相続が発生すると遺産の分割の話し合いや相続税の申告手続きを行う必要があります。
しかし、相続人同士の年齢が近い場合、相続手続きが終わる前に次の相続が発生してしまう可能性があります。分割が完了する前に次の相続が発生してしまった場合、遺産の配分や税務の扱いはどうなるのでしょうか。
当記事では遺産が未分割のまま相続人が亡くなってしまった場合の対応について解説します。
遺産の配分方法
まずは、遺産の配分について解説します。子どもがおらず相続人が妻、兄、弟と法定相続人がいる場合で遺産が未分割の状態で兄が亡くなった場合で考えてみましょう。
この場合、兄の(甥・姪)が一次相続の相続人の地位を引き継ぐことになりますので、遺産分割協議に甥・姪が参加することになります。先に兄が死亡し、甥・姪が相続人となっている場合は代襲相続と言いますが、被相続人が亡くなった後に相続権を持つ兄が亡くなった場合は数次相続と言います。兄の子が2人いる場合は兄の法定相続分を2人で分け合うことになります。子どもが亡くなった場合でも考え方は同じです。長男が亡くなった場合、長男の子が数次相続で相続人となります。
数次相続によって相続人が増えた場合は、それぞれが何を取得するかを最初から話し合いが必要となる可能性があります。財産を調査し、一覧にして早めに協議をするようにしましょう。
相続税の取り扱い
相続税の申告期限は相続発生の翌日から10ヶ月以内と定められていますが、数次相続が発生した場合、数次相続によって相続人となった相続人のみ二次相続が発生した翌日から10ヶ月以内に延長されます。もともと相続人であった人は相続税の期限が延長されることはありませんので注意しましょう。
また、数次相続によって相続人が増えたからといって基礎控除の金額や生命保険の非課税枠が増えることはありません。ただし、相次相続控除という特例があり、10年以内に次の相続が発生した場合、数年間で何度も相続税を負担することを軽減するために最初に発生した相続の時に支払った税金のうち一定額を控除することができます。また、数次相続が発生した場合でも小規模宅地の特例や配偶者控除等の特例は利用することができます。特例の対象となる要件の詳細は国税庁のサイト等で確認することができます。
相続の手続きは専門家に相談を
相続手続きを自分で経験するのは父や母が亡くなった時くらいですので慣れないことが多く、相続財産の配分や税額の算出などの対応に苦労している人も多いでしょう。相続が発生すると相続財産の評価を行い、遺産分割協議書の作成や、不動産の登記、相続税の申告を行う必要があります。
数次相続が発生した場合、遺産分割協議の成立が遅れたり、相続税も複雑な計算が必要となる場合があります。分割方法や相続税の計算方法が分からない場合は、費用はかかりますが税理士などの専門家に相談して進めるようにしましょう。
相続税の計算は複雑でもし誤った内容で申告をした場合や期限に遅れた場合、税務署から加算税を請求される可能性があります。
また、相続人の年齢が近い場合は、相続発生だけでなく健康面で手続きが進まない可能性も高く、事前に遺言を作成するなど対策をしておくことをおすすめします。遺言の作成についても自筆証書遺言や公正証書遺言など様々な制度がありますので、司法書士や弁護士など専門家にもアドバイスを受けて進めることをおすすめします。