相続が発生すると被相続人の財産によって相続税がかかります。プラスの財産から借入金などマイナスの財産を差し引いた合計が基礎控除を超える相続財産を保有する場合は、課税の対象となる財産をまとめて一覧の表にする必要があります。
基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円で、計算を行います。相続人が3人の場合、4,800万円まで非課税となります。
相続人が相続する課税対象の財産のうち、土地や家屋などの不動産が大部分を占めることも多いでしょう。当記事では土地に関する評価額の計算方法や特例制度の内容についてポイントをおさえて解説していきます。
土地の評価方法
相続税を計算する際の評価は基本的に路線価方式で評価を行います。路線価とは前面道路により1㎡あたりの価値を計算する方法で、国税庁が定めた金額に従って、路線価×面積で金額を算出します。
路線価は1月1日時点の路線価を毎年7月に公表され、相場も反映されています。おおよそ時価で売買される価格の8割程度に設定されています。路線価図は国税庁のホームページにも1㎡あたりの千円単位の金額が掲載されており、簡単に確認することができます(リンク)。
地域によって、路線価が付されていないエリアもあり、それぞれのエリアごとに定められた倍率を用います。。
倍率で評価する土地の金額については、固定資産税評価額×倍率で計算を行います。倍率も路線価と同じく、国税庁のサイトで確認することができます。固定資産税評価額は毎年、固定資産税を支払うための納税通知書で確認することができます。
不動産を複数保有しており、数が多い場合や奥行などで補正が必要な場合は想定以上に評価に時間がかかることがあるので、早めに評価しましょう。
土地の評価に関する特例
相続税には特定の財産を相続する際にさまざまな特例や一定の税額控除があり、要件を満たす場合、評価を減額することができます。相続に関する特例の条件や注意点について解説していきます。
小規模宅地の特例
まずご紹介したいのは、メリットが大きく多くの人が利用する小規模宅地の特例です。
小規模宅地の特例は居住用の自宅や、自分が経営している事業用不動産の土地を相続する際に評価を減額できる特例で、自宅の場合は最大330㎡まで80%減額することができます。330㎡を超える大きい土地の場合は、330㎡までの部分について減額することができます。戸建てだけでなく、マンションの場合でも土地部分について適用することが可能です。
事業用宅地を所有している場合は400㎡まで80%減額、賃貸用のマンション・アパート等の用地となっている貸付事業用宅地の場合は200㎡まで50%減額できる制度となっています。
土地の評価が高ければ高いほど減額効果が大きくなりますので、都心など価値の高いエリアに不動産を保有している場合は大幅な減額となります。
小規模宅地の特例については遺産として土地を引き継ぐ人によっては使えない場合もあるので、事前に遺言を作成するなど対策をして引き継ぐ人を決めておくとトラブルを避けてスムーズに相続することが可能です。
小規模宅地の特例を利用することで、相続税がかからない事例も多くありますが、小規模宅地の特例を活用して納税する額が0円になる例でも申告は必要となりますので、注意しましょう。
配偶者控除
次に配偶者控除についてご紹介します。
配偶者控除は配偶者が財産を相続した場合にかかる税金について控除する制度です。配偶者控除は共に財産を築き上げた配偶者が取得するという理由で、1億6,000万円または法定相続分までは配偶者が相続しても非課税になる制度です。
配偶者控除は住宅として利用している土地・建物以外でも、現金・預貯金や有価証券や投資信託など金融資産の相続においても利用することができますので、多くのケースで相続税を支払わずに財産を相続することが可能となります。
死亡した人の配偶者が相続することで、一旦は節税になりますが、配偶者が1人ですべて相続してしまうと、二次相続で子どもが相続する際に納税する額が大きく増えてしまう可能性もあります。そのため、二次相続までの財産の流れもふまえて、いくら相続税がかかるかしっかりとシミュレーションを行って遺言書を作成するなどプランを検討するようにしましょう。事前に割合を決めておくなど準備をすることで、配分について判断する必要がないので遺された家族の負担を大きく軽減することができます。
空き家を売却した際の特例
相続税の控除ではありませんが、父母が住んでおり、相続した実家が空き家となった場合に、3年以内に売却すると譲渡所得税から3,000万円控除できる制度があります。
特例の要件は以下の3つがあります。
・昭和56年5月31日以前に建築されたこと
・区分所有建物登記がされている建物でないこと
・相続の開始直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
相続発生前に、被相続人が亡くなった時に老人ホームなどに入居しており、貸家などにした場合は特例を利用することはできません。
相続税の計算が不安な場合は税理士に相談を
相続税の計算の流れは、法定相続割合で取得したものと仮定した税率で相続税の総額を計算し、財産を取得した金額に応じて各相続人が按分で負担することになります。
相続発生時点の資産の評価や相続税の評価は非常に複雑な仕組みで、制度を理解して金額を求めることは簡単ではありません。確定申告のように毎年行うものでもありませんので、知識がない方がほとんどでしょう。
相続税は財産を取得する者に申告義務がありますが、自分で申告することが難しい場合は、専門家である税理士に依頼することも選択肢の一つとなります。
相続が発生した後は上記に解説した土地の評価相続税の計算だけでなく、親族間で遺産分割の協議や不動産の登記や金融機関の名義変更の手続きなど、忙しい中で短い期間にさまざまな対応を同時進行で進めていく必要があります。
相続税は、申告と納付を被相続人が亡くなった翌日から必ず10ヶ月以内に完了させる義務があり、期限も短いため、自分で申告することが難しい場合は、税理士に依頼するようにしましょう。もし誤って申告をしたり、生前贈与の分の加算を忘れると税務署から税務調査で指摘され、加算税を請求される可能性があります。
税理士にも専門分野がありますので、相続税・贈与税の申告実績が豊富で経験のある税理士にサポートをしてもらうことで安心して手続きを進めることができます。自分で行うことが難しい場合はプロに一任するのも良いでしょう。
費用については財産の金額などに応じて異なりますので、実際に資料を持って相談に行くとよいでしょう。初回はサービスで無料で相談に応じてくれる事務所も多いので電話やメールなどで気軽に相談してみることをおすすめします。