相続手続きは人生で何度も経験することではありません。慣れていない人は何から始めていいかわからないという方も多いでしょう。遺された家族は死亡届の提出や年金事務所での国民年金の受給停止の手続き、国民健康保険の手続き、生活に利用していた電気、ガス、水道などのライフラインの手続き以外にもやるべきことはいろいろとあります。
当記事では親族が亡くなった場合の相続手続きの流れや進め方や重要な点について具体的に解説していきます。
相続手続きの流れ
一般的に遺産の相続手続きはどのような流れで進めていくのでしょうか。適切に進めるためにポイントをおさえて解説していきます。
遺言書の有無の確認
まず初めに重要なことは生前に作成された遺言の有無を確認する必要があります。遺言書には大きく分けて二種類があり、一つが公正証書遺言、もう一つが自筆証書遺言です。
公正証書遺言は公証役場で作成される遺言のことで作成時点で法律上有効であることが確定します。公正証書の原本は公証役場で保管されます。一方の自筆証書遺言は自宅に保管しているか法務局で保管しています。自宅で保管している場合は家庭裁判所で検認の手続きを受ける必要があります。
自筆証書遺言に封がされている場合は空けずに保管しておくようにしましょう。
相続人の確定
相続人を確定するために戸籍を取得する必要があります。相続手続きを行うためには被相続人が生まれてから死亡して除籍されるまでの連続した戸籍を取得する必要があります。
配偶者や子どもなど、民法で定められた法定相続人は法律上の親族関係で決まりますので、戸籍で確認することになります。子どもがいない場合は兄弟姉妹の有無を確認する必要があるため、親の戸籍も確認する必要があり、時間がかかります。
戸籍は本籍地に保管されていますが、その写しである謄本は最寄りの市区町村役場で発行してもらうことができます。
財産の調査・所得の有無の確認
被相続人が所有していたすべての資産が遺産分割の対象となりますので、預金、株式などの有価証券、生命保険、死亡退職金、土地・建物などの不動産、ゴルフ会員権、金や貴金属などの現物資産など各種財産を一覧の表にしておきましょう。また、7年以内に生前贈与をしている場合は、相続税の課税対象となりますので、相続財産に加算する必要があります。
相続財産は必ずしもプラスの財産だけではありません。被相続人がローン等の借金を抱えていた場合などマイナスの遺産がある場合は相続放棄、限定承認の期限が被相続人死亡の翌日から3ヶ月であるため注意が必要です。
相続発生後は何かと忙しく、あっという間に時間が過ぎてしまいますので、負の遺産がある可能性が高い場合は、速やかに調査を完了し、財産を把握するようにしましょう。また、3ヶ月経過する前であっても、財産を処分すると単純承認したものとみなされて、相続放棄をすることができなくなります。
また、故人に不動産などから得られる所得や自営業などで所得がある場合、原則4ヶ月以内に準確定申告と所得税の納付を行う必要があります。会社員の場合は会社から源泉徴収されているため必要ありませんが、自営業などで普段から確定申告をしている場合は、相続開始の翌日から4ヶ月以内に準確定申告が必要となります。
遺産分割の話し合い
相続人が1人の場合は話し合いは必要ありませんが相続人が複数いるケースでは、相続人と財産の確認が終わったら、次に法定相続人全員で遺産分割の話し合いを行い、分割の方法を検討することになります。預貯金等の財産の調査が完了する前に遺産分割について話し合いをする人も多いですが、財産の調査が完了する前に話し合いをしてもその後、新たな財産が発見された時に再度話し合いをすることになってしまい余計な時間がかかってしまいます。そのため、初めから丁寧に調査を行い、正しく、財産を把握しておくことが重要です。
後でもめ事にならないように、しっかりと財産調査をしてから誰が何を相続するか話し合いを行う方がよいでしょう。遺産分割の話し合いで合意ができた際は、協議が成立したことを証明するために遺産分割協議書を作成し、全員が署名捺印を行います。
万が一、何か理由があり相続人同士で問題があり争いになった場合は、弁護士を交えての話し合いやそれでも解決できない場合は、家庭裁判所での調停・審判に進み、かなり時間がかかります。そのため、財産を引き継ぐ際は慎重に相続人同士の話し合いを行い、トラブルとならないように気を付ける必要があります。
相続税の申告
財産の総額が基礎控除を超える場合、相続税の申告が必要です。基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円で計算します。
相続税の申告は、相続により財産を取得する者が相続発生の翌日から10ヶ月以内に申告書の提出と納税を完了させる必要があります。相続税の計算や特例の有無の確認、書類の作成は非常に時間がかかります。遺産分割の内容も決まっていないと小規模宅地の特例や配偶者控除などの特例の適用有無も確定せず、相続税の計算ができないため、先に進めるということもできません。
納税が遅れた場合は税務署から加算税や延滞税が請求され、通常よりも多くの税金を支払いすることになる可能性がありますので注意が必要です。また、財産を過少申告した場合も税務署から指摘される可能性がありますので、正確に計算をする必要があります。
特例や控除などを活用した結果、税額が0円になる場合でも財産の額が基礎控除を超えている場合、申告する義務があり、申告を怠ると申告漏れと判断されますので、注意しましょう。財産額が基礎控除以下であれば、相続税の申告手続きは不要です。
金融機関・不動産の名義変更
最後に銀行や証券会社の金融資産関連の名義変更や解約の手続きや不動産の登記を行います。名義変更をする際は遺言書か遺産分割協議書が必要です。
戸籍は相続人を証明するために提出し、遺言または遺産分割協議書は相続する権利を持つすべての人が分割の内容について合意していることを証明することができます。金融機関や法務局は戸籍や遺言または遺産分割協議書の内容を基に手続きを行います。
専門家に依頼することも手段の一つ
相続の手続きや制度は複雑で、慣れていない人にとって簡単なものではありません。手続きを普通に進めるだけでも大変で時間と手間がかかるものです。遺族は葬儀などで忙しい状況の中ではありますが、早めに手続きを始めることが大切です。
また、今回は代表的な例について解説しましたが、家庭の事情や財産の内容によってもさまざまなケースがあるので、実際に手続きの内容や順番も異なるでしょう。
平日は仕事で忙しく自分自身で進めることが難しいという場合は相続関連の手続きに強い専門家に代理人として依頼することをおすすめします。
例えば、不動産の登記等の事務手続きや戸籍謄本の収集は司法書士にまとめて手続きの代行を依頼することができます。各財産の評価や税金の計算、申告書の作成については税理士に依頼することができます。
業務として行っている専門家にサポートを依頼して手続きを進めることで費用がかかるというデメリットはありますが、スムーズに相続手続きを進めることができるでしょう。専門家に依頼することで、手間を軽減できるだけでなく節税などについてアドバイスを受けることもあり、メリットも多いです。
広島相続税相談テラスでは相続に関する税務について経験豊富な税理士が多数在籍しており、さまざまなお悩みを解決して安心して手続きを進めていただいております。初回の相談はサービスで無料にしておりますので、お気軽にお電話やメール等でご連絡ください。