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相続税の連帯納付義務とは

2024年06月02日

相続税は本来、期限内に相続人の取得した財産に応じて申告と納税を行うことになります。そのため、他の相続人が支払う税金について、基本的に関与することはありません。

しかし、相続税を支払わない人がいた場合、同じ被相続人から財産を取得したすべての人が連帯納付義務を負う制度となっています。

当記事では連帯納付義務について解説します。

連帯納付義務とは

連帯納付義務とは相続税法34条で定められており、連帯納付義務とは他の相続人が支払わなかった者がいる場合の税金について他の相続人が連帯して納税義務を負うことです。連帯納付義務は未払いの相続税全額について納付する義務を負いますが、自分が取得した財産から自分が支払った税額を差し引いた金額が上限となります。

例えば、他の相続人が3,000万円の滞納を行った場合でも、自分が相続を受けた相続財産が1,500万円で300万円を税金として支払っていた場合、1,200万円を上限に連帯納付義務を負うことになります。

また、贈与税にも同じように連帯納付義務があり、同じ人から贈与を受けた場合、連帯納付義務を負う場合があります。連帯納付義務を負う期限は5年となっています。5年経過後は連帯納付義務を負うことはありません。

連帯納付義務者も税金を支払わなかった場合、資産の差し押さえを行う可能性があります。資産の差し押さえは本来の納税義務者を優先して行いますが、本来の納税義務者に換金性の高い財産がない場合、連帯納付義務者の資産を差し押さえられる可能性があります。

連帯納付義務を負うまでの流れ

次にどのような経過を経て連帯納付義務を負うことになるのか、流れを解説します。

まず、相続人の中に相続税を滞納している人がいる場合、未納となっている旨の通知が税務署長より、他の相続人に通知されます。また、納税義務者本人にも相続税の滞納があることと連帯納付義務の規定があることが記載された督促状が送付されます。

本来の納税義務者に督促状を発してから1ヵ月以内に相続税が納付されない場合は、連帯納付義務者に相続税が完納されていない旨の通知が送付され、連帯納付義務を負うこととなります。

相続税を滞納した場合、本来の納税義務者は延滞税が課されます。延滞税は8.7%(令和6年時点)と高い税率で負担で課されます。一方の連帯納付義務者が支払った場合は延滞税よりも低い税率の利子税が課され、延滞税と利子税の差額は本来の納税義務者が負担することとなります。

連帯納付義務を負わないための対策

できることなら連帯納付義務を負うことは回避したいものです。連帯納付義務を負う可能性を少なくするための対策について解説します。

全員が相続税を納税できるように遺産を分割する

相続税の納税ができないケースの多くが、不動産などアクセスが悪い場合や道路がついていない場合など、すぐに換金できない資産を相続した人が納付できないケースです。取得した財産に応じて税金が課されますので、納税資金の確保が問題とならないように配分の段階で考慮する必要があります。遺言がない場合は、遺産分割協議の時点でシミュレーションを行って全員が現金を確保できるように気を付けましょう。

延納・物納などの制度を利用する

相続税は被相続人の死亡後、10ヶ月以内に原則現金で一括で支払う必要がありますが、現金で一括で支払うことが難しい場合、延納や物納という制度を活用することができます。

延納とは事前に申請を行い、相続税の期限を延長してもらう制度で利子税はかかりますが、少しずつ税金を支払うことができます。一方の物納とは不動産等、承継した現物資産で納付する方法です。延納と物納は必ず認められるわけではありませんので、現金一括で納付することが難しい場合は手続きの準備を進めるようにしましょう。

金融機関から借入をする

相続税の支払いができないという理由で金融機関から借入をすることも可能です。不動産など担保評価の高い財産があれば、担保となる評価を限度に金融機関から借金をして、一括で税金を納めた後、金融機関に少しずつ返済することができます。

相続放棄をする

相続人は連帯納税義務をお互いに負いますが、義務をを負う人は財産を取得した相続人のみです。相続人以外でも財産を取得した場合、連帯納税義務者になりますが、民法上の相続人であっても財産を取得していなければ他の相続人が未納であっても責任を負うことはありません。

代わりに納付した場合、贈与税が課される可能性がある

連帯納付義務が発生し、本来の納税義務者とは別の人が納付した場合、贈与税が課される可能性があります。代わりに相続税を納付する場合は、借用書を作成して、将来返済してもらうなど贈与税の課税対象ととられる事態にならないように注意しましょう。

相続税の申告・納付にお悩みの方は税理士に相談を

相続税の申告は相続発生の翌日から10ヶ月以内に申告と納税を行う必要があります。事前に対策がされていない場合、遺産分割、財産の評価や一覧の作成、相続税の計算を、基礎的な知識がない人が期間内に行うことは簡単ではありません。また、誤った申告を行った場合、税務調査で指摘される可能性があります。

相続税の延滞をすると利子税がかかりますので、しっかりと期限内に税額を確定し、納付することが重要です。自分で相続税の計算を行うことが難しい場合は、税務の専門家である税理士事務所・税理士法人に依頼し手続きを進めるようにしましょう。相続税の申告実績が豊富な税理士に依頼することで特例も漏れなく適用することができますので、結果的に節税できる事例も多くあります。

初回の相談は無料で相談してくれることも多いので、期限が迫る前にまずは電話やメールなどでお気軽に相談してみるとよいでしょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい