相続税が発生しない場合でも、控除を適用するためには税務署への申告が必要であるため、必要書類を事前に確認しておくことが大切です。

一般的に必要となる書類には、以下のようなものがあります。

  • 戸籍謄本(被相続人と相続人の関係を確認するため)

  • 遺産分割協議書または遺言書の写し

  • 財産の評価資料

  • 相続税申告書

  • 相続関係説明図

これらの書類は、相続税申告書とともに**税務署へ提出(添付)**します。
特に戸籍謄本は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を集める必要があるため、早めに取得しておくとスムーズです。

また、遺言がある場合は遺言書の内容に基づいて遺産分割が行われます。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、協議書を作成する必要があります。

相続税申告の流れと実際の手続き

配偶者の税額軽減を適用する場合、実際の遺産相続の手続きは次のような流れで進みます。

  1. 相続人の調査(戸籍謄本の取得)

  2. 相続財産の調査

  3. 遺産分割協議の実施

  4. 相続税の計算

  5. 相続税申告書の作成

  6. 税務署へ申告・納付

相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告し、必要な場合は税金を納める必要があります。

配偶者の税額軽減を適用することで税額が0円になるケースもありますが、その場合でも申告書の提出は必要です。
申告を行わない場合、後から控除を適用できない可能性もあるため注意が必要です。

生前贈与との関係と相続対策

配偶者の税額軽減を理解するうえで、生前贈与との関係も重要なポイントです。

生前に財産を移転する場合、一定額を超えると贈与税が発生します。
ただし、贈与税には基礎控除があり、年間110万円までは原則として非課税となります。

また、婚姻期間が20年以上の夫婦の場合には、一定の生前贈与について特例が認められる制度もあります。

このような制度を組み合わせることで、相続時の税金を軽減できる可能性があります。
ただし、過度な贈与は後の税務調査で問題になることもあるため、制度の要件を正しく理解したうえで利用することが大切です。

相続税の税率と納付方法

相続税は、取得した財産額に応じて税率が段階的に上がる仕組みになっています。
そのため、相続人それぞれの取得財産額によって納める税額は異なります。

相続税の税率は、次のように段階的に設定されています。

法定相続分に応じた取得金額 税率
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15%
5,000万円以下 20%
1億円以下 30%
2億円以下 40%
3億円以下 45%
6億円以下 50%
6億円超 55%

配偶者の税額軽減を利用することで、配偶者が取得した財産については税率の適用対象から外れるケースも多く、結果として大きな節税効果が生まれることがあります。

制度を正しく理解するための参考情報

相続税や配偶者の税額軽減の制度は複雑であり、制度の解釈や手続きについて迷うことも少なくありません。

そのような場合は、国税庁の公式サイトを参考にすることも一つの方法です。
国税庁では、相続税の計算方法や申告手続きについて詳しい資料が公開されています。

また、実際の相続では財産の内容や家族構成によって最適な対応が変わるため、専門家へ相談することでより適切な相続対策を検討できる場合があります。

相続に関する基本的な知識を身につけたうえで、状況に応じた対応を行うことが大切です。

まとめ|配偶者の税額軽減は相続税対策の重要な制度

相続税の配偶者の税額軽減は、配偶者の生活を守るために設けられた 非常に大きな税額軽減制度です。

この制度を利用することで

  • 1億6,000万円まで

  • または法定相続分まで

の財産について相続税が課税されない可能性があります。

ただし、配偶者の税額軽減には

  • 相続税の申告が必要

  • 遺産分割が必要

  • 二次相続の影響

などの注意点もあります。

そのため、制度の仕組みを正しく理解し、長期的な視点で相続対策を考えることが大切です。

必要に応じて専門家に相談しながら、家族にとって最適な相続対策を検討しましょう。

広島相続税相談テラスでは、経験豊富な税理士が多数在籍しており、皆様のお悩みを解決します。初回の相談は無料で対応しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい